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南の島も笑ってる 第4回


まだ初日です。

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太陽は大分西に傾いてきたが、それでもまだかなり暑いので泳ぎに行くことにした。
この星沙海岸、星の砂と言ってもいわゆる砂浜はそれほど広くない。大部分はサンゴでできた岩が占める、かなりごつごつした海岸である。
我々が行った時間帯はちょうど引き潮であり、岩のくぼみに水の溜まった天然のプールがそこかしこにあった。こういう場所には逃げ遅れた魚が残っていたりしている。
俺はこういうのを眺めているのが大好きである。

マスクとシュノーケルを付け、早速海に飛び込んだ。
晴れた空、そよぐ風、青いサンゴ礁、海に飛び込んでスカッと爽快!と思いきや、海水がかなりぬるい。
いや、ぬるいどころではなく熱いと言った方がいいかもしれない。もはやこれはお湯だ。これでは逆に体が温まってしまう。
去年こんなに熱かったっけ?と思案していると、さっき石垣島で聞いたタクシー運転手の話を思い出した。つまりこれも雨が降らないせいである。台風が来ていないのでサンゴ礁の中の海水がよどみ溜まっているのである。

サンゴ礁の島は周りをリーフと呼ばれる天然の防波堤のようなもので覆われている。島はプールの真ん中に浮いている形となる。
このプールの水は普段は大部分が外洋に出ず防波堤の中をグルグルと回るが、台風のような嵐の時に外洋の新鮮な水と入れ替わる。
今年は台風が来ないのでこの水の入れ替わりがないのであろう。そういえば藻のようなゴミもかなり浮いていた。
東京の涼しい夏もそうだけど、暑くなるべき時に暑くならず来るべきものが来ないというのは自然にとっても人にとっても大変な困りものとなるわけである。

それでも海の中は色とりどりの魚やイソギンチャク、ナマコなどの軟体動物などで溢れていた。こんな熱い海の中で、みんなのぼせながらも元気に暮らしているようである。
エガさんも熱さと期待外れの入り混じったうつろな目をしながらも、海の生物たちには感激したらしく懸命に泳ぎ回っていた。

やや期待外れであった海に対し、空は変わっていなかった。
相変わらずコクのある青色に濃い絵の具を垂らしたような白い雲がごんごんと広がっている。広い空は本当に気持ちいい。これを見られただけもよしとしよう。
そしてこの空は夜にすごい物を見せてくれた。
夕食を終えた我々の頭上に広がったのは満天の星であった。その数がとにかく半端じゃない。良く知る星座を作っている明るい星の間に名もない小さな暗い星たちがびっしりと埋まっている。もはや星の間に黒い闇があるといった感じだ。
そして太い天の川はまさに川のように天空を流れていた。
ここに星座早見表がないのが実に残念である。
暑くてテントの中にいられない我々は草原に寝ころびしばし空を眺めていた。
草枕に満天の星、何とも贅沢なベッドであった。

いつの間にかうとうとしていた。とりあえずテントに戻って寝ることにする。明日の冒険が楽しみである。

(続く)


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