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令和トラベルCHRO田村氏と考える、「生き方に働き方を合わせる時代」の組織デザイン

こんにちは、株式会社LiBの長久保です。

2019年7月にLiBにジョインして、2年半が経とうとしています。

入社翌日の経営会議で上場準備が白紙になったり、 担当していたサービスがモデル変更するタイミングに、プロダクトの問題が発生し、その月の売上が95%ほど吹き飛んだりと、いろんなことがありましたが、素敵な仲間とベンチャーの醍醐味を楽しんでいます。

そもそも自分がLiBに入社したのは、14年前に妻が入社1年目で妊娠・出産したときに、子育てしながらキャリアを積み上げていくことの難しさを目の当たりにした個人的な原体験と、女性が働きやすい環境をつくることが日本のGDPを上げることに寄与するだろうというマクロ環境の視点からでした。

今は、「LIBZ タレントサーチ」の事業責任者として、ユーザーの声や企業様の採用課題を聞きながら、より良いサービス実現に向けて日々邁進しています。それが、14年前の妻や自分が直面した課題の解決に繋がると信じて。

そのような中、LiBは、歩を進めて「女性キャリア支援事業にて培ってきた知見を活かしながら、企業と個人が時代の変化に適応するための『ワークシフト支援』を行っていく」ことを先日リリースしました。

日々、企業様の採用支援をする中で、「採用母集団の形成が難しい」「来てほしい方にうまくアトラクトできない」「離職率が高い」などの人事課題を聞いています。

そこで、大学時代からの友人でリクルートの新卒同期である、現・株式会社令和トラベルでCHRO・田村 博司さんへのインタビュー形式で、今までの生き方やキャリアを交えながら「令和時代の組織デザイン」についてお伝えできればと思っています。田村さんは、リクルートで新卒から一貫して、人事を13年経験。リクルート卒業後は、組織人事コンサルティング会社を設立し、20社のご支援をしてきた人事領域のスペシャリストです。

<こんな方に見てもらえると嬉しいです>
・組織のあり方を検討されている経営者の方
・人事担当者として、採用や組織デザインについて取り組まれている方
・変化の大きい今の時代の中でどのような生き方 / 働き方をしていこうか考えられている方
・人材業界に興味がある方

田村博司(たむらひろし)
株式会社令和トラベル 執行役員CHRO

京都大学大学院で交通工学の研究をしていたところから一転、2007年に新卒でリクルートに入社して以来、一貫して人事を中心にコーポレートスタッフを経験。その中で、Indeedのエンジニア採用の立ち上げ、リクルートホールディングスの採用責任者、グループ子会社での経営企画責任者などを担当し、2020年6月にリクルートを卒業。組織人事コンサルティング会社(株式会社Catalys)を設立。設立後は、一部上場企業からベンチャー企業まで多岐にわたる魅力的な企業の人事や採用の支援。現在は、リクルートの同期入社で株式会社Loco Partnersの創業者である篠塚氏の新たなチャレンジとなる新会社にジョインし、執行役員CHROとして次世代を代表する組織を創ることにチャレンジ中。

※田村さんとは、大学時代からの友人なので、普段話している口調です

人事の仕事は、会社と仲間の未来に繋がる

ーリクルート時代から、一貫して人事のキャリアを歩んでいるよね。人事として最も大切にしていることって何?

田村:雇用する会社の未来にとっても、働く人の未来にとっても、Win-Winになるようにすることかな。特に採用では、「この人が自社で働くことで幸せになれるのか?」を考えて、自分自身がその人にBETできるのが採用人事の面白さだと思っていて。

もちろん環境とのマッチングの問題もあるから、採用の段階で絶対活躍するとは言い当てることはできないけど、会社の未来を創るのは「人」でしかないからね。さらに採用の成果は後からじわじわと出てくるケースが多いから、未来を見据えながら時限爆弾的に人を配置して、会社成長に寄与できる面白さがあると思っているよ。

長久保:時限爆弾的って表現、面白いね。確かに採用って、良かったか、悪かったかの評価がその時に判断しきれないから、振り返るとしても数年単位になるし、振り返るタイミングで評価が変わることもあるよね。

