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【銭湯めぐり77 滝野川稲荷湯@西巣鴨】映画やドラマにも登場する有形文化財の快適銭湯

【銭湯めぐり77 滝野川稲荷湯@西巣鴨】

映画やドラマのロケ地に銭湯が使われることは意外と多い。昨日訪れた #滝野川稲荷湯 は、映画 #テルマエロマエ や現在放映中のドラマ #9ボーダー のロケ地らしい、ということを知人のSNSコメントをきっかけに知る。そこで昨日は、ドラマと映画をネット配信で視聴後、ちょうどテルマエロマエ原作のヤマザキマリさんが協力している #テルマエ展 が汐留で開催中のため、それを見て、最後に稲荷湯に行くというプランに。

朝から、TVerとAmazon Primeを使って9ボーダーと、テルマエロマエを観る。特に9ボーダーで、現地の銭湯とスタジオのセットはうまく組み合わせて撮影されているんだろうなという想像はできたが、どこまで元々の銭湯が使われているのかが気になった。ファサードと玄関の下足箱、浴室はそのままだろうと想像はついたが、居間のようなスペースはどうやっているのだろうかと。

登録有形文化財になってます
玄関横の貼り紙


またテルマエロマエは、第2弾を含め、箱根のユネッサンとか草津の湯畑など、国内様々な温泉地も撮影に使われているようだが、紀元2世紀のローマ帝国からタイムスリップしてきた主人公ルシウスが、初めて「平たい顔族」(日本人)と出会う場所のロケ地がここ稲荷湯。

午前中に東京体育館の50mプールで軽く泳いでから、都営地下鉄大江戸線と三田線を駆使して汐留と西巣鴨へ。汐留の #パナソニック汐留美術館 は、企業美術館としてフランク・ロイド・ライト展とか、なかなかユニークな展覧会をやっている面白い場所。もともと家電メーカーで今はお風呂も作っているので今回の話があったのかななどと想像しつつ、入場。前半ローマ帝国のテルマエ文化、後半日本の入浴文化を対比して紹介する形。数的にはローマも江戸も3桁の公共浴場があったようだが、ローマ帝国のテルマエは多数の奴隷が運営を支えていたらしく、帝国の衰微と共に失われて行ったらしい。日本の銭湯は家風呂の導入が進んだため経営が圧迫されてきた歴史で、文化としてどう継承するか、という状況になってきているのは周知の通り。なお、江戸期の銭湯と今の銭湯の模型も展示されていて、銭湯好きにも堪らない感じ。土産コーナーに、東大名誉教授本村凌二さんの「テルマエと浮世風呂」という比較史エッセーが売られており、楽しみに購入。

江戸期の銭湯
今の銭湯


ランチを食べ損ねたので途中 #天鳳 という和歌山ラーメンの店でサクッとラーメン&生ビールで腹を満たす。看板と店内の雰囲気のギャップがあるが、まあラーメンも魚介系のスープがしっかり味で及第点。

和歌山ってこんな感じなのかどうか
見た目はなんてことないですが


稲荷湯は前の道路が狭いので、圧倒される感じが少ないが、やはり文化財として継承されるべき建物。クラシックな番台で、浴室の中までしっかり監視できる感じ。約10年前にリニューアルしたらしく、見た目はオリジナルをしっかり残しつつ、機能性を上げて、とても快適な銭湯になっている。サウナはないが、風呂は3種で、かなり熱い(44度以上?)あつ湯、ちょっと熱い(42-3度くらい?)あつ湯(バイブラ含む)、ぬる目(約39度)の炭酸泉。常連さんも一番熱い湯にはそれほど入っていない感じで、真ん中が1番人気。自分は3種類行ったり来たり、1番熱い湯からぬる湯に移るとほぼ水風呂位の感覚。自分にはやや熱すぎたが、熱いのが好きな方にはおすすめ。水シャワーとの組み合わせでととのうこともできるらしい。脱衣所にはしっかり9ボーダーのポスターが。浴後、番台の女将さんに、ドラマを見て、テルマエ展に行ってから来たことを伝えると、少し嬉しそうで、ドラマはまだ続くので見てくださいとのこと。銭湯はこういうちょっとしたやりとりがいい。また、15時台の後半位だったが、あまり混んでいなかったのが意外。今回の一連のコースはかなりおススメ。

横の長屋


湯上がりに隣で運営されている #稲荷湯長屋 へ。写真にあるように、今月は木曜から日曜まで出店者がそれぞれいてて、空いている時間も貸し出しているとのこと。この日も早速興味を持った人が読書会の予約をしたり、フリーペーパーの打ち合わせをしたり、地域のハブ的存在として機能しているよう。昔ながらの和室でとても居心地が良く、クラフトビールと吟醸酒をいただきながら、楽しい読書タイムとなった。ボードゲームやトランプを楽しむ子供連れも。

東京のクラフトビール
日本酒も管理者厳選
昭和5年の銭湯上棟式らしい


この日の旅のお供は、野矢茂樹さんの「語りえぬものを語る」という2008年から2年強講談社のPR誌に連載された哲学エッセー集を編集し、詳しい註(これ自体も読み物)を付けたもの。テーマは多岐にわたるが、表題は「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」としたウィトゲンシュタインの議論に対するアンチテーゼとなっている。500頁もある本だが、一回6000字の連載なのと、独特の敷居が低い書き方で、とても読みやすい。以前、この著者の「言語哲学がはじまる」を読んで感銘を受けて購入したが、期待を裏切らない筆致に満足。

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