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『急展開』

急転直下の激寒の大雨という荒れた天気の中、黙々と家でやることをやるしかない状況で、かつての自分の給料明細がチラリと目の端にかかる。

そこに書かれていた金額は、決して少ない金額でもなければ、決して売れているタレントの給料とも違っているが、確実に今よりも多くもらっていた。

その額面と最近の給料を見比べて、自分の中にある僅かなビッグマネーをつかみたいという夢が、フツフツと再び湧いてくるのを感じた。

これだけの大雨だ、どれだけ大きな声で苦悶の叫びをあげても誰も気になどしないだろうと思いつつも、少しだけ残された理性によってその思いを踏みとどまらせ、唇を噛み締めながら何クソ根性で新たなる目標を胸に作業を続けていた。

気がつけば辺りは暗くなっていて、そこに一件の着信。

ただの電話なのだけれど、バクバクと音を立てる心臓の音が聞こえやしないかと思いながら、電話に出る。

「先日は気が付かなかったのですが、もし良かったらサインだけ書きにまた来てもらえませんか?」

先日予約をして伺ったお店だった。

雨は止んでいた。大雨だったのが嘘かの様に弱まった雨を見て、二つ返事で自転車に飛び乗って店へと向かった。

かつての自分と同じ様に、目標を持って売れる為に僕はただ前だけを見て走り出す。

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