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映画を観て楽しむ日

『八つ墓村』1977年公開

多分この映画の宣伝をリアルタイムで見たかもしれないという記憶がうっすらある。もしかしたら社会現象になったらしい「祟りじゃー」という言葉だけが印象に残っているだけかもしれない。それかドリフターズの『8時だよ!全員集合!』での記憶かもしれない。なにせ男の人が蟹股で走ってくるシーンが怖かったのは覚えている。

石坂浩二主演の金田一耕助シリーズを当時住んでいたマンションの地域ケーブルテレビで見ることができたのがきっかけだった。
『犬神家の一族』、『悪魔の手毬唄』、『獄門島』、『女王蜂』、『病院坂の首縊りの家』である。
あまりドラマなども見ないのだけどもいったん好きになったら円盤を買って何度でもリピートして観る。そんな極端な性格で一気に石坂浩二の金田一にはまってしまい、原作の文庫本も買い、原作を読んでからの映像との比較をしなぜ脚本家が原作とは異なった部分を作ったのかを考えて興奮していた。

かなり変態である。

昨今リスペクトに欠けたような造りのドラマや映画が多いのではないかと思うのだが、この金田一シリーズの映画に関しては脚本家の原作者に対してのリスペクトというか愛を感じてしまう。脚本家が原作の面白さと難解な部分を如何に限られた上映時間内で見る人に原作の良さをかみ砕いて整えたものを見せるんだという意気込みが感じられる作品の一つだと思う。

石坂浩二主演の金田一耕助シリーズをしゃぶりつくしたあと、そういえば石坂浩二主演じゃない金田一耕助の映画があるよね?見ちゃうかい?となって最初に見たのがこの有名な『八つ墓村』だったのである。

寅さんが金田一なの?から始まり、萩原健一が濡れ場を演じたら日本中の女性が死んでしまうという事で代役(風間杜夫)だったとか(そんなに萩原健一って人気やったんですね…)鍾乳洞が実は色々な場所で撮影したものをつなぎ合わせているとかそういううんちくを仕入れてから見たのでイヤラシイ目線で見たと思う。原作もじっくり読んでかなり難しいなと思いつつ…。

石坂浩二絶対論者だったのだが、この渥美清の考古学者っぽい田舎の先生っぽいもっちゃりした雰囲気は陰湿さがある物語の中唯一サラッとさせる人物でとても良かった。石坂浩二推しとしては悔しいがこれは許そうと上から目線になった。
実際映画の事件が終わって落ち着いた時に渥美清がその人柄を物語る優しく気遣いを見せるシーンがある。石坂浩二がもしそれをやるとちょっと違うというか逆にストレートに言っちゃうか、言わないキャラクターになってると思う。それほど渥美清の金田一は優しさに包まれていたと思う。石坂浩二が三ツ矢サイダーなみの爽やかな優しさであれば、渥美清の優しさは桃ネクター。絶対好きやん、そんなの。

この映画は製作スタッフの原作愛によって渥美清で昇華されたものだと思う。推し以外の俳優が演じるキャラクターに合格点はなかなか出さない私だが、出しちゃう。

YouTubeで期間限定で無料で見ることができたので改めて感想文を書いてみた。無料、本当にありがたい。厚かましいがまたお願いしたい。

上演開始1:30頃、渥美清がバスに乗るシーンがある。私が住む町には無くてはならないバス会社である。それが映っているのは小さな驚きと喜びだった。ロケのあった営業所は一番綺麗なバスを用意して前日はピカピカに磨いたんだろうなって想像したら微笑ましくなった。




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