見出し画像

『常若ノ国』感想あれこれ

※とりとめのない感想。ちょいとネタバレ。順不同。

・紗弓さんは「希望」と仰っていたけど、私にとっての常若ノ国のラストは「解放」だと感じた。苦しみからの解放。何かに縛られながら生き、死を以て解放される。現ディーテだけでなく、前王ディーテの、メルキオールの、カイルの、そしてエヴァのそれぞれの願いが叶う時、心は解き放たれる。救済に近い感じ。
追記:エヴァにとってはあのラストは希望なのかもしれない。

・GOD席は文字通り神の視点。壇上に椅子があるのも目線の高さが変わって面白かった。一般席のお客さんの視線(頭)の動きがよく見える。
・登場人物たちが、こちらの空間に向かって芝居をする時、その姿が神に怒り、神に祈り、神に問うてるようにも見えた。
・最初のナンバーで一度だけ、椅子の背もたれに手を置かれてどきっとしたw(私側はディーテ様)あとは接触なし。ただただ眺めるのみ。
・通路での芝居がめちゃくちゃ奥行きが感じられて、立体的に見える。新鮮で楽しい。

・一般最前列は傍観者の視点。その場面にいるかもしれないコロスか。役割を与えられている気がして、目撃した第三者の感覚。
・感情移入=役そのものの気持ちになる、ということだとしたら今作ではそうはならなかった。新しい感覚、非常に面白かった。
・座って通路を挟んでの会話。キャストの隣の席から観る景色。対峙する演者をあんなに真正面から見ることはなかなかない。それこそプレミアムアングルみ。目の奥の感情まで読み取りたくなる。楽しい。

・メルキオールのあのシーン。はじめは否定していたディーテの「覚えているさ」と、嘘でもそう言う芝居がとても刺さる。二人の関係性がくっきりした。

・錯乱、衝動の芝居、長い時を生きていることを納得させてくれる台詞回し、遠い目。マナさんでなければ出てこないメルキオールの味わい。
・賢者として諭したり諌めたりしながらも、一番欲しい「死」を何としてでも掴みにいく強かさ。穏やかで柔らかな微笑みの奥に、何にも侵せない硬く強いものがある人。

・みんな、優しい。誰かの願いが叶うことを願ってる。

・文音さんの、現ディーテと前王ディーテの演じ分けがすごい。第一声と眼差しだけで、どちらかわかる。
・現ディーテは自らやれることがほとんどない役だなと思った。周りの3人が目的に向かって動いていく中で、自ら死ぬことも出来ずただ寿命を待ちながら、変わっていってしまう片腕を見ていることしか出来ない。
・不死王という生まれ直しをする者はディーテしかおらず、本当の意味でわかりあえる者もいない。苦しみ、運命を呪う、でもそれがエネルギー。怒りとかなしみの叫びのようなあのナンバーを、GOD席で観られて良かった。
・紗弓さんの見てきた悩む文音さんの姿は、確かに、ディーテの中に渦巻く思考と感情にリンクするところがあるのかもしれない、と思うと面白い。演劇って面白い。

・カイルに対して「やらずともよい」と言ったり、メルキオールに対して嘘の肯定をしたりする時の、文音さんの表情が慈愛というか包容力というか…プラス、哀しみと切なさと。素敵だった。

・カイルはとても興味深いキャラクター。観る度好きになってるからたぶん配信で更になる。弟殺しという境遇、烙印の処刑人としての葛藤、前王ディーテへの、メルキオールへの、現ディーテへのそれぞれ異なる強い想い。
そして道を間違えさせたルドヴィカへの(ネガティブに感じられた)感情。ひいては鏡写しだからこそ憎みたくなるのか、エヴァを絡みとり利用しようとする行動。
多様で複雑なものがカイルの中にぐちゃぐちゃと詰まっている感じ。
・目がこわい。距離感バグ、絡み付く感じ。まさに蛇。

・自分を愛せない人たち。

・エヴァ「何をするか、何をしないか…」、カイン「人間が好きな言葉だ」のくだりが大好き。台詞が良い。お二人の台詞回しも最高。

・人体実験の話をする時、陰が一層濃くなる表情に、エヴァがさらされてきた環境、背負ってきた過去を想ってしまう。

・エヴァの歌、民謡っぽさがとても素敵。シューラールーンと夜の使者。

・華奢で小柄な紗弓さんと男役メンバーとの身長差と体格差、ときめく。

・跪くフォルム(全員)、尊い。

・曲終盤にドライブがかかるカイルまなむさんの歌声、最高。大好き。特に千秋楽はすごかった。

・ファンタジーなのもあって、とてつもない情報量。気が抜けない。聞き逃せない。

・最強ビジュアルは、あの距離なのでありがたく隅々まで拝見させていただきました。いつもながら細部まで拘りを感じる。美麗。ずっと見ていたい。

・側を通る度に、手を差し伸べる度に、いいにおい。衣裳の裾が触れたり。息づかい、空気の動きを感じる。三次元を実感。

・メルキオールは一番の願いを叶えてハッピーエンドと取りたい。自ら死を選んだというのに、あれだけ苦しんだのだから良かった、と思わされてしまう。解放。

・カイルのラストはある意味バッドエンドか。何も思い通りにならず、悲しくなる。ディーテよりメルキオールの側に行くことを選んだのは眷属ゆえか。自らの意思で死を選ぶということは、とはいえやはり解放?

・エヴァは、ラストシーンのあと、どうしたんだろうか。

・カイルによって逃がされて島の外へ出た現ディーテは、帝国から逃げて、どこか遠くの地で自由になったんだろうか。それとも島の全滅で現ディーテは死に、新しい別人格のディーテが?
そう遠くない未来に寿命が来て現ディーテの生が終わるのなら、逃げて、少し間でも自由か幸福があってくれればいいなと思ってしまう。

・言ノ葉の歌が印象的。お互いが歩み寄っていく。理解と共感。
・それでも共に生きていくことは出来ないという現実。エヴァの方が帝国で厳しい状況下にいるのか。ディーテの周りは、きっと優しい。

・二百年前までは吸血鬼も街中で暮らしていたのに、そこから海上の島に追いやって閉じ込めて更に跡形もなく全滅させるって、人間の欲望が恐ろしい。その辺りの戦争の発端、経緯、歴史も知りたくなる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?