私の好きな短歌(その3)

ふところに本をかくして
今日もまた
真昼の街を車ひきけり。
 渡辺順三 『貧乏の歌』

 作者は貧困の中、家具屋で住みこみの仕事をしていました。主人からは「本など読むな。しっかり仕事をしろ」と言われていたのでしょう。それでも勉学、読書への意志を捨てることはなかったのです。

慰めに「勉強など」と人は言う その勉強がしたかったのです
 鳥居 『キリンの子』

 作者は両親の離婚、母親の自死などの事情で、十分な学校教育を受けられませんでした。自分で辞書をひきながら字を覚えたそうです。

こつこつと歩けトンネル果てるまで必ず見える光は見える
 李承信(イ・スンシン) 『花だけの春などあろうはずもなし』

 作者は韓国の方で、母親が戦前、日本で短歌を学んでいたそうです。東日本大震災の被災者を思って詠んだ作品とのことです。

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