入社して3年後に見たら活躍してて良い採用だった、となることもあれば、10年後に見たら想定されていたイメージでもなかった、というケースもあったり。

田村:採用して終わり、ではないんだよね。本来のパフォーマンスが出せるかどうかは、その人だけの問題ではなくて、仕事内容や働く環境、上司との関係性など、いろんなファクターがあると思うんだ。だからこそ、採用した全員が活躍できるような組織デザインが大事なんだよね。

ーリクルートを卒業して、組織人事コンサルの会社を立ち上げたのはどんなきっかけがあったの?

田村:まず、リクルートでエンジニア採用をしているとき、競合になっていたのは大手有名IT企業ばかりだったんだよね。内心は、大手企業やIT企業以外でもユニークで面白い仕事にチャレンジできる企業もあるのに…と思っていたんだけど。

そんな思いがあって、有名企業でなくても魅力のある企業の採用に貢献できるよう、リクルートを卒業して独立したんだ。クライアントは100人規模の企業だったり、地方自治体だったり、人事周りで困っている企業・団体、20社くらい支援をしていたよ。

長久保:20社......!どんな課題が多かった?

田村:一番多かったのは採用支援だけど、採用後の受け入れ体制設計やカルチャー醸成の課題も多かったね。人事担当役員も、メンバーもいるけど、「戦略が定まり切れていない」「実行まで落とし込めていない」「モニタリングの方法が見えない」と困っている企業の声を聞いていたよ。

長久保:そういった課題感のある企業は多い印象があるな。LiBのクライアントでも、担当役員と決めた採用目標はあるけど、現場は書類選考や面接に忙しくて回ってないケースを良く聞く。そうすると振り返りもできないから、未達成の要因も見極められなくて、打ち手も決まらないんだよね。

あとは高い採用目標があるから必死に現場で採用するけど、中途退職が多くて、いつまで経っても必要採用数に至らない…というループに入ってしまっている企業も少なくないと思う。

ー田村は、そういった企業にどうコミュニケーションを取っていたの?

田村:採用マーケットを伝えて、自社の現状を経営者やプロジェクトオーナーに正しく理解してもらうこと、その上で取り組むべき課題の共通認識を持ち、本気になってもらうところからスタートしていたよ。

一方で現場メンバーにも、「どんな会社でありたいか?」をヒアリングしたな。例えば「ワンピースのようなチームで働きたい」みたいな声が出ると、その会社が大事にすべきことが見えてくる。それを皆で合意して、真ん中に据えながら、具体的な打ち手を検討してきてた。

長久保:なるほど、すごくニーズがありそうだし、困っている企業にとってはとてもありがたい存在だね。

ーそれから、なぜ令和トラベルの創業に携わることに?

田村:独立してから、ありがたいことに、さまざまな企業の採用支援に関わらせてもらい嬉しかった一方で、目の前の採用・制度設計など、自分がやれることをやるだけで、本当に良いのかな?日本を元気にできるのか?という疑問を、早々に思い始めたんだよね。

令和トラベルの代表である篠塚は、旗を立てて、そこへの道筋を創ることができる人。自分は、貢献したい気持ちで目の前のできることに取り組んでいたけど、大きな方向性は立てられていなかった。だから、目指す方向を描ける人と一緒にやりたいと思ったことが大きかった。

コンサルをする中で、ゼロベースで組織を作ってみたいと思ったし、めったに無い創業フェーズでジョインできる機会だったからチャレンジすることに決めたんだ。

長久保:旅行という事業ドメインは、もともと興味あったの?

田村:もともと興味があったわけではないけど、旅行はいろんな価値観に触れられる機会だと思ったんだ。コロナの中で不要不急という話が出たけど、旅行は「人生を豊かにするもので、幸せに生きるために必要なもの」とも。

だからこそ今、デジタルで旅行を変える、というチャレンジにコミットしたかった。


柔軟な働き方で選びやすくなる、オリジナルな生き方

長久保:リスキリングや副業・パラレルワーカーの浸透、年収よりも社会的価値を重視…など、「人生100年時代」と言われる中で価値観が大きく変化している。

ー組織を考える上では、個人の価値観変化をどう捉えてる?

