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ハイブランドの効用

わたしはハイブランド品をふたつだけ持っている。
バーバリーのトレンチコートと、ルイ・ヴィトンのバッグだ。

バーバリーのコートは人から貰ったものだ。なんとその人が20年も前にイギリスで買ったものらしいが、状態はいいし、デザインも流行り廃りのない正統派なデザインなので、令和の今でも着られる。

ルイ・ヴィトンのバッグは、ヨーロッパに行ったときに免税店で買った。日本で買うよりも数万円ほど安かったと思う。
わたしが自分でハイブランドを買ったのは、この免税店でルイ・ヴィトンのスピーディー30を買ったときが初めてだった。10万円を超える値段のバッグなんて買ったことがなかったから、心の中で絶叫しながらクレジットカードの暗証番号を押した。

で、これらのハイブランド品がわたしにもたらしてくれているものは何かというと、無駄買いの防止である。

冬と夏以外、ずっとバーバリーのトレンチコートをずっと着ている。春になると毎年軽やかな素材だったり色だったりのトレンチコートが様々な店舗に並ぶが、それらにまったく目が行かなくなった。買いたいとすら思わなくなった。
バーバリーのトレンチコートを譲り受けるまで、わたしは春になると毎年トレンチコートを買っていた。ユニクロのコートだったり、アーバンリサーチのコートだったりした。

が、わたしが思うにバーバリーのトレンチコートは、他のすべてのトレンチコートがバーバリーをお手本にしているのではないかと思うくらい、普遍的なデザインをしている。どこに売られているトレンチコートを見ても、どこかに必ずバーバリーの面影を見つけるのだ。

だったら、バーバリーのトレンチコートを持っているのだから、わざわざ似たデザインのコートを買い足す必要はないよね、と思う。そして買わない。

ルイ・ヴィトンのハンドバッグもまた、バッグの無駄買い防止に一役買ってくれている。
わたしはルイ・ヴィトンのこのスピーディー30が、実は買ったばかりのときはそこまで好きではなかった。
本当はスピーディー25(一回り小さいサイズ)が欲しかったのだが、売り切れか何かで買えなかった。
スピーディー30は少し大きく、本革なので重い。雨にも弱い。
ハイブランドらしい気品はあるけれど、率直にいうと使い勝手が悪いと思った。

が、しばらく使っているうちにこのスピーディー30のありがたさがわかってきた。
まず、単行本とペットボトルがザクっと入る。わたしは単行本をよく持ち歩く上に、フラッと本屋に入ってフラッと本を買うことがよくあるので、単行本が入るサイズのバッグはとても助かる。ペットボトルも然りだ。

さらに、ものすごく丈夫である。さっき本革だから重いと言ったが、その重さは丈夫さの引き換えであるらしい。
わたしのスピーディー30は、横をよく見ていない車にぶつかられたり、わたしの尻に物理的に敷かれたり、砂利道でころんだわたしの下敷きになったり、色々と憂き目に遭っているが、全然へこたれない。型崩れしない。

ルイ・ヴィトンのモノグラムのデザインについて、色々と憂き目に遭わせて気づいたことだが、傷が目立たない。
一面無地の本革のバッグは傷が目立つが、モノグラムのように全面に柄を散りばめられると傷に目がいかないのだ。

スピーディー30の丈夫さを信用してからは、かなりの頻度でこのカバンを持ち歩いている。丁寧に扱わなくてもへこたれないバッグは心強いものだ。

そしてこちらもやはり、色々なアパレルショップでバッグを見ていても「このカバン可愛いけど、わたしはルイ・ヴィトンの全然壊れないバッグを持ってるしな〜」という気持ちになって、無駄買いを防いでくれている。

ハイブランドの効用として、テンションが上がるとか、デザインに気品があるとか、そういったブランドの持つ記号的効用の中に、「他のものが欲しくなくなる」という随分と地に足ついた効用があるとは意外だった。

バッグを何個も買ってしまう、というやや買い物依存気味の人は、叫びながら数十万円するハイブランドのバッグを買ってみると、その依存症がもしかしたら多少は治る…かも?

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