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自然がつくるアート作品(その1)

 私たちが存在するこの宇宙は壮大なスケールの実験装置であるように感じることがあります。この実験装置にはある種のエネルギー、そしていくつかの物理法則と物理定数が初期条件として与えられ、およそ138億年が過ぎました。必然と偶然が絡まり合い、地球という星が形づくられ、その表面に生物の一種であるヒトが現れました。そして、私たちヒトはさまざまな事物や現象に出会い、それらを知覚します。それにしても驚くのは、私たちがこの世界のさまざまなものに美しさを感じるということです。そこで、アート作品として鑑賞できそうな植物、動物、地質・気象・天文現象などを思い浮かべてみました。その中には、美しさの仕組みを科学的に説明できるものもあります。

アジサイの花の色
 アジサイ(紫陽花)の花は育っている場所によって色合いが違います。土の中のアルミニウムを水に溶けた状態でどれくらい吸い上げるかが要因になります。アルミニウムが溶けやすい酸性の土では青っぽい色になり、溶けにくいアルカリ性の土では赤っぽい色になります。

紅葉
 秋になると植物の光合成の効率が低下します。そのため、樹木の種類によっては葉緑素を分解するものがあります。カロテノイドという色素が残っているものは葉が黄色っぽくなります。また、アントシアニンという色素がつくられるものは赤っぽくなります。

珪藻(ケイソウ)
 珪藻はいわゆる植物プランクトンの一種で、海水・淡水中に生息する単細胞の微生物です。ガラス質の殻をもっているのが特徴です。この微細な珪藻を巧みに配列して精密なアート作品を制作している方がおられます。

息をのむような極小のアート! 『珪藻美術館』(動画約1分)

美しいミクロの世界。完璧な珪藻標本を作ることができるたった一人の人物(おしごとはくぶつかん)

蝶の羽根
 蝶の羽根は、色のついた細かい粉のようなもの(鱗粉(りんぷん))が小さな穴に刺しこまれている構造になっています。鱗粉の色と並び方がさまざまな模様をつくりだしています。世界に目を向けると、モルフォチョウ、ミイロタテハ、トリバネアゲハなどが美しい羽根の蝶として知られています。

世界三大美蝶(世界雑学ノート)

水晶
 鉱物の一種である石英が結晶になって六角柱のような形になったものが水晶です。結晶を構成するケイ素原子と酸素原子との結合が六角形をつくっています。鉄、チタン、マンガンなどが含まれていると発色して紅水晶、紫水晶などになります。水晶は水晶発振器や水晶時計など工業用に使われたり、いわゆるパワーストーンとしても愛好されています。

「星の砂」
「星の砂」あるいは「星砂(ほしずな)」と呼ばれている沖縄の土産物があります。白っぽい砂のようなものです。これは、有孔虫という海水に生きている小さな生物の殻が海岸にうちあげられたものです。

星の砂、太陽の砂(鉱物と隕石と地球深部の石の博物館)

風紋
 砂地の表面に風がつくったさざ波のような模様が風紋と呼ばれています。砂丘などで見られます。

砂丘はキャンバスだ! 砂と風がつくりだす芸術作品(鳥取県)

参考
『珪藻美術館』  奥修  福音館書店
『驚異の珪藻世界』 出井雅彦ほか  創元社 
『コケの国の不思議図鑑』 左木山祝一 エクスナレッジ
『世界で一番美しいクラゲの図鑑』 リサ・アン・ガーシュウィン  エクスナレッジ
『ウイルス図鑑101』 マリリン・ルーシンク  創元社
『世界でいちばん素敵な鉱物の教室』  宮脇律郎  三才ブックス

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