生命の起源と宇宙とのかかわりについて(その1)
はやぶさ2の快挙
小惑星探査機はやぶさ2がリュウグウから持ち帰った砂から水と多種類のアミノ酸が見つかりました。JAXAがはやぶさ2の目的地としてリュウグウを選んだことは「大正解」でした。すでに、地球に落下した隕石からアミノ酸類が見つかっています。他の天体でアミノ酸が見つかることは予想されていましたが、それが実現したことは私にも感慨をもたらしてくれました。
アミノ酸が結びついてできるタンパク質は生物の細胞や酵素をつくるために必須の物質です。ウイルスもタンパク質でできた「容器」にRNAまたはDNAが収納された構造をしています。
宇宙空間あるいは小惑星などの天体上で非生物的な化学反応によってアミノ酸が生成する。そして、隕石によって地球まで運ばれ生命体の材料となったのかもしれません。
生命、情報、核酸
生物におけるさまざまな生命現象ではDNAが重要な役割を果たしています。DNAは生命活動にかかわる情報を記録しており、またそれを複製する仕組みを備えています。DNAに記録された情報がRNAにコピーされ、その情報にもとづいてタンパク質が合成されるというのが生命現象の基本です。しかし、いきなりこうした生命体が発生したとは考えられません。現在では何らかの化学反応によってRNAがつくられ、さらにRNAが酵素としてはたらいて自己複製ができるようになったのが生命現象の始まりという説が唱えられています。その後、RNAはタンパク質を合成するようになり、またDNAをつくりだしたと推測されています。
RNA(リボ核酸)、DNA(デオキシリボ核酸)は糖・塩基・リン酸が結びついてできた「ひも」のような形の物質です。RNAは「ひも」一本、DNAは二本の「ひも」がらせん状に向き合ってつながった形をしています。それぞれ4種類の塩基を含んでいて、その配列がアミノ酸の種類を決めています。
地球に落下した隕石からは、核酸を構成するすべての塩基、そしてRNAを構成する糖(リボース)も検出されています。核酸もまた宇宙に由来しているのかもしれません。
生命、宇宙について知ることの意味
ヒトも地球上の生物の一種です。ヒトの体もまた進化の歴史の結果としてかたちづくられています。生命の起源を探究することは、生命とはどのようなものであるのか、また生物として生きるとはどのようなことであるのかを考える手がかりを与えてくれるはずです。宇宙、地球、そして生物進化の歴史をより深く認識することによって、私たちは人間のあり方をより正しく理解できるようになるでしょう。そしてまた、文明や社会のあり方をより深く省察できるようになるでしょう。
参考文献
『時間の終わりまで』 ブライアン・グリーン 講談社
『宇宙人としての生き方』 松井孝典 岩波書店(岩波新書)
『生命とは何か』 シュレーディンガー 岩波書店(岩波文庫)
遺伝子の核酸塩基、隕石から主要5種すべて検出 サイエンスポータル
隕石中に存在していたリボースから、生命の起源に迫る マイナビニュース
原始生命を模した自己複製システム 東京大学
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