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ポーズは8兆個。“演舞”という名の美しきネタを追い求めるミステリアスコンビ「戦慄のピーカブー」、その謎に迫る!

笑いと恐怖、そんなふたつの感情を同時に揺さぶることをモットーとし、お笑い界に何らかの革命を起こそうとする男女コンビがいる。ホリプロコム所属、いしはらあゆむ、渋木プロテインおやじからなる「戦慄のピーカブー」だ。結成3年目ながら、『M-1グランプリ2023』では準々決勝に進出、『水曜日のダウンタウン』の人気企画「30-1グランプリ」には3年連続で出場。さらに今年は、正月特番である『おもしろ荘2024』や『爆笑ヒットパレード』にも出演しロケットスタートを切るなど、メディア露出も増えており、今後の活躍が期待される最注目株である。
リーズンルッカでは、そんなふたりをホリプロ本社で直撃。嘘か真か。笑いか恐怖か。様々なものが混じり合って生まれたふたりの特殊なスタイルについて紐解きます!

■数えたら、ポーズはちょうど8兆個

――結成3年目ながらメディア露出も増えていますが、おふたりも最近は調子の良さを感じていますか?
 
いしはら「そうですね(髪をかき上げ)……むしろ時代が追いついてきた、というのかな。」
 
――時代が後ろから。
 
いしはら「そう。ようやく。」
 
――あまり類型がない漫才スタイルですが、当初から今の形だったのでしょうか?
 
いしはら「ふたりが会った瞬間。一撃でしたね。」
渋木「まったくその通り。」
いしはら「組んで最初の舞台からこの形だったんで。」
 
――それはもはや運命的なものと言っても良いくらい?
 
いしはら「本当にそうかもしれない。漫才やろうとか、コントやろうとかじゃなかった。一投目からこれ。」
渋木「普通の漫才やコントは舞台では一切やっていなくて。」
いしはら「何ならアイディアが先行しすぎて、衣装も全然固まっていない段階からこのスタイルでライブに出ていました。学ランとセーラー服で出たときも。」
渋木「そのときの衣装のままだったら、ひょっとしたら私たちが『新しい学校のリーダーズ』より先に制服界のリーダーズになっていたかもしれない。」
いしはら「うん。そうなりますね。」
 
――なるほど。衣装を含め、現在のスタイルに固まるまでに追加していったコンセプトはありましたか?

いしはら「ネタの感じは運命的だったから、そこからどんどん新しいエッセンスを取り入れていったかな。例えば、恐怖であるとか。ネタをどんどん怖くしていくと、ヒトはどうなるのか。怖さと笑いの共存――その答えを探してネタを作る日々です。」
 
――つまり、ネタの冒頭で印象的に入れられているあの「叫び声」は、ホラーの要素から?
 
いしはら「その通りです。」
 
――ネタを作る上でこだわっていることはありますか?
 
渋木「やっぱりポーズですね。あと、これまでインタビュアーさんが「ネタ」と表現されているものを私たちは“演舞”と呼んでいるのですが、もはやネタの中身よりもその美しさを見ていただけるほうが嬉しい。」
いしはら「最悪、笑っても笑わなくても良いよね――。」
 
――拍手だけでも。
 
いしはら「そう。拍手。拍手が一番嬉しい。」
 
――ちなみに、あの演舞のキメで使われるポーズはどれくらいあるのでしょうか?
 
いしはら「昨日、数えたんだけど、8兆個。」
 
――8兆個!

いしはら「ちょうど8兆個だった。キリが良いんで、これ以上は増やさなくて良いかな。」
 
――どうやってあれだけのバリエーションを編み出せるのでしょうか?
 
いしはら「頭に浮かぶというより、降りてきますねぇ。そう、降りてくる(目を細めながら空を見る)。」
 
――ふたりのポーズは息ぴったりですが、それは打ち合わせなく、自然と合うというか。
 
いしはら「今日も写真撮影がありましたけど、たくさん撮っていただいても何ら苦じゃない。なんせ8兆あるんで、考える時間もいらないです。」

■M-1でもあるんじゃないですか? 無名からの優勝パターン


――お笑い業界では、演舞のほかにフリートークなどの能力が必要になりますが、どういう風に爪痕を残していきたいですか?

 
いしはら「そこがね。めちゃくちゃ課題なんですけど。」
渋木「……フリートーク。」
いしはら「……フリートークって言っただけ(笑)? 確かに演舞だけ見せるのであれば、美しさを極めれば良い。そこに笑いを持ってこなきゃいけないという意味では、最悪、トークが悲鳴を呼んでも良いのかなって。」
 
――なるほど。お客さんを引かせるようなトーク。
 
渋木「そうですね。戦慄させたい。」
 
――そんな渋木さんは、『おもしろ荘』が芸人を目指すきっかけになったそうですね。
 
渋木「どこから聞いたんですか? 怖い(笑)。確かに『おもしろ荘』に出たくてこの道を選んだので、今、ひとつの目標が叶った状態です。これは本当の話をすると、元々ギャグが大好きで、“プロテイン”という名前を付けたのも、なかやまきんに君さんが好きというのが大きな理由のひとつで。小島よしおさんもめっちゃ好きだし、それで『おもしろ荘』に出たかった。」
 
――あの場から世に出ていきたいと。『おもしろ荘』もそうですが、賞レースで勝負する、みたいな気持ちはありますか?
 
