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② 和解条件について

・利息カット(軽減)の分割払いには条件があります。

 債権者との間では、和解交渉の末、今後の利息をカット(軽減)(※1)してもらったうえ、分割払いする合意に至っています。
 ここで一点ご注意いただきたいことがあります。
 任意整理に限らず、分割払いによる場合には、「懈怠(けたい)条項」と呼ばれる条件がつけられるのが一般的ですが、債権者との和解にも漏れなく懈怠条項が設けられています。
 懈怠とは、さぼった、怠けたという意味ではなく、約束どおり期日までに支払えなかったことを意味する法律用語です。
 懈怠条項は、利息をカット(軽減)した分割払いに応じる代わりに、その分割払いですら約束に反して支払えなかった場合には、和解を白紙に戻し、一括返済を求めますという内容の条件です(※2)。
 多くの債権者は、返済が2回分遅れた場合に懈怠条項に該当する条件になっていますが、一部の債権者(※3)は、返済が1回遅れただけでこれに該当する厳しい条件のところもあります。
 


※1
 現状ほとんどの債権者とは利息カットで合意できていますが、一部の債権者については、取引期間が短かった場合などに、数%の利息(将来利息)が残っている場合もあります。それでも元の利息より大幅に軽減できていますので、毎月の負担を減らしながら完済を目指すのに必要で効果的であることに変わりありませんが、将来利息が残る場合には、利息の負担をいつまでも負わないよう、より確実に返済していく必要があります。

※2
 詳しくは和解書をご参照ください。和解書は、ご希望に応じてご郵送やLINEでもお送りできますので、ご入用の際にはお申し付けください。
 
※3
 新生フィナンシャル(レイク)に特にご注意ください。
 もともと新生フィナンシャルの利用があった場合だけでなく、銀行や信用金庫の借入分の保証会社が新生フィナンシャルだった場合も含みます。
 新生フィナンシャルは、他社に先駆けて和解条件が悪化しており(当事務所の取り扱い分に限らず、他事務所も同様のようです。)、2023年4月以降に弊所が介入した分について、将来利息5%(取引期間の短い場合には10%)が残り(債務整理の必要性が特に高い、高齢や病気等の事情のある、困窮を極めた方のような事情のあるケースでは引き続き利息カットに応じてもらっています。詳しくは、和解書をご確認いただくか、当事務所まで一度お問い合わせください。)、和解後の支払いが1回でも遅れた場合には、遅れた日数分について20%(新生フィナンシャルが保証会社だった場合は14.6%)の遅延損害金を上乗せして支払わなければいけません
 このとおり、最近の新生フィナンシャルは、1回の遅れで懈怠条項に該当してしまう場合がありますが、救済方法として、遅れを取り戻せた場合には、和解が白紙に戻らず、引き続き和解書の元の条件のまま分割弁済を再開できる扱いになっています。
 数日の遅れであれば影響は大きくありませんが、たとえば、ご入金のない月があり、1か月ずれたペースでのご入金となってしまった場合には、いつまでも20%もの遅延損害金が発生し続けてしまいますので、できる限り早期に遅れを取り戻す必要があります。
 今回の手続き先に2023年4月以降に弊所が介入した新生フィナンシャルが含まれる方については、特にご注意いただかなければいけませんので、毎月の確実なご入金をお願いいたします。
 

・和解条件に違反した場合、和解が白紙に戻り、分割払いできなくなります。

 和解後の返済が遅れ、懈怠条項に該当してしまった場合、利息をカット(軽減)した分割払いという、せっかく和解交渉で獲得した有利な条件を失ってしまい、和解が白紙に戻り、その時点での債務額の一括請求となってしまいます(※4)。
 貸金業者にとって、利息が最大の収益源ですので、利息をカット(軽減)した分割払いに応じたにもかかわらず、その分割払いさえ約束どおりにしてもらえなかった場合にはさすがにそれ以上譲歩できませんということです。
 任意整理は、利息をカット(軽減)した分割払いを獲得するために進めてきた手続きですので、これを失ってしまっては元も子もありません。
 債権者との間で和解に至るまでの間は、毎月のご入金を主に弁護士費用に割り当ててきましたので、
「今月の入金が難しいので、来月まとめて入金したい」
とか、
「全額の入金が厳しいので、できれば減額してほしい」
とか、
「入金期限を延ばしてほしい」
といったご要望にも当事務所の判断で柔軟に対応できましたが、和解後の今後のお支払いについては、懈怠条項に該当してはいけないことはもちろん、和解交渉で最大限譲歩した債権者は待ってくれず、債権者への返済は待ったなしですので、今まで以上に確実に毎月ご入金いただく必要があります(※5)。
 


※4
 一時的な事情で支払えなかったけれどもそれが解消された今後は改めてしっかり支払っていけるというような場合に限っては、債権者に分割払いの復活をもう一度お願いしてみる再和解という方法も一部ではあり得ます。
 
※5
 懈怠条項に該当しないようにするためにも万が一に備えて活用し得るのがプール金です。例を交えてご説明しておりますので、詳しくは、「③プール金(預り金)について」の項目をご確認ください。
 

・万が一当事務所が辞任した場合には、その後はご自身でご対応いただくことになります。

 せっかく和解できたものの、懈怠条項に該当してしまって、和解が白紙に戻ってしまった場合、当事務所ではそれ以上どうすることもできません。
 その後の支払いの目途が立たず代理人の職責を果たせないのならば速やかに辞任するよう債権者からもかなり厳しくいわれ、他の方の交渉にも悪影響がありますので、当事務所としては、全く不本意ですが、代理人を下りる(辞任する)ほかありません(※6)。
 当事務所が辞任することになった場合、債権者によっては、裁判を起こすところもありますが、債権者からご自身に直接連絡がいきますので、それに応じてご自身で以降のことはご対応いただくことになってしまいます。
 債権者も一括請求しても現実問題として難しいことはその実わかっているはずですので、債権者とご自身との交渉で再度の分割払いをお願いする方法はあると思いますが、残念ながら当事務所ではそれに関知できません。
 懈怠条項に該当することのないよう、万が一それに該当してしまった場合でも1日でも早く遅れた分を取り戻せるよう、完済までの本番といえる局面ですので、毎月のご入金の確実なご継続をお願いいたします。
 
※6
 支払いの継続が難しい場合、任意整理を断念して、自己破産個人再生に方針を変更することで当事務所との委任契約を継続する余地はあります。
 ただし、方針を変更して当事務所で自己破産等をお引き受けするとしても別途費用がかかってしまいます。
 また、債権者との交渉が主となる任意整理と異なり、裁判所を通した厳格な手続きである自己破産や個人再生を進めるためには、任意整理時以上に密な打ち合わせや必要資料のやり取りが必要不可欠になりますので、自己破産等に方針を変更する場合には、お住まいのお近くの弁護士に依頼し直す方法との比較検討も必要です。

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