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【推しの聖人】~「聖人崇敬」の基礎講座~(前編)

■はじめに

今日はドラマの撮影で都内のとあるカトリック教会へ来ている。

だが、早く来すぎたのか出演者は誰も来ていないようだな・・・


ちなみに俺はアニメ『【推しの子】』の星野愛久愛海(ほしの あくあまりん)だ。まあ気軽に「アクア」と呼んでくれ。

【アクア】
陽東高校一般科の1年生。ルビーの双子の兄。
母親であるアイを殺した犯人を見つけ出すため、芸能界に足を踏み入れる。

公式サイトより

「おーい、お兄ちゃん!」


【ルビー】
陽東高校芸能科の1年生。アクアの双子の妹。
亡き母であるアイのようなアイドルになることを目指している。

公式サイトより

アクア「・・・ん、ルビーか。お前、ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ。」

ルビー「だって、今日の撮影って、いろんな有名俳優さんが来るんでしょ?なら私がアイドルになった時、いろいろコネがあったほうが有利じゃない?だから来ちゃった((∀`*ゞ)テヘッ)」
「申し遅れました、私、アニメ『【推しの子】』の星野瑠美衣(ほしの るびい)!ママみたいな一流のアイドル目指してまーす!」

アクア「まったく・・・摘み出されても知らんぞ。」

ルビー「それにしてもこの教会って、いろんな絵や像があるんだね。」

アクア「聖人や天使の奴だろう?カトリック教会じゃ崇拝されてるって話だからな。」

???「・・・それは違うわよ、星野アクア!!!!!」

アクア&ルビー「???」

???「聖人や天使は、崇拝の対象ではなく、敬われる立場にあるの!

それに聖人という概念は、カトリックだけのものじゃないわ!」


ルビー「・・・あ、あなたは確か・・・・」

アクア「ああ。間違いない。ガキの頃以来だな。」

アクア&ルビー「重曹を舐める天才子役!!!!!!」

かな「ちっがーう!それを言うなら『10秒で泣ける天才子役』こと有馬かなよ!!」


【有馬かな】
陽東高校芸能科の2年生。
幼い頃から子役として活動しており 当時は「十秒で泣ける天才子役」と評判だった。

公式サイトより

アクア「あ、そうだったな。」

ルビー「でも最近見なくない?」

(グサッ・・・・!!!!)
かな「そ、それを言わないで・・・」

アクア「で、その天才子役様が、俺たちに何の用だ?」

かな「『元』天才子役と言いなさい!私はもう高校生。それにあんたたちより一つ年上の先輩なんだからね!」

ルビー「それで、ロリ先輩、何しに来たの?」

かな「いい?あんたたちは『聖人』ってものについてなんもわかっていない。だからこの私が基礎からみっちり教えてあげるわ。それも2回にわたってね!まず前編では、聖人という概念の基礎について教えるわよ!」

アクア「なんか面倒なことになったな(ヒソヒソ)」

ルビー「まあ一応この人先輩だし、一応聞いときましょ(ヒソヒソ)」

かな「・・・聞こえてんだけど・・・」

■崇敬と崇拝の違い

かな「まずは聖人とは一体どんなものなのか?ルビー、あんたはどうイメージしてる?」

ルビー「はい!めちゃくちゃすごい人!いろんな伝説を残した・・・いわばあの伝説のアイドル『アイ』のような人のことだと思います!」


アクア「お前らしいといえばらしい答えだな。確かにアイは俺にとっては天使であり聖人だ。」

【アイ】
苺プロダクション所属アイドルグループ「B小町」のセンター。
その天性の輝きで一世を風靡した。

公式サイトより

かな「全然だめ!・・・と言いたいところだけど、実はあながち間違いじゃないのよね。」

ルビー「ホント!?やったー!」

かな「いい?まず多くの人が勘違いしていることだけど、聖人というのは、神様のように拝む対象ではないの。聖人とはわかりやすく言えば、『優れた働きをした、信仰の模範とされる人』ということなのよ。」

「でも、聖人に対する祈りみたいなのってあるだろ?あれって聖人を拝んでいるんじゃないのか?」

「確かにそういった祈りはよくあるけど、お祈りの文をよく見て。例えばカトリックにおいて聖人の中でも特別な存在である聖母マリアへの祈り(アヴェ・マリアの祈り)にはこうあるわ。」

アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
主はあなたとともにおられます。
あなたは女のうちで祝福され、
ご胎内の御子イエスも祝福されています。
神の母聖マリア、
わたしたち罪びとのために、
今も、死を迎える時も、お祈りください。
アーメン。

(2011年6月14日 定例司教総会にて承認)

©日本カトリック司教協議会

ルビー「最後に『わたしたち罪びとのために、今も、死を迎える時も、お祈りください』ってなってるね。これって、私のために神様にお祈りをしてください、って頼んでるってこと?」

かな「そう。これは『神様への取次ぎを願っている』ってこと。『私のようなものが、神様に直接お祈りをするなどおこがましいので、代わりにお祈りをしてください』ということ。つまり神様と自分の間を執り成し、仲介してほしいと願っているということね。どの聖人に向けた祈りも必ず『われらのために祈り給え』となっていて、『われらの願いを聞き入れ給え』とはなっていないの。」

アクア「自分の祈りを捧げる対象はあくまで神様であって、聖人にはそのサポートをお願いする、ってことか。つまり『崇拝』をしているわけではないと。」

かな「そう!あくまで『崇敬』敬い、信仰の模範者として助けを願っているだけよ。聖人の概念がない教派でも、信仰の仲間に『私のために神様に祈ってください』とお願いすることはよくあるわよね?それと聖人崇敬は、本質的には変わらないのよ。聖人の像や絵も、あくまで聖人をイメージするための象徴的なもので、その像や絵そのものを拝んでいるわけではないの。」

ルビー「それって、例えば推しのアイドルを応援する時、プロマイドを見てそのアイドルをイメージするのと似てるかも!」

アクア「うまい例えだな。さすがは俺の妹だ。」

かな「・・・あんた、顔に似合わずめちゃめちゃシスコンね・・・」

■聖人がいるのはカトリックだけ?

アクア「崇拝と崇敬の違いはわかったけど、それ以外にもなにか俺が言っていたことに間違いがあるのか?」

かな「ええ。アクアはさっき『カトリックでは』と言っていたけど、聖人という概念はカトリックだけのものではないの。実は、聖公会、東方正教会、ルーテル教会にも聖人という考え方があるのよ。」

ルビー「へえ。でもルーテル教会って確かプロテスタントだよね?プロテスタントは聖人を禁じてるんじゃなかったっけ?」

かな「基本的にはね。だけど、ルーテル教会はプロテスタントの元祖。宗教改革の初期中の初期に始まったものだから、カトリックの流れがまだ残ってるわけ。そもそも改革者ルターは元々、カトリックの司祭だったわけだしね。本格的な改革はツヴィングリやカルヴァンが興した改革派の登場を待つ必要がある。詳しくはこの記事を読んでね。」

アクア「ということは、プロテスタントでも洗礼名を付けたり、成人の名前を冠した教会があるということか。」

かな「そういうこと。聖公会はぶっちゃけ教皇制を認めていないこと以外はカトリックと大差ないし、正教会に関しては聖人が信仰においてカトリック以上に必要不可欠(というイメージがある)ね。」

■おわりに

ルビー「ロリ先輩のおかげで、聖人についての理解が深まった気がする!」

かな「それはどうも。でもまだこれで終わりじゃないわ!」

アクア「まだ何かあるのか?」

かな「ルビーがさっき『聖人崇敬はアイドルの推し活に似ている』的な話をしていたでしょ?それは今回のテーマそのもの。だから次回は、聖人の『推し活』について、具体的にどんなものがあるのか、聖人崇敬が文化的にどのような影響を与えたのかを教えるわ。二人とも、準備はいい?」

ルビー「はーい!」

アクア「ルビーの奴、すっかり有馬かなのペースに巻き込まれてるな・・・」

おわり

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