渋木「それに関しては、私たちに賞レース側が追いついてくれれば良いんです。」
いしはら「実際、一昨年はM-1も1回戦で落とされたのに、去年は準々決勝まで進出したので、追いついてきたのかな? と。結構、風、吹いてます。だから、狙ってはいますね。 『おもしろ荘』にも出演できて、あとはM-1決勝の舞台でこの演舞ができたら最高ですよね。インパクトは抜群だと思っているので、あるんじゃないですか? 無名からの優勝パターン。
 
――以前「リーズンルッカ」でパンプキンポテトフライさんにインタビューしたときに、「賞レース用にネタを曲げることはない」とおっしゃられていて。その精神は、ホリプロコム所属の方々に共通するイズムなのかなと思いました。
 
いしはら「確かに、勝つためにネタを曲げることはないですね。演舞を理解してもらえた結果、決勝へ行きたい。」
 
――もうひとつ、賞レースとしては『水曜日のダウンタウン』の人気企画「30-1グランプリにも3年連続で出演されています。
 
いしはら「いわば準レギュラーです。だけど、まだ一度も勝ち上がってはいない(笑)。僕たちがやることは変わらないので、あとは審査委員のみなさんが僕たちをどうするんですか? と。今、その揺さぶりを提供しています。」

■にじみ出る真なる美しさを感じてもらって、そこで戦いたい

――振り返ってみて、なぜこの芸風にたどり着いたと思いますか? 渋木さんは洋楽好きで、Queenに影響を受けたらしいですが。
 
渋木なんですか、なんでも知ってるんですか(笑)? いしはらは何かある? 影響。」
いしはら「僕? 見た目は浦飯幽助(『幽☆遊☆白書』の主人公)を意識しています。幽霊、ホラー、戦慄という連想。」
 
――なるほど、そこでつながってくるわけですね。
 
いしはら「見た目は漫画のキャラクターを意識していて。2.5次元ものって流行っていますけど、逆2.5次元。僕の方が3次元から2次元に合わせにいくイメージ。次元をまたいじゃってる。」
 
――渋木さんも漫画の影響だったりしますか? 昔、週刊少年ジャンプで連載していた『ボンボン坂高校演劇部』の名物キャラ・部長(徳大寺ヒロミ)みたいな――。
 
渋木「一ミリも知らない漫画ですね――(スタッフが検索でヒットした漫画の表紙を見せる)。わっ。」
いしはら「あ、確かに。渋木プロテインおやじだ(笑)。」
渋木「私が偶然に、こちらに合わせたのかもしれない。」
いしはら「だから僕たちは、新しくあるし、古くもある。次元も時空も超越する存在なので。」
 
――ここまでお話を聞いていて、他の芸人さんと話が合うのかなと少し心配にもなります。
 
いしはら「そうですね。正直、なかなか難しいところがありますね(苦笑)。何を言ってるだろう? みたいなことは良くある。向こうからも『何を見て育ってきたんだ』とよく聞かれます。でも、決定的な何かがあるわけじゃない。例えば、秋元康さんになぜこんな歌詞なんですか、と聞いて、ペラペラと理由を話されたらちょっと覚めるじゃないですか。」
 
――確かに、謎は謎なまま、勝手に解釈してもらうのが良いかもしれないですね。渋木さんも、いしはらさんと同じような考えですか? かつては大学のミスキャンとかにも出られていますが、何か謎を残したいという部分も?
 
渋木「そんなことまで。」
いしはら「さきほどから、出る情報出る情報、渋木ばかりじゃないですか(笑)?」
 
――すみません。探すと大量に渋木さんの情報が出てくるもので……。
 
渋木「確かに私、ネット界に蔓延ってるから。ミスキャンのときもそうですけど(※どんな格好で出ていたかは要検索)、もう時代は令和じゃないですか。顔の美しさや可愛さだけで競っているのは嫌だなというのがあったんです。造形とか、今やっている演舞からにじみ出る真なる美しさを感じてもらって、そこで戦いたいという気持ちでした。」
 
――なるほど。それが今の活動にもつながっていると。
 
渋木「もちろんです。」
いしはら「美しさは重要なポイントですね。相方と一緒にやっていますけど、そのポーズひとつとっても負けたくない。ふたりでひとつのことをやっていても、お互いを高め合っていきたい。だから、ライバルでもあり、共存関係でもある、そういう間柄は保っていきたいですね。」
 
――おふたりがこれからやっていきたいことはあるのでしょうか?
 
いしはら「雑誌のモデルやドラマ。手広くやりたいですね。もちろんお笑いも。」
渋木「うん。」
 
――どんなドラマに出たいですか?
 
いしはら「学園モノですね。年齢非公開なので、僕らは起用に問題なしですから。」
渋木「私はもう少しアートの方向を突き詰めたいですね。展示会とかそういうものではなくて、ヌードモデル。」
 
――ヌードですか。
 
渋木「ヌードモデル。」
いしはら「それを夫さんは許してくれるの?(※渋木さんは既婚者)」
渋木「昔から興味があったので。いろいろ世間体を考えてね、実行するかどうか決めたい。」
 
――コンビとしては?
 
いしはら「単独ライブをやるとしたら、それはこだわりたいですね。お笑い以外の部分、歌を歌うのもそうだし、スモークも焚きたい。もっと言えば、ワイヤーアクションを取り入れて、宙に浮いてそのままはけていくみたいな。だから、目標としているのは、劇団四季。」
 
――なるほど。お笑いすらも超越していく。
 
渋木「そういう存在に。」
いしはら「まだ誰もやっていないところに、出ていきたいですね。」

【リーズンルッカ’s EYE】戦慄のピーカブーを深く知るためのQ&A

Q.最近ハマっている趣味

A.
渋木:これは趣味というにはアレなのですが、心の中では人を褒めて、口では貶すようにしています。というのも、もしかしたらこの広い世界には心が読める人がいるかもしれないから、そんな人たちに「え、こいつ本当はいい奴じゃん」って思われたい。相方のことは常に貶していますが、心の中では褒めています。
いしはら:今も褒めているってこと? 
渋木:褒めてますよ。全然、整形が似合ってないけどね。
いしはら:ふーん。今、口では貶しているわけだ。
渋木:結局、いいヤツだと思われたいんで。
いしはら:僕はさっき渋木が言ったように、整形ですね。面の改造が進んでいるんで、そろそろ輪郭にも。最終的には体のシルエットも斬新にしていきたい。バービー人形みたいな、逆三角形みたいなフォルムで。
渋木:『マッチョでポン!』(※マッチョを育成するボディビルシミュレーションアプリ)に出てくるマッチョみたいな?
いしはら:それだ!

Q.芸人を目指す人にアドバイス!

A.
いしはら:仕事ですけど、業界に安易に染まって欲しくないですし、自分がやりたかったことを絶対やってほしいですね。ネタ見せとかでもよく言われるんです。「こうした方がいい、ああした方がいい」と。その指示を真に受けていると、「型」にはめられてしまう。僕も養成所時代には、正統派の漫才もやっていましたからね……。
渋木:そうですね……お金のことも考えると、積立NISAとか、しておいた方が良いと思います。
――今は税金も控除されますからね。
渋木:でもどうなっていくのか、先はわからないですけど。
いしはら:だったら、辞めたほうがいいじゃん(笑)。芸人みたいなギャンブルをはじめるに当たっては、積立NISAは辞めておきましょう。それが僕の見解です。

<編集後記>

小雨降るなか、決行されたこの日の取材。写真撮影では、フォトグラファー・是永日和さんの、ハイテンションかつ的確な指示と、8兆個から選ばれたピーカブーポーズとの融合が見事に果たされ、ほんの10分程度の撮影とは思えないケミストリーが生まれました。そのテンションが冷めやらぬまま取材も行われたので、非常に良いムードで進行。おふたりのトークはリアルとフィクションを織り交ぜた絶妙にトリッキーなものではありますが、まったく憎めない親しみやすさもあるというのが魅力でした。

<マネージャー談>

戦慄のピーカブーは普段のやり取りの中でも、圧倒的に「美しさ」へのこだわりを感じられる2人です!単独ライブの話ではスモークやワイヤーの演出案が出てきていて、戦慄のピーカブーならではのライブが想像できて私もワクワクしました!いつか実現できるように、頑張りましょう!!
生で見る戦慄のピーカブーの演舞は迫力が格別なので、ぜび事務所ライブで直接その迫力と美しさを体感しに来てください!

<撮影の様子はこちら!>

【プロフィール】
戦慄のピーカブー(せんりつのピーカブー)
2021年結成。いしはらあゆむと渋木プロテインおやじによる男女コンビ。ネタ(演舞)の冒頭では、センターマイク前で決めポーズと共に「あぁ゛ー!!」と戦慄の雄叫びを上げるのが恒例。さらにツッコミのタイミングでもポーズを取るのが特徴。両者共に生年月日非公開と、ホリプロコム所属芸人の中ではもっともミステリアスな存在。


取材・文/森樹
写真/是永日和
 


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