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視聴感想NHKBS「クラシック倶楽部・岡本誠司」

一昨年から続くヴァイオリニスト岡本誠司さんの全5回のリサイタルシリーズの第2回目「夜明け、幻想」が、我が推し務川慧悟さんをピアノに迎えて2021年12月23日に浜離宮朝日ホール、24日に奈良県やまと郡山城ホールで行われた。そのうち浜離宮公演を抜粋したものが、2021年2月23日5時にNHKBS「クラシック倶楽部」で放送された。

♬岡村誠司さんの紹介

♬務川慧悟さんの紹介

♬当日プログラム

ちなみに私は奈良公演で演奏をお聴きしている。その時のレポートがこちら。今回は、細かい内容よりも改めて気づいた点を中心にした記事です。

⑴インタビュー


浜離宮の舞台上、ピアノを前に座るお二人。
演奏会より事前に収録されたのだろう。共にラフな装いだ。
岡本さんは濃淡グレー格子柄のスーツに白シャツ、ノーネクタイ。務川さんはダークブラウンのタートルネックのカットソーにネイビーブルーのスラックス、ブラウンとネイビーブルーが白の縦ストライプで分かれているジャケット(分かりにくい説明、汗)。1993年生まれの務川さん、1994年生まれの岡本さんと1歳違いのお二人(務川さんが上)、笑顔も出て良い雰囲気です。


岡本氏:両親とも特別音楽とは関係のない仕事をしていますし、身近にヴァイオリンがあったわけではないが、3歳の時によく一緒に遊んでいた近所の女の子が弾き真似をしてくれて、それをかっこいいと思ったのが最初。その時点ではヴァイオリンの音を聴いたこともなくて。その後女の子のご両親が「それはきっとヴァイオリン」と僕の両親に教えてくれた。初めて楽器が家に来た時は、むしろ「本当に来ちゃったよ」と恥ずかしくて隣の部屋に逃げたことを覚えています(務川氏もふっと笑う)。それから紆余曲折あり素晴らしい先生にも恵まれ、25年ほど経ちますが今もヴァイオリンを楽しんで続けています。
務川氏:誠司は4年前の共演と今回で、やっぱり留学して変わったというか、成長もした。彼の演奏は、一言で言えば「渋い」といえるのかもしれないのですが、本当にしっかり聴くことですごく良さがわかる演奏。彼は色々好奇心とかもあって、楽譜を深く読み込む人です。たくさんの知識があるのだけれど、それに縛られることがないというか、研究肌でもあり自由という、そこのバランスがすごく取れた人なのではないかな、と思っています。
岡本氏:勿体無いお褒めの言葉をいただいてしまった。
務川氏:いやいや。
(笑うお二人)

⑵ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第10番ト長調作品96

♬第1楽章
ここから演奏会の映像。
拍手に促されるように舞台上に現れるお二人は共に黒スーツ。岡本さんは白シャツ、務川さんは黒シャツで、胸元は華やかな赤とシルバーの2枚のチーフで揃えている。務川さんの手には藍色のヘンレ版の楽譜。挨拶をしてからお二人ともポジションにつく。ピアノはベーゼンドルファー。
岡本氏はしばし空を見上げるように間を取った後演奏に入る。問いかけるようなヴァイオリンのトリルに、ピアノもトリルで応える。まるで鳥の会話のような始まりだ。
画面に表示されたキャプション。
<1812年に作曲されたベートーベン最後のバイオリン・ソナタ>
<ベートーベン後期の作品らしい自由な作風が感じられる>
優しさ溢れるメロディには柔らかな表情、刻む場面は前に出るように、そして雄大なメロディでは大きく体を移動させる岡本氏。
務川氏も時々ヴァイオリンに目線を配りながら気持ちよさそうに身体を動かす。お二人とも割と動きが大きめの演奏スタイルと思うので、