田村:実際に選択の多様化は進んでいるよね。働く時間について言えば、日中に中抜けして夜に戻って働くことも自然になっていると思うし。

「人生100年時代」につながる話では、ニュースにもなったけど、40歳でアナウンサーからのセカンドキャリアとして令和トラベルに飛び込んで来てくれた人や、将来オーストラリアのビザ取るためにオーストラリアから働いている人もいるし、様々な背景を持った人が活躍してくれているね。

長久保:自分の価値観から、生き方とそれにフィットする働き方を選んでいる例だね。そういえば田村は、奥さんとお子さんで一時期海外行ってたよね?

田村:半年間カナダに行っていたことがあったよ。子どもの通う学校の先生と、子どもの価値観が合わなかったのがきっかけで、いろいろ考えて海外へ行こうと。

コロナ前だったけど、奥さんが海外でもリモートワークで働ける環境だったことも大きかったな。カナダでは、子どもにとっても多様な価値観に触れられる良い機会になったよ。

長久保会社の許容幅が大きいと、個人が選べる選択肢も増えることを感じたな。コロナという環境下で、リモートワークが一般化しつつあり、働き方の幅が広がって、より生き方や大事にしたい価値観について考えるようになった気がする。

実際にLiBのユーザーの中にも、「もっと愛犬と過ごす時間を増やしたいから、リモートワーク×フレックスで働きたい」「本気で取り組んでいるスポーツのために業務委託という雇用形態を選びたい」「一年間だけ京都に住みたいので、在宅ワークで働ける企業を探したい」という声もあったりするし。

我が家では、友達家族と一緒に住む前提で、小田原移住計画がひっそりと進んでるんだよね。子どもにとっても親だけではない、多様な価値観の人と暮らす中で選択肢も広がるかも、と。

田村:自分も「イエナプラン教育」を採用している小学校に子どもが通うのが良いかなと思い、長野への移住を検討したことがあるよ。そこは生徒の70%以上が移住者みたいなんだけど、移住という選択肢を持っているからこそ、興味の範囲が広がり、情報が視界にくるんだと思うんだ。

長久保いろんな生き方の事例が広まっていくことで、「自分もそういう生き方の選択肢が持てるかも」と認識して、実行に移せるようになるのかな。となると、多様性は拡大する一途だから、それにフィットする人事制度やコミュニケーションの設計が必要になってくる。そう考えると、組織づくりは今後より重要度も難易度も上がっていきそうだね。

実際に小田原へ移住に向けて物件視察に行った写真


異なる価値観のメンバーで創る「Belonging」な組織デザイン

長久保:個人の価値観が多様化している中、人事の課題として「ミッションを作ったけど、浸透しない」「こだわった人事制度があるけど、採用に活かせていない」「採用しても定着しない」という課題を目の当たりにすることは多いんだよね。

実際LiBのクライアントでも「先進的な人事制度があって採用したい人に認知されているはず」と思っていたけど、調べてみたら全然伝わってないことが明らかになって、採用広報の支援もさせてもらった事例があった。

ー令和トラベルでは、組織づくりにおいてはどのようなアプローチをしているの?

田村:令和トラベルでは、Diversity, Inclusion and Belonging Promise(※)というプロミス(約束)を制定して、当社の全メンバーはこれらのプロミスを守りながら、経営戦略、組織マネジメント、サービス運営などを行っていくと決めているよ。

※ Diversity, Inclusion and Belonging Promise

長久保:Diversity, Inclusion and Belonging Promiseの中身について、もう少し詳しく教えてくれる?

田村:多様な価値観の中でわたしたちは生活をしているのだということを深く理解し(Diversity)、無自覚なバイアスを互いに意識しあい境界線を透明にしていくこと、境界線があると気がついたならば先の向こう側の価値をリスペクトし受け入れていく(Inclusion)、そして、このプロミスを全員で共有・意識しあい日々の仕事を一緒に行うことができ、メンバーとして所属ができていると感じられる状態(Belonging)を目指していこうという約束。

戦略的にも、旅行マーケットにイノベーションを作っていこうとすると、今までの当たり前を絶対とせずに、いろんな人の考え方を受け入れて考えられることが前提となるので。

DIB(Diversity, Inclusion and Belonging Promise)のサイクル

長久保:面接でその価値観がありそうかを見極めていて採用もしているの?

田村:いや、実際していないし、できないとも思っている。どちらかと言うと、採用プロセスの中で大切にしていることを伝えて、共感してくれた人が当社を選んでくれているのが実情かな。メンバーが増えてきている中で、この価値観を重要視してくれている様々な個性の仲間が増えて、今まさに組織になっていっている、という感覚もある。

やっぱり、パフォーマンスが出せるかどうかは採用時点ではわからないし、その人単体ではなく、仕事内容や上司など様々なファクターがあるから、組織デザインを重視してて、Diversity, Inclusionを大切にできる組織として大きくしていきたいと思っているよ。


ーそのプロミスを実現するために、組織づくりには具体的にどんな風に落とし込んでいるの?

田村:まだ道半ばだけど、プロミスで掲げているDiversity, Inclusionの浸透施策としては、お互いの違いを知る機会を定期的に作っているよ。

経営ボードとメンバー、組織ごと、雇用形態ごと、働き方ごとの境界線をなくすために、「経営会議含む、各種ミーティング議事録の公開」「全社を上げてプロダクトのQAに取り組む」「勤務形態に関わらず適切な人へプロジェクトリーダーアサイン」などを実行している。

それから、言葉・表現が体を現すと考えているから呼称も重視していて、副業などで業務委託として関わっていただいている方々をPPさん(プロパートナーさん)と呼んでいるよ。

他にもまだ人事制度設計中でオープンには出来ないけど、その人の生活に合わせて働きやすい環境を選べる制度も検討中。こういう施策の積み重ねとビジョン・ミッション共感浸透で最終的にBelongingな状況を創っていこうとしている。

長久保Diversity, Inclusion and Belonging Promise、個人的にものすごく刺さった。Valueとして、大切にしたい価値観を決めたりするけど、それは複数の要素が並んでいるケースが多いよね。

一方で、このプロミスは抽象度は高いものの、大事にすることが一つの筋として明確になっている。今回「個人の価値観の多様化」という話をしてきたけど、そういったものを受け入れて、より良い組織を創っていくことを前提に置かれていて時代が反映されているなと。

ミッション「あたらしい旅行を、デザインする」を実現するために必要なイノベーションを起こしやすくするという戦略的な意図とも合致していて面白い…!

近い将来、これが実際にどうなるのか?どう進化していったのか?などその後の話もまた聞かせてください。


最後に

今回、令和時代の組織デザインをテーマに話をしてきました。LiBでは、新ミッションとして、「『ワークシフト』支援企業として、ニューノーマル時代の新しい仕事のカタチをつくる」を掲げていて、そのためにはまず自分たち自身が多様な個人の価値観の中でも働きやすい環境を実践できている環境を創ろう、と進化させています。

実際、LiBの採用面接で「ミッションで掲げていることを自社で実践されていて素敵ですね」と言って頂けるケースもあり、嬉しいな、と思う反面、まだまだ多様化する個人の価値観に合った働き方ができる環境は多くないということなのかな、と考えさせられます。

今回のインタビューを通じて、令和トラベルの掲げるDiversity, Inclusionのように、一人ひとりがそれぞれの多様な想いを持って選択肢を選択し、それを許容する個人・企業が増えていけるように支援していき、自分の子ども世代ではそれらがスタンダードになれるように貢献していきたい、と改めて感じました。

そのために、どんな生き方を志向して、どんな働き方を選ぶのか?を、LiBとして「1人の可能性をどこまでも活かせる仕事のカタチをつくっていく。」という新ミッションのもと、1つでも多く実現していきたいと思っています。

LiBでは仲間も大募集中です!


今回お話を聞いた令和トラベルでも仲間を募集中です!