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南の島も笑ってる 第12回

祭りの後の静かなひと時です。

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西表島縦断ハイクを終え安ど感に包まれた我々であったが、その達成と引き換えに我々の心と体には多くのダメージが残ってしまった。

エガさんの足には無数の水ぶくれができており、歩くのも困難な状態に。結局彼は翌日以降キャンプ場から動くこともなく、残りの2日間を昼寝と読書と海水浴に費やしていた。
俺は体力的には回復したので、あちこちを歩き回りながら写真を撮っていたのだが、この連日の狂ったような暑さにいい加減嫌気がさし、撮影も気がのらなかった。何もかもするのが面倒くさくなっていた。

島滞在はあと2日を予定していたが、眠ったような時間が過ぎていった。
去年と今年、西表島に滞在したが、この熱帯の島で暮らすのに大切なことは「頑張らないこと」であることがわかった。ここには独特の時間の流れがあり、この流れの中で頑張ることはその流れに逆らうことである。確かにキャンプ場には多くの長期滞在者がいるのだが、彼らの多くは何もしていない。一日中日陰でゴロゴロしていた。
頑張っても仕方ない、時の流れに身を任せよう。そして島での滞在が長くなればなるほどその流れに飲み込まれていく。

顔見知りになった滞在者から面白い話を聞いた。
この西表島のジャングルの中には何人かの「世捨て人」、要するにホームレスが住んでいるらしい。長期滞在者のなれの果てだ。元々は旅行者だったはずなのだが、たどりついたこの島が気に入ってしまい、長く滞在するうちにこの流れにすっかり飼い馴らされてしまったようだ。
暖かいのでどこで寝ても大丈夫、食べ物は海に行けば魚が取れるし、お金が欲しければ日雇いバイトで最低限は稼げる。そう考えると、日常に戻ってあくせく頑張るということがバカバカしくなってくるのであろう。世捨て人の完成だ。
はたから見るとなんとまあ馬鹿なことをと思うが、ただ、ここにいると少しだけその気持ちが理解できるのである。

2日後、我々は西表島を離れた。相変わらず太陽はうるさく島を離れることに何の感慨も起きなかった。
思い出は帰ってから楽しむこととする。

これから沖縄本島に渡り数日を過ごす予定である。
この付け足しだと思っていた本島編であったが、ここで文字通り我々は本当にとんでもない体験をするのであった。

(続く)

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