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藤田悠×門田宗大、舞台『ハリー・ポッター』で生まれた“真の友情”「毎日のようにいて、すべて共有している」

2022年夏に開幕し、今年7月にはロングラン3年目を迎える舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。3時間以上の大作にもかかわらず、リピーター、そして新規の観客は後を絶たない。そんな人気作に当初から出演しているのが、アルバス・ポッター役の藤田悠(以下、藤田)と、スコーピウス・マルフォイ役の門田宗大(以下、門田)だ。つい先日、二人が舞台を「卒業」するということが決定し、このタイミングでインタビューを実施。今の素直な胸の内を明かしてもらった。

■「藤田がいなかったらここまで続けてこられなかった」(門田)

ーー6月23日に、お二人同時に卒業ということで、心境からお伺いしたいなと思っています。藤田さんは、毎回Xに公演数を書き込んでますけど、今410回以上まで伸びて……。
 
門田「マジか。1年の日数を超えてるんだ。やばいね」
 
藤田「考えられないね。それでも正気を保ってられるのは、周りのキャストの方々の支えがすごい大きかったですね。特に宗大は自分にはないお芝居の技術を持っていて、2年間ずっと“気づき”を与えてくれてきた特別な存在だと思っています」
 
門田「僕にとってはこの舞台が『生活そのもの』だったんで、終わったら1回体調崩すと思うな(笑)。最初は終わる実感がないのかなとか思っていたんですけど、5月末ぐらいから『あれ、悲しいな』みたいな感情が湧いてきたんですよね。(藤原)竜也さんがまたハリー・ポッターとして返ってきて、1年目の頃を思い返したりしたからもあるんでしょうね」
 
ーー舞台ではお二方は“最強のバディ”として時間を長くともにしていますが、プライベートでも仲良くしているんですか?
 
門田「そうですね。本当つい最近、僕が別件でオーディションに行ってたときに、その会場の近くが藤田の家の近所で、『(近くに)いるよ』って連絡したばかりです(笑)」
 
藤田「ちょうどその前日、二人で電話をしていたばかりだったから『なんでいるの(笑)』ってなったよね」
 
門田「他のアルバス・ポッター役の二人とも仲は良いんですけど、ここ(藤田)に関しては、特別な感情があるんですよね。お互いが、日々頑張り続けられるモチベーションになってくれる存在。僕にとってそれが『親友』っていうことになるんですが。本当に藤田がいなかったら、こんなに長く舞台を続けられてなかった」
 
藤田「いや、これ本当に取材用とかじゃなくて、相方で宗大がいなかったら、自分もここまで続けられてなかったと思っています。宗大の良いところって『人』の部分で、悩みに対して本気で向き合って、しっかり苦しむんですよね。僕は『よし、切り替えていこう!』みたいなタイプなんで、反省すべきところは目を背けるべきではないよなって、気づかせてくれる」
 
門田「良いように言ってますけど、それはそれで全然駄目なんですよ(笑)。切り替えができてなくて『一生悩むんじゃないか』とか思うことがあるので、自分は自分で藤田のことを羨ましく思っています」

■二人とも酒が弱いため「コーラ」でおしゃべり

ーー互いに補完し合えるような関係性なんですね。
 
藤田「それはありますね。どっちかが落ちてるときは、もう一方が引き上げて。もし二人とも沈んでいたとしても、自然と頑張っていこうぜとなれる。なんか似てんだろうな、根底にある精神みたいなのが」
 
門田「お互い大学で演劇をはじめて、こういう大きな商業舞台も『ハリー・ポッターと呪いの子』がはじめてで、境遇が近しいから、意思疎通がしやすいんだろうね」
 
藤田「宗大が『この芝居の時どう思ってるのかな』とか、プライベートでも言葉を介さずにわかる瞬間があるんです」
 
門田「本当それが厄介なんだよ(笑)。もう毎日のようにいるから、全て共有してるし」
 
藤田「オフレコの話がないね。親以上に共有してる。前に宗大から同じことを3回言われたことがありましたよ。『前も聞いたよそれ!』って」
 
門田「たまに藤田は秘密を隠しているときがあるんですけど、結局後になって全部明かしてくれるんです。『さっき俺めっちゃダサかった?』みたいに隠してたことを気にしていて(笑)」
 
ーーさっきもちらっと話していましたけど、互いの家まで把握しているんですか?
 
藤田「まあ、通っていますからね(笑)」
 
門田「こいつ、俺ん家くると汚くするんですよ。自分の領域を作り出すというか」
 
藤田「行き始めた当初は、すごい良い感じの汚さだったんですよ。でも途中で綺麗にしだして、観葉植物も置きだしたり『ここは俺の知ってる宗大の家じゃない……』となって、もう1度戻すみたいな(笑)」
 
ーー今本当に仲が良い二人ですが、出会いはどんな感じだったんですか?
 
藤田「これは超恥ずかしい話なんですけど、宗大はおととしの開幕時に先発組だったので、早くからお芝居を見させてもらっていたんですが、『うわ、めっちゃ好きな芝居をするな……』と、片思いみたいな感情があったんですよ。それを隠しつつ、こっちからアプローチをかけました」
 
門田「最初は先輩後輩みたいな雰囲気だったけど、接してるうちに彼の精神年齢が僕と同じかそれ以上ということがわかって、どんどん距離が縮まっていきましたね」
 
藤田「俺、最初頑張ってお酒の誘いをしたんですよ。大して強くもないのに『飲みに行こう』みたいな。それで西荻窪かどこかでレモンサワーなんか頼んで」
 
門田「マジ!?やばい覚えてないわ」
 
藤田「『ワン缶しようか(※缶ビール、缶チューハイなどを1缶ずつ買い、公園などで軽く飲んで帰宅する)』とか言って誘ったこともあったじゃん。でも実はお互い酒が弱いっていうことがわかって、それからはコーラで話すようになったんですよね(笑)」

■本当に贅沢な2年間を過ごすことができた

ーーそんな青春のような2年間も、間もなく終わりを告げます。
 
藤田「本番一回一回、その時の最大限を出すつもりでやっているので、最後どうなっちゃうんだろうな。情緒不安定になりそうだし、気づいたら『あっ、終わってた』なんていうこともありそう」
 
門田「なんか俺の感想はちょっと違くて……(藤田を見ながら)こうなりたいんですよ。
結構先々のことばっかり考えちゃう癖があって、終わりを意識しちゃうから、その感覚は捨てたい。これだけ芝居について話せる相手が近くにいて、ずっと芝居に向き合い続けた2年間の日々は贅沢でしたね。得たものは本当に大きかったです」
 
藤田「俺もそうよ。やっぱ宗大って芝居が上手いんですよ、それを目の前で見てるから、常に刺激のある毎日を送ることができました。本当に感謝の気持ちしかないですね」
 
ーー舞台が終わっても、二人の仲は変わらずですね。
 
藤田「いやあ、もう二度と会わない」
 
門田「うん。勘弁してほしい(笑)」
 
藤田「まあ、変わらないといいね。これからは違う仕事をしているだろうから『会いたい』って思ったときに会えないのは寂しいだろうな。なんか……付き合ってるのかっていう感じですが(笑)」
 
門田「いつか、二人で何か作品を作っていけたらなと話しています。その時まで切磋琢磨していきたいですね」

【リーズンルッカ’s EYE】藤田悠&門田宗大を深く知るためのQ&A

Q.舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を通して身についた習慣はありますか?

A.
門田「朝が強くなりましたね。はじまる前は『いつか寝坊するんじゃないか』っていう恐怖があって、目覚まし時計を2個買って対策してたら、いつの間にかそれも必要ないぐらいになりました」
 
藤田「3万円の枕とか買ってたよね。オーダーメイドだったのに、頭に合わなくて三日ぐらいでやめてたんですよ(笑)」
 
門田「起きるのもそうだし、舞台って異常な量の照明があるんで、それを浴び過ぎて交感神経が麻痺して入眠しづらいときもあって。でも、彼(藤田)はすぐ寝られるタイプなんです」
 
ーー藤田さんの習慣はどうですか?
 
藤田「“逆ストイック”になりましたね。食生活のことなんですけど、朝にゼリー、プロテインとカロリーは抑えつつも、夜にピザみたいな偏食をしていました(笑)。やっぱり長く続けるには、ストレスを溜めないことが大事ですね」
 
門田「藤田って、褒め言葉ですけど“ドM”なんです。本当に極端なことをして、自分を追い込むだけ追い込む。このカンパニーの中で一番体力があるからそういうこともできるんでしょうけど」
 
藤田「何か追い込まれたときの方が、跳ね返したときに成長できる感じがするんだよね。以前も、他のことを忘れて一心不乱に課題に取り組んだことがあった時、成長できた感覚があったから」
 
門田「これ、藤田がスポーツやってたのが大きい気がするんすよね。僕は全くスポーツやってこなかったんで、辛いのが嫌なんですけど、自ら“追い込む”っていうところに飛び込んでいけるのは……やっぱり“ドM”ですね(笑)」

<編集後記>

取材日当日は門田さんの舞台が入っていない日。恐縮しつつもインタビューを行ったのだが、役柄以上とも言える「親友」との時間に、終始笑顔が絶えない様子だった。調べてみると3歳も年が離れているわけだが、そんな年齢差を感じさせない軽妙なやり取りの応酬に、友情というものの良さを感じるとともに「これ止めないとずっと話しているな」と、こちら側の心配も出てくる事態となった。二人の息のあった演技が見られるのも、あと少し。

<藤田悠マネージャー談>

前回藤田がリーズンルッカさんの取材を受けさせていただいた際に、この「マネージャー談」コーナーのスクショを撮ってわざわざ送り付けてきたので、あまり良いことは書きたくありません(笑)。そんな可愛らしいやつです。
先日喫茶店で2人で≪ハリポタ後≫の人生について長時間語り合いましたが、「ああなりたい」「こんなことがしたい」と夢と希望に満ち溢れていました。
彼の俳優としての軸が「ハリー・ポッターと呪いの子」になったこと、このカンパニーのスタッフさん・門田さんをはじめとする素晴らしいキャストの方々と出会えたことは、彼が持ち合わせた“運”だと感じています。
ようやくスタートラインに立つ藤田悠。応援のほど、よろしくお願いいたします。

<編集の様子はこちら!>

【プロフィール】
藤田 悠
1997年生まれ。英ロンドン出身の帰国子女。慶応義塾大学在学中に演劇の道を志す。舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の一般公募オーディションにてハリーの息子、アルバス役を勝ち取り、2022年にプロ俳優デビュー。
 
門田宗大
1994年生まれ。東京都町田市出身。日本大学芸術学部演劇学科卒業。映画『今日から俺は!!劇場版』、ドラマ「おっさんずラブ」などに出演後、2022年から舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のスコーピウス役を演じる。
 


取材・文/東田俊介
撮影/松井綾音


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