見出し画像

01 「KININAL」のスターブランディング

圧倒的に不利な状況をスターコンテンツで打開する。そのアイデアを実現させるために小さなデザインを積み重ねる。これこそまさしくデザイナーだからなせるブランディングなのだと感じます。
今回学ばせていただくKININALとはNOSIGNERさんがブランディングを手掛けられたケーキ・カフェのブランドです。ものすごく簡単にいえば、博物館のエトランスにカフェ併設のケーキ屋をつくられたプロジェクトです。しかし、こんなに簡単な言葉で語ることは許されないほど大胆かつ緻密なブランディングは大きな成果とインパクトを残しました。ではその内容について学ばせていただきます。

[注意事項]
インターネットや書籍の情報のみによる私なりに感じたことですので、事実や解釈が間違っている可能もあります。予めご了承ください。


1.私が考えるKININALの5W1H

what : エントランス改装を通して博物館の活性化
when : 2018年
where : アクセス、コンテンツ的にも集客に不利なロケーション
who : 今まで足を運ばなかった人
why : 地域未来をつなげる希望の光を提示するため
how : サプライズを数多く生み出す

圧倒的に不利な状況からのスタートだったと想像されます。対象の博物館は埋没林博物館というマニアックな場所。展示物の魅力を最大化するだけでは、立地的なハンデを覆すことは難しそうなイメージです。
ですがここに人を集客することができれば、魚津市の未来を繋げられるとともに、同じ悩みを抱えている地域のロールモデルになれるという大きな目標を立てられたのだと思います。
そこでエントランスとしてデザインし直すのではなく新たな魅力を投入するという大胆な手法をとられました。フルーツの富山という文脈を出発点にしながらも、そこにとらわれない魅力的な商品を開発し、数々のサプライズを生み出すことで圧倒的なブランディングは実現しました。個人的には、この数々のサプライズを「きになる」とまとめられたあたりに美しさすら覚えます。
→既存コンテンツ力を正しく理解し、不足分を補うアイデアを用意する。


2.ターゲットを動かす力

おそらくターゲットは、それまで対象の博物館に訪れたことがない人だったと予想します。さらに未来をつなぐという点において、若年層の集客は欠かせない条件だったでしょう。博物館にはさほど興味はないけど行ってみたくなる。そんな人を呼び寄せるにはかなりキャッチーでサプライズ的なコンテンツが必要です。そこで、ケーキ・カフェの双方で「実物は実際どうなのか確かめたい」という心理を刺激し、現地まで足を運んでもらうというストーリーを描かれたのではないでしょうか。
→自分の目で確かめたくなるコンテンツが重たい足を動かす。


3.圧倒的な集客コンテンツ フルーツケーキ

実際どうなのか確かめたいと思わせるスターコンテンツは見事に誕生しました。まるでフルーツにしか見えないフルーツケーキ。多くの人が初めて見たという感覚を味わったでしょう。そしてそのサプライズを体験するためにわざわざ埋没林博物館に行こうと思ったことでしょう。

圧倒的な集客コンテンツを実現させるために必要なこと
・「フルーツにしか見えない」という魅力的な商品コンセプト
・「フルーツにしか見えない」を最高の形に仕上げる商品開発。
・フルーツにしか見えないように見せるヴィジュアルコミュニケーション。
・コストの壁を乗り越える、魅力あるストーリーの創出。

細かなデザインの素晴らしさはHPや書籍に掲載されていたので割愛します。あの形に仕上がるまでに様々な困難があったでしょう。一歩間違えたらバラエティ番組で消費されるようなフェイクスイーツで終わってた可能性もあります。それを美しくも魅力的なビジュアルに仕上げられたのはプリンシパルを正しく設定し、周囲の人に共有できたからではないでしょうか。完全に個人的な見解ですが「都心にあるこだわりの店」というキーワードがあったように思えます。
・都心のこだわりの店だったら、ケーキの箱は紙の既製品じゃないよね。
・都心のこだわりの店だったら、ドリンクもこだわるよね。
太刀川氏が使われるプリンシパルという考え方は、私が住む田舎ではコンセプトという表現よりも浸透しやすいかもしれません。参考になります。
→素晴らしいアイデアには、素晴らしいプリンシパルと共有が必要。


4.「フルーツにしか見えない」の魅力を分解

なぜこのケーキのアイデアはこんなにも魅力的なのでしょうか。それはそこにないはずの物がそこにあるからだと推測します。つまりはサプライズです。具体的にどんなサプライズが起きたのか見ていくと、3つに分解できる気がします。

1. 加工するのが当たり前のものがそのまま出てくる。
2. 商品カテゴリー名と見た目が大きく違う。
3. 食べてみたかった物がそのまま出てくる。

1、2について
本来フルーツはケーキの材料の1つとして原形を留めないものです。しかしその材料がそのまま完成品として現れる。さらにケーキを名乗っている。
予想外の出来事に、一瞬脳がパニックを起こします。それでも中にクリームが入ったケーキだとわかった途端に謎解きをクリアしたかのような快感を覚えます。先入観をうまく活用したサプライズ要素は大きな効力を発揮しています。

3について
多くのケーキ好きはフルーツも大好きなのではないでしょうか。そして、フルーツをそのまま味わえるスイーツを食べてみたいという願望を持っている気がします。その願望を見つけ出し、形にするという嬉しいサプライズを実現しています。

これらの心地よいサプライズを意図的に生み出す方法を、私なりに分析すると以下のようになりました。

画像1


「STEP1」で具体的な商品名を決めます。「STEP2」でその商品に使われている素材の中から、魅力的なモノを選びます。そして「STEP3」で、その選んだ素材の見た目のまま、商品名を「STEP1」に戻す。
KININALの場合ですとこのような感じでしょうか。

画像2

図にすると簡単に見えますが、これを美しい形に仕上げるのは並大抵のデザイン力ではありません。さらに、「STEP2」の行程を、「魅力的な状態に戻す」ことができているからこそKININALのケーキは圧倒的な集客を果たせたのでしょう。
→商品に対する先入観を、サプライズの要素として活用する。


そのほか、カフェや館内施設、告知方法など素晴らしい点が様々ありましたが今回はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。


まとめ

不利な状況をはね返して、集客したい時に必要なこと。

1.既存コンテンツ力を正しく理解し、不足分を補うアイデアを用意する。
2.自分の目で確かめたくなるコンテンツが重たい足を動かす。
3.素晴らしいアイデアには、素晴らしいプリンシパルと共有が必要。
4.商品に対する先入観を、サプライズの要素として強いコンテンツを。


※当記事につきまして。
完全なるリスペクトから始めた個人の学習です。
著作権等を侵害するつもりは一切ございません。
もし不都合、問題等ございましたらご連絡いただけますと幸いです。
すぐに訂正いたします。何卒よろしくお願いいたします。