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My identity

 「アイデンティティ」とは、エリクソンが提唱した心理学の中で、最も優れたテクニカル・タームだと思います。自分は何者であり何を成すべきか」の自己問答によって解決すべき、青年期の発達課題と言われています。その結果、自分らしさが明らかになります。

 別の言葉を使うと、パーソナリティの形成とでも言えばいいかと思います。いわゆる青春の真っ只中。心身共に、大きな変化を遂げる時期です。例えば、私など、中学校入学時には、身長が150cmだったのが、卒業を迎えた時、180cmにもなっていました。

 こうした急激な成長は、関節に大きな苦痛をもたらします。成長痛は、寝ている時に起きました。唸りながら寝ていた記憶が、あります。体だけでも、第二次性徴期も通過しなければならず、誰に教えてもらったわけでもないのに、生殖能力も芽生えます。頭の中の99%が、助平なことだったのも、懐かしい記憶です。思春期は、あれやこれや忙しかったのです。しかし、アイデンティティの問題など、考えたこともありませんでした。

 私は、アイデンティティを「自分らしさ」と勝手に解釈して、更には「誰にも持ち得ない個性」だと考えていました。私だけができること、すなわち「オリジナリティ」の追究こそが人生の目標とすべきといった結論を、高校時代には掲げていました。

 一見立派に見えますが、実際は人と同じことは絶対にしたくないと、ただ無理なワガママを通してきました。そして、愚かなマンネリズムを、とことん嫌い、一番嫌いな言葉は「妥協」でした。ここで打ち立てた価値観は今でも続いています。

 高校時代、私は「中間派」と言われていました。特定の仲間意識をもつのが、嫌だったからです。ただ、特定の人と「ツルむ」の大嫌いでした。周囲の人たちは、不思議に思ったそうです。しかし、褒められもせず、けなされもされませんでした。とにかく、狭い人間関係でボスになり家来になるような狭い人間関係を、幼稚な営みと捉えていました。

 私のアイデンティティを一言で言うなら、「寂しがり屋の一匹狼」とでも言ったらいいのでしょうが、人付き合いが下手だなだけです。また、ワガママな自分を抑制できないところをひた隠しにする自分が存在します。要するに臆病なパーソナリティの持ち主だと、結論づけることができます。

 希求し続けているのは、自分のオリジナリティだと考えます。まず着る物ですが、アメリカン・トラディショナルが大好き。サックスのボタン・ダウンシャツにレジメンタル・タイ、紺ブレにブラック・ウォッチ柄のダブルのスラックスが、定番スタイルです。

 しかし、ジャージは、その素材ゆえに大嫌いです。また、ブランド物が、意味もなく高価なので大大嫌い。アスリートじゃあるまえし、高いジャージを着てカッコつける趣味は全くなし。仕方なく買う場合、Amazonで検索。そして、最近はWork◯◯◯フリークになっています。

 着る物だけでも、このこだわりです。ポイントは、たとえ贅沢しても人とカブらないことです。普段の買い物と、こだわりの買い物では、財布が違うと公言していました。この考え方になったのは、薄給の独身貴族で35歳にもなった時です。

 このまんま、薄給をもらって、ただ飲んで食っていくのに、急に虚しさを感じるようになったのです。給料は安いけれど、自分が所有者オンリー・ワンになるために欲しいと思ったのは、外車でした。なぜ車なのか。特に確固たる理由は、ありませんでした。

 その時期、仙台から外車の行商に来た人がいました。あちこちでセールスしているそうで、偶然通りかかった中学校には、たくさんの教職員がいると聞いてやってきたというわけです。後のVOLVO CARS 秋田支店の店長さんになる人で、市場拡大を命ぜられ、秋田県内を回っているとか。

 何度か車種を替えて試乗をさせてもらいました。結局、とにかく真っ赤な850Rエステートに決定。頭金すらなかったので、月々10万、ボーナス20万の無謀なローンを組みました。正に清水の舞台から飛び降りた感じでした。値段は、国産車2台分でした。

 毎日、この車に乗って通勤しました。当時3ナンバーの車は珍しく、室内の広さや頑丈さに、毎度満足していました。本物に乗る満足感は格別。乗り込むだけで、何とも言えない満足感を得られます。その反面、故障も多くありました。13年乗り続けました。

 さて、自らのアイデンティティは、身の程知らずの高価な物品を手に入れるだけでは、真の達成感は、得られません。すなわち、金で解決できる部分はほんのわずかという、厳然たる事実があります。物欲を満たしただけで得られる満足感は、空虚なものです。

 やはり、人間的な温かみが欠かせません。教員時代、非行や不登校といった問題行動に関わってきましたが、全てに共通するのはやはり愛情への渇望感だと思いました。これは乳児期の「信頼」、幼児前期で「自律性」、幼児後期で「積極性」、学童期で「勤勉さ」の各発達課題を解決に導くのは、やはり保護者をはじめとした、多くの大人たちによる愛情や思いやりに託するところが、非常に大きいと思います。

 すなわち、人は自力だけでアイデンティティ(自我同一性)の形成はできず、いろいろな考え方を受け入れて、そこに愛情を感じつつ取り組むことにより、心の成長の一環として捉えることができるのです。

 私自身の不安定なアイデンティティに対峙して、自分のいい加減さを戒めるために3つのチェック・ポイントで確認、訂正を繰り返してきました。中学校の頃から、今もなお随時チェックをします。

あせらず なまけず ていねいに

 数ある座右の銘の中で、最もシンプルかつ奥深い言葉だと思っています。自分を戒め戒め生きていくことが、いずれは達成感につながると信じています。しかし、まだ開花していないのが、正直なところです。





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