見出し画像

時間泥棒は誰だ?

 生きている長さと時間泥棒の被害件数は、確実に比例していると思います。そして、被害者が時に加害者になっていることも、少なくないとも言えるでしょう。

 時間泥棒の定義の重要な点は、相手が生活を共にしていないことです。時間は、誰にでも平等に与えられています。しかし、自分以外の時間に無頓着になる時が、人の時間を搾取していると考えるべきです。

 すなわち、時間を奪われる場合に、その不快感をもつ場合、時間泥棒は立件します。そして、往々にして、不快感を相手に伝えた時に、異なる意味での不快感を生じます。もしも、この繰り返しが継続するならば、究極的には、人間関係は破綻します。

 最初から大袈裟な物言いをしてしまいました。時間泥棒は、犯罪ではありません。人として、そして東北人として、齢63まで生きてきて、時間泥棒の被害と加害が、数え切れません。しかし、被害者から指摘を受けたり加害者として謝ったりした経験については、数えるほどしかないのです。

 人は、険悪な沈黙を、何よりも恐れていると思います。と、ここまで書いて、私個人の問題であり、一般的なことではないように思えて来ました。お読みいただいている皆さんのご意見をいただきたいものです。

 さて、時間泥棒には、幾つかの手口あると考えます。いずれにせよ、社会人としての信用失墜行為に他なりません。人としての歪んだ価値観の問題だとも、言えるでしょう。その例を、幾つか紹介しましょう。

 学校の授業で、終わりのチャイムが鳴っても話をやめず、時間オーバーする例をよく目にしてきました。教師たる者、チャイムが鳴った瞬間に、生徒のモチベーションがゼロになっている雰囲気を感じないとすれば、生徒指導として「時間を守れ」的発言をする資格など毛頭ありません。

 昔々、テレビ局の若いADさんから、ボディ・ランゲージを教わりました。その中で、「巻く」という業界用語を教わりました。生放送の番組が多かった時代です。「巻く」とは、リミットに間に合うように時間短縮を要求する評価用語です。

 特に民放は、CMの時間確保が命綱。感動的な番組の流れをぶった斬って、CMを流そうものなら、広告主の企業イメージは、ドン底になってしまいます。ADとタイム・キーパーという下っ端が、理不尽にも重大な責任を負わせられることになります。

 ある強烈な経験もあって、教員として授業を時間オーバーしたことは、ありませんでした。いつ終わってもいいような中身の薄い授業だったことが主要因ですが、単純明快にチャイムがなったら終わるもんだという感覚が刷り込まれていただけでした。

 時は過ぎ、チャイムを鳴らす役を命じられた時、天下のSEIKO社のソーラー電波時計を買いました。まずは、チャイムを鳴らす時計も1秒たりとも狂わないよう調整しました。そして、電波腕時計を見ながら授業をしました。「では、終わります」と言い終わった瞬間にチャイムが鳴りました。

 それが偶然ではないことを、3度目の授業で納得した生徒たちから、賞賛の目が注がれました。信用を得たのです。時間を守ることが、教師と生徒の契約事項ならば、それは厳守すべきことです。

 研究授業という、ペーパー・プランを基にして、参加者に1時間分の授業を見せることがあります。そのプランを検討する際に、どこを巻いたり削ったりすれば、尻切れトンボにならないか、しつこく追求した記憶があります。

 そこで得たコツは、エンディングからプランづくりをスタートすることでした。そうして遡っていくと、スタート・ラインが明白になると共に、余計な活動をそぎ落とす意味での「精選」が実現するのでした。

 さてさて、第二の手口は、待たせることです。ついうっかりで済むものと済まないものがあるにせよ、人間関係の破壊的行為であることは、多くの人に賛同していただけると思います。これ以上書くと、大悪口大会に発展することは、明らかです。

 待ち合わせ時刻や会議等の集まりでの遅刻は、謝りたい心理状態が明白ですが、しごとが遅くてチームメイトを待たせて、一生懸命頑張っているのだという点を強調する輩は、タチが悪い存在と見なされるでしょう。

 第三の手口として、時間泥棒のチャンピオンは、90分のつまらぬ講演・講話をする人です。だいたい、お偉いさんが多いわけですが、勝手に自己満足して自己陶酔している姿は、醜いものです。しかも、謙虚さが微塵もないとすれば、大勢の人々の時間を奪う極悪人とまで、言ってもいいと思います。

 時は金なり。The time is money.と、全世界で時間泥棒は、嫌われています。そうはならないぞと思い始めたきっかけは、一体何だったのかと、遠い記憶を探りました。
 
 やっと思い出しました。忘れもしない昭和60年4月1日。社会人の初日。起床午前8時ジャスト。勤務時間のスタート時刻なのでした。喉元過ぎれば、熱さを忘れるの典型のような私でした。恥ずかしながら、ホントの話です。さて、これにて読み手の皆様の、時間泥棒を終了させていただきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?