10/4　夜

失敗したときに

「こんなはずじゃなかった」

って言うこと、ありませんか？

では何をしたら『こんなはず』にならなかったのでしょうか、そこまで考えて「こんなはずじゃなかった」と言っている人はどれくらいいるのでしょう。『こんなこと』になってしまったのは以前の選択肢や行動に原因があると考え、今後の行動に活かすことで次の『こんなこと』を未然に防ごうとしている人がどれほどいるのでしょうか。

私がここで使っている『こんなこと』にはマイナスのニュアンスが含まれています。この言葉は良くない事、予想だにしていない事が起きたときに使われる言葉であるように思えます。便利な言葉です、こう言ってしまえば現在の自分の不都合を過去の選択肢を誤った自分へと移すことができます。

ここからの話は誰のことでもありませんし、それと同時に誰かのことなのかもしれません。歯切れの悪い煮え切らない言い回しで恐縮ですが、本当に誰のことでもないし、誰にでもあり得る話になるかもしれません。

平凡な家庭に生まれ、地元の公立小中学校で学び自分に合った高校に進学をした人がいます。小中学校からの友人もいれば、高校からの友人もきっといることでしょう。ここからが大きなターニングポイントです。

この人は大学に進学をすることに決めました。小中学校の友人や周りの友人に聞く限り、皆進学をすると言うからです。この人の親も大学を出ています、当人も大学に行くことに抵抗はありませんからこの選択は妥当と言えるでしょう。

無事に大学へ進学したこの人は、適度に勉強をして、適度に遊んで、就職活動の時期を迎えます。色々な会社を受け、そのうちの数社から内定をもらうことができたので、その中でも一番安定していそうな会社に入社することにしました。晴れて社会人となりました。

順調な人生を送っているように見えるこの人はある日突然こう言うのです。

「こんなはずじゃなかった」と

この言葉はここまでのどの時期に向けられた言葉なのでしょうか。この人の『こんなこと』は些細なことだったのかもしれません。例えば給料、出世、人間関係、学生時代の友人と自分を比較してしまったのかもしれません。なんにせよ現状に納得がいかなかったのでしょう。だから過去の自分へと今の不満を押し付けた。「こんなはずじゃなかった」「今がこうなのは自分のせいじゃない」そんな感情があるのでしょう。

しかし過去を振り返っても間違っている選択は見受けられません、それどころか現在では一般的とも言える人生なのではないでしょうか。

ここでいう間違いのない選択とは決められた数を与えられた中での自由な範囲でしかありませんから、このルートの中で大きな差が出ないものとしましょう。恐らく違う会社に就職していたとしてもこの人は同じ言葉を使うことになったでしょう。間違った選択が準備されていないなら、いくら振り返っても間違いなんてあるわけがありません。

自分で選んだ選択肢を間違いであったとするのは過去の自分への冒涜であり、同時に今の自分への否定でもあるのですがそれを意識はしないでしょう。これは自分にしか許されない特権ですが。

『こんなこと』になる原因は必ず存在しますが、それを特定することも特定して追求することも難しいでしょう。そしてそれをすることは無意味に終わるでしょう。過去を覆すことはできません、今を受け入れるしか選択肢は残されていません。本当に？

転職だってできる、起業だって可能であるし、もう一度大学に通うこともできる、新たに資格を取得することだって。まだ選択肢は無数に残されている状況である。ここで「こんなはずじゃなかった」と言っているのは他の選択肢が最初から見えていないのだ。現状を打破できるものを探していないのだ。その言葉に甘えているし、本人は全くその状況を苦にも感じていない可能性だってある。

「とりあえず言っただけ」

「転職とか考えてない」

「別に苦労していることもないし」

蓋を開ければこうなる人がどれだけいるだろうか。

真に行き詰ったときにはこんな言葉を言っている場合ではないのではないのではないだろうか。「こんなはずじゃなかった」という言葉は便利な逃げ口として機能しているように思えてならない。自分の人生の先がまだ不透明なままで。

『こんなはず』の先、見えていますか？

2020/10/4　24時半