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腐敗でなく②〜肉治郎立志編〜

☆前回までの発酵具合☆
なんか色々わし的にニヤニヤする記事書いたのに、noteの使い方をまだ殆ど把握出来ていない己の未熟さと過ちで、記事も自分も真っ白な灰と化す苦行中。
そこへ更に会社の方でもわし自身の無能さ故の激務が訪れ、ほぼパニックで週末を迎え、今、荒野に立つ。


【新たな扉でチャンバも走る】

「ニクちゃん、コミケ行こぉぜ」

とAJに誘われるままに、小4のわしは初めてそのコミケとやらに向かう───。



コミケの前に説明せねばなるまい。

普段AJとはイラストを描き合ったり、ちょっとした自作漫画を見せ合ったりする仲だったため、AJの嗜好からわしもアニメを嗜むようになっていた。

特段のアニメ好きでなくとも、わしら世代は娯楽といえばテレビ。子供ならどんなアニメも隈なく観た時代。特に当時大人気だったテレビアニメ『キャプテン翼』は、観たことのない少年少女など居なかった程だ。
六三四の剣ブームが過ぎ去ってからは、子供たちは面と胴着と小手を脱ぎ捨て竹刀を折り、ボールは友達だといってサッカー部へ入部しキャプテン翼を観た。
わしら小学生はオーバーヘッドキック、スカイラブハリケーンなどの大技を学校のサッカー授業で試し、怪我をしたり、サッカーの上手いヤツがモテるなど、サッカーバブルを謳歌した。

わし自身は高橋陽一先生より高橋よしひろ先生派で、サッカーには全く興味が無かったし、ジャンプでもキャプテン翼はスルー。
だがアニメとなればわしも別腹で、毎週毎週放送を楽しみにしていたし、夢の中ではサッカーボールをドリブルし、敵のスライディングをひょいひょいかわしまくっていた。

そんなみんな大好き『キャプテン翼』を、コミケ後はその名で呼ぶことはなくなるのだが…。


さて、本筋へ戻そう。

コミケは地元の市民会館での開催だという。
だいーぶ大規模である。
だって、金持ってる親戚に『劇団四季』の観劇に連れてきてもらった事があるもの…
それに、有名な演歌歌手だって歌いに来るもの…
きっと今に、大好きなとんねるずだって…
いがらしゆみこ先生の『ころんでポックル』の、謎に男女裸の見開きページが目に飛び込んで来たときの回に対する期待よろしく、止めどなくワクワクが溢れ出し高鳴るわしの胸の鼓動ーKODOー。

広場を通り抜け、わしはAJに続いて館内へ。

AJ「2階だよ」
わし(アリーナか…) ※ここは創作

階段を登りつれて来られたのは、「小会議室」(ここはうろ覚えで、第二会議室とかだったかも?)。
…なぁんだ…まあ漫画ごときに大ホール規模を使うわけないかとひとりごちた。
しかしこの年、東京晴海では三万人規模のコミケを開催しているが、この時のわしは知る由もない。

ロの字に設置された長机に、綺麗に平積みされた小冊子の数々。
なんと、高橋陽一先生本人が描いたものではない翼たちの絵が表紙を飾る。
わしは表紙で踊る文字に気を取られる。

『C翼』

もちろん秒で察する。
既にプロが作品として発表しているものを、第三者が好き勝手する「二次作品」。つまり『同人誌』とこのわし発酵肉とのヌルッとした出会いであった。

AJの知り合いがいて、駆け寄っていた。売り子をしているようだった。だいぶ年上の女性。前にAJが姉妹でコミケに訪れた際に知り合ったのらしい。
「この人たちのは面白いよ〜!」とAJ。
どうやら自分たちのサークルの本を、自分たちで売るスタイルらしい。
年上の女性は私に対し分厚いレンズの眼鏡を光らせ、「『やおい』は少なめだけどね」と下卑た笑顔を向けた。


【所謂オタクにはなれなかった】

わしは付き合いでそのサークルの同人誌を一冊買ったが、正直AJの方が絵は上手いし、子供のお遊びだなと思った。

そう、コミケはわしにとって、はっきり言ってつまらなかった。

どの作品もぱらぱらと見せていただいたが、わしは刺激を受けなかった。
『なかよし』ってすごい。
『ジャンプ』ってすごい。
素人を知り、プロを知って、わしにも奥行きが生まれたかもしれない。

わしはその後一度もコミケへは行かなかった。
なんなら10年後上京してもなお、コミケへの興味が湧く気配は徹底的になかった。

コミケ後に漫画の好みは変わってゆくこともなく、わしはラーメン屋で『ドクタースランプ』を読み、クレープ屋で『ドラえもん』を読み、銭湯で『いけないルナ先生』を読んだ。

その実、『キャプテン翼』は脳内で『C翼』と変換されるし、あの売り子の女性の口からチラリと出た「やおい」と言う言葉の針にはしっかり食いついていたわし。


これから長く続く発酵道の序章であった。


小学校生活も大詰めの頃、遂に『聖闘士星矢』が流行りだす。
AJはもちろんどハマりしていたが、わしのツボはこの時も何処かへ行ってしまっていた。『風魔の小次郎』で見た女番長のおっぱいに小宇宙(コスモ)を感じたようには、聖闘士星矢にそれを感じなかった。

微妙に世間の所謂オタクたちとはベクトルを一に出来ないわしは、端から特に気に止むこともなく、AJたちと同人誌を作り、20〜30円の利益を得ようとして学担に説教されたりするような充実した日々を送っていた。


そんなわしもそろそろ中学生に!なるのか!?
(なるだろうよ!)
相変わらず誰も気にならないこの続きはまた次回へ。

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