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拝啓、マリックスラインの上で。

自分のことを知る友人によると、どうやら自分はフットワークが軽い方らしい。思い立ったら行動したい。外出でしか得られない養分を吸ってなんとか日常生活を送れている自分だが、そんな中でも忘れられない光景がある。

島が好き。

いつからか覚えてないけど島が好き。山に囲まれた盆地で生まれ育ったからか、海を見ると心が踊るし、島独特の空気感が非日常を感じてとても良い。そうだ、島に行こうと思い立って、卒論のテーマを結びつけ、沖永良部島へ向かった大学4回生の秋。
神戸空港から鹿児島空港、そして奄美空港と飛行機を乗り継いで奄美大島で一泊。早朝に名瀬港を出るフェリーで昼頃に沖永良部島、和泊港へ着いた。

島の景色。

とにかく風が強かったことを覚えている。海は時化ていて、曇り空。サトウキビ畑も揺れていた。卒論のために話を聞いた、島民は強かった。戦後、離島民というだけで差別に遭い、島民が僻みがちであった時代から、島民であることを誇れる時代へ。本土生まれの自分には想像もできなかった困難に立ち向かい、たくましく、なおかつ朗らかに生きていた。お世話になった後輩とその家族に連れて行ってもらった洞窟、砂浜、岬。地元の人と公民館で黒糖焼酎を飲み、島のスナックで北酒場を歌い、大酔いでトイレとお友達になった景色も全部含めて、島の景色。

島の想い。

帰りは沖永良部島を出港し、与論島を経由して那覇へ向かい、那覇から空路で関西へ帰ることになっていた。その時、与論島へ寄港した時の光景が忘れられない。
修学旅行生の集団が与論島からフェリーへ乗り込み、名残惜しそうに港へ向けて手を振っている。港に残っているのは、お見送りに来た地元の人々。
修学旅行生が港へ向けて紙テープを投げた瞬間に、何故だか分からないが涙が溢れた。先人たちは、本土生まれの人間に憎しみを持っていたかもしれない。しかし、修学旅行生や自分みたいな他所者に対して広い心を持ち、快く受け入れてくれる懐の広さ。決して恵まれた環境とは言えない土地で、懸命に生き抜く人々の心の清らかさに胸を打たれた。

与論港にて


自分は映画やドラマで泣いたことがない。作り物に感情移入がしづらいから。
その反面、ノンフィクションに感情を揺さぶられることが多い。人間臭さが大好きだから。
心が揺れる一瞬を切り取る感性だけは失わないでいたいと思っている。常に。



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