化石を探し続けて、メアリー・アニング
19世紀の英国南部に、化石を探して掘り出すことに夢中になっていた女性がいました。その人メアリー・アニング(1799~1847)の子ども時代を描いた伝記物語『海辺の宝もの』(ヘレン・ブッシュ、あすなろ書房)を読みました。児童書ですので読みやすい一冊です。
メアリーの父親は本業のかたわら、自宅近くの海岸で化石を掘り出して販売する副業もしていました。自宅の前にテーブルを置いて、その上に化石を並べて、愛好家や遠方からの来訪者に売っていたのです。子どもの頃からメアリーは兄と共に化石採集のノウハウを父から教わっていました。そして、生き物が石に変化する不思議、化石の色合いや形の魅力にひきつけられました。しかし間もなく父親は亡くなります。メアリーは子どもながら家計を助けるためにも、父親の跡を継ぐように化石の採集と販売に取り組みました。そして亡くなるまで、化石を探し続けたのです。
彼女はイクチオサウルス(魚竜)の全身化石、さらにプレシオサウルス(首長竜)やディモルフォドン(翼竜)など数多くの化石を発見しました。メアリー・アニングが化石を採掘したのは、まだ地質年代についての科学的知識も乏しく、チャールズ・ダーウィンの『進化論』も発表されていない時代です。彼女がが発見したさまざまな化石は古生物学の研究資料として貴重なものでした。彼女の功績がもっと広く知られることを願います。
なお、メアリーは多くの種類のアンモナイトなども掘り出しています。アンモナイトや大型の爬虫類(恐竜など)が生息していたのは中生代(約2億5千万年前~約6600万年前)です。
参考
『メアリー・アニングの冒険』 吉川惣司・矢島道子 朝日新聞出版(朝日選書)
ロンドン自然史博物館のウェブサイトにメアリー・アニングについての簡潔な解説があります。