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社員が次々と辞めていく…

少ない人数で事業運営を行っている中小企業にとっては、

一人の社員の退職のダメージは極めて大きいです。

退職や入社による人材の入れ替わりは企業が活性化するために必要です。

しかし、社員が次々と辞めていき、人材流出が止まらない会社には、特徴があるのです。

 特徴の前に、人材流出が企業にもたらす影響について考えてみます。(コスト増と顧客満足度の低下)

退職者が出ると中途採用で補充するかと思いますが、多くの企業が即戦力となる優秀な人材を必要としている中、中小企業が必要な人材を獲得するのは簡単ではありません。中途採用一人当たりに発生するコストもありますし、採用や育成に費やす既存社員の人的コストも無視できません。

 退職者の増加は、仕事のサービスや質の低下にもつながります。業務のノウハウやスキルは、上司や先輩社員が部下に伝えていくことで受け継がれるものです。退職者が多いと、ノウハウやスキルが身についた人材が育たなくなってしまいます。さらに、退職者が多い職場では、社員のやる気が低下し、生産性も下がります。結果的に顧客満足度の低下にもつながるのです。

人材流出が続く企業の特徴

 では、どうして社員は退職してしまうのでしょうか? 

多くの退職者は、その本当の理由について口を閉ざすことが多いのが実態です。ただ、人材流出が続く企業には同じような特徴があります。

 その特徴とは、
『人間関係が悪い』
『労働条件の不満』
『将来性が感じられない』 です。
 

『人間関係が悪い』

人間関係の悪化は、退職理由の最も多い理由の1つです。これが全てだと言っても過言ではありません。

一般的な企業では1日に8時間ほど職場で過ごします。リモートワーク導入されたとしても、仕事を共にする人間の影響はとても大きいのです。 

人間関係が理由での退職が多い企業には、「風通しが悪い」、「社員の愚痴を言う人が多い」、「部署間の対立がある」、などの特徴も挙げられます。

さらに、見過ごせないのが、「マネジメント層との関係」です。単なる人間関係より、自分の評価決定者である上司への不満は退職意向へつながりやすいです。

大手企業であれば人事異動で解消できる可能性もあります。しかし、中小企業では上司への不満を解消するには退職という道しか残されていないのです。

 『労働条件の不満』

労働条件に不満がある社員が、その改善を求めて退職をするというケースもよく耳にします。労働条件とは給与水準や労働環境のみを指すわけではありません。むしろ給与水準などはあらかじめ提示されているため、理解したうえで働いているはずです。

 ここでのポイントは労働条件の「運用面」です。「評価基準が不透明」ということが人材流出しがちな企業の特徴です。

 中途採用者の場合は、給与には納得したものの、昇給方法や評価方法などの細かい運用は入社してみないと分からないのです。入社して運用に不満を覚えて退職意向が高まるケースは多いです。

 既存社員の場合は、何らかの不満の声は上司や周囲に漏らしている可能性はあります。しかし改善を要望したにも関わらず、変わらない会社への不信感が鬱積し、何かのきっかけで他社へ転職することになってしまうのです。

 『将来性が感じられない』

将来性が感じられない環境を嫌う傾向は、若手層にとりわけ強いです。将来性は、「企業の将来性」と「社員個人の将来性」を指します。 

企業の将来性は、現在の業績だけを意味しているわけではありません。業績が好調だったとしても、守りの姿勢が強すぎて、社員への賃金的な還元がないと将来性が感じられないですし、業績が不調な場合も、今までのやり方に固執し現状打破する姿勢がないと、社員は将来性に不安を感じ、会社を見限るのです。

 社員個人の将来性は、「個人の成長」と置き換えると理解しやすいです。「上司の古いやり方を押しつけられる」、「個々人が勝手に動いていて組織力がない」、などが代表的な意見です。

 仕事を通じて、自分のスキルアップが感じられないと、若手層は時間を無駄にしている感覚になり、もっと腕が磨ける環境を求めるようにもなります。
 

社員の定着率を上げるための改善策

 では、上記で挙げたような、人材流出が続く企業の特徴はどのようにすれば解決に向かうのでしょう?

改善するためのキーワードは、「対話」です。

 ①    社員へのヒアリング

人間関係を改善するためには、一気に全てを改善しようとするのではなく、まずは個々の問題から改善することが重要です。

 まず、日常の中でさりげなく、社員へのヒアリングを行います。退職者は本音を言わないことが多いですが、現職の社員であれば問題を改善したいと願っているはずです。

 ただし配慮が必要なテーマでもありますので、ヒアリングに際しては以下の点に注意します。

 ・現職メンバーに話を聞く際は1対1で行う

・特定の問題へのヒアリングではなく、組織風土改善というテーマで行う

・匿名性を担保するなど、話した社員が不利益を受けないように配慮する

・人物名や問題場面などを具体的に話してもらう 

ヒアリングを行うと、話してくれた社員のガス抜き効果も期待できます。少なくとも、「改善しようとしている」姿を見せることで、退職意向がある人が踏みとどまる可能性は高まります。

 ②    評価について話し合う場を設ける

労働条件の不満については、人事制度の運用を見直すことから始めます。人事制度は、「賃金」、「等級」、「評価」の3つの側面があります。このなかで最も打ち手を投じやすいのが「評価制度」です。 

評価制度の運用があいまいな企業が多いのです。人材流出の多い企業は、「評価面談を実施しない」、「評価が一方的」など、運用がきちんとなされていないケースがほとんどです。 

特に社員のモチベーションを左右する評価結果を伝える場面では、以下の点に注意します。 

・評価結果をその根拠とともに伝える

・社員の評価を上げることを目的としていることを伝える

・次に活かせる具体的な改善ポイントを伝える

・一方的に伝えるだけでなく、本人の認識も確認する

 評価制度は社員が最も関心のあることなどで、上司と評価についての認識を共有できるだけでも、本人のモチベーションに好影響をもたらします。

 
③    経営者から全社員に向けて発信をする

多くの企業では、年度末には振り返りを行っています。その際に、経営者から全社員に向けて発信するメッセージには大きな意味があります。 一部の社員のみが知っているのではなく、全社員で共有することに意味があるのです。 

業務効率と成果が求められる日常の仕事においては、それぞれの社員が日々の業務に追われがちです。

ゆえに、企業としてのこれまでの成果や今後のビジョンについて考える機会はほとんどありません。

このような状況では、社員は、将来を見据えることができず、自分の将来に不安を抱いてしまいます。

 

だから、節目ごとに企業のトップである経営者自らが全社員に向けて発信を行うことで、社員は自分の行動を企業の成長とリンクして考えることができるのです。

 全社員への発信の際は、未来志向の視点を盛り込みます。未来志向とは、未来についてのイメージを促し、仕事に対するモチベーションを高く保つということです。つまり、会社の理念、目指す姿を丁寧に示し、社員ひとり一人が自分の人生における価値観・新年と重なる部分を見つけるということです。

 全社的な振り返りの際に、経営者が未来志向の視点を取り入れて話すことで、企業や個人の将来性を社員に認識させることができるのです。

 

最後に、退職に伴う人材流出は、放置しておくと、退職者が退職者を呼ぶような「負の連鎖」を生み出します。この負の連鎖を断ち切るには、大きな労力と時間を要するのです。この労力と時間を、日常の業務に振り分けることができないというのは、企業においての損失は計り知れません。

企業が退職者を減らそうとしている姿勢を見せることが最初の一歩です。

社員は、経営者に信じられていると感じるときに、最高のパフォーマンスを発揮するのです。

人生で最も大切なこと、それは 笑顔で心穏やかに生きること。これだけで、私たちは、人として価値がある。これだけで、私たちは、まわりの人に貢献でき、まわりの人を幸せにできる。