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#未来の図書館5 みんなの居場所って?

前回は地域の資源、とりわけ人を生かした持続可能な暮らしづくり「トランジション・タウン」にふれ、本を通していろんな色をもった人を知る場所として図書館があるという話をしました。今回はそんな図書館の”居心地”に迫ります。

保健室ってちょっと行きづらい

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中学2年の時、周りからからかわれたのがきっかけで僕は人見知りになってしまい、毎朝7時50分に校門前に着く人の乗らない系統のバスをわざわざ選んで通学していました。

大学に入ると人見知りは強まり、校内を歩くだけで汗びっしょり。夏でも冬でも、コロナでもないのにマスク姿。サークルで人なれする中で徐々に人見知りは治まりましたが、教育実習で母校に帰った時に同じような子がいて「こんな時期あったな~」と苦笑しました。

さて、そんな落ちつける居場所を探す子たちが向かうのが保健室です。担任とは雰囲気の違う先生がいてくれて、ベッドでお昼寝もできる。今考えると無料のカウンセリングルーム兼隠れ家的な場所だったんですね。

でも僕は保健室には行けませんでした。それは、悪目立ちしてしまうから。「あいつ保健室登校だからな~」って言われるの、なんだか恥ずかしいですよね。

本があるだけで、人は癒される

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このマガジンを読まれてる方は大体予想されるとおり、そんな僕が向かったのは学校図書室でした。

クラスの中心メンバーはグラウンドで部活に打ち込み、図書室に来ているのは文化部やオタク・マニア系、クラスの窓際に固まって自分たちの世界を作っている一風変わった集団たち。本を読むのも好きだし、普通の定規で測れないキャラをもった友人がどんどん増えました。

クセの強い仲間ほど結束力は強くなるもので、今でも(コロナでだいぶご無沙汰ですが)みんなで旅行に行ったり飲んだりしています。

落ちつける場所を求めるのは大人でも一緒です。人によってそれは自宅だったり秘境駅だったり山や海だったりしますが、「図書館」という人も多いのでは?

目立たなくてもいい「滞在型図書館」を

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「滞在型図書館」今の図書館の多くが目指している方向性です。

もともと図書館は、利用者が出納依頼書を提出し、司書さんが専門書を閉架書庫から引っ張り出してくる敷居の高い場所でした。(今の国立国会図書館みたいな感じ。)

1970年、日野市図書館の前川恒雄さんが『市民の図書館』という本を著します。せっかく街に図書館があるのに、あんな敷居が高かったら行きづらいじゃん!もっと子ども向けのサービスや読みやすい本を増やして、買い物かご下げて行ける図書館を作っていこうぜ、という内容です。

そこから「みんなが気軽に行ける図書館」づくりが全国に広まりました。ツタヤ図書館のようにカフェを併設したり、ユニークな建築で人目をひく図書館も。例えば吹田市立図書館は、木造校舎を復元した外観や、館内に0系新幹線があったりと、なかなか面白いつくりになっています。安城市のアンフォーレや金沢市の「金沢海みらい図書館」も設計がなかなか斬新。

(アンフォーレの施設案内。音楽をまじえた案内に癒されます)

でも、設計が派手でなくても滞在型図書館は作れます。円卓でみんなと一緒に本を読む場所もあっていいし、すみっこのほうで静かに本を読んだり物思いにふける空間もいい。
電車でも、ロングシートでのびのび座るのが好きな人と、コンパートメントシート(半個室)で静かにプライベートを満喫したい人がいますよね。(僕は後者です)

いろんな趣味や個性をもった人が集まってくる場所だからこそ、いろんなチャンネルで使えるような空間づくりが大切になります。「滞在」の定義はいろいろありますからね。

図書館×?

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(長浜市図書館)

では、ポスト『市民の図書館』に何が必要か?僕がいろんな場所をみて感じたのはかけあわせです。​たとえば…

・図書館×公民館(アンフォーレ・玉野市立図書館など)
・図書館×カフェ(武雄市図書館など)
・図書館×市民活動センター(メディアコスモス・長浜市図書館など)

いろんな要素とかけあわせると、「本を読むため」というよりは、楽しみを探すために来る人が増えてきます。絵本に載ってる料理を家庭科室で作ってみたり、コーヒーを飲みながらみんなで読書会をしたり。図書館とかけ合わせるのは美術館でもいいし、古民家や駅、温泉だっていい。実際にそういう場所もちらほら出てきています。

いろんな“居場所”を求めて。これからも図書館づくりに様々なアンテナを張りたいなと思っています。

次回は一風変わったテーマ。鉄道と図書館をかけ合わせてみます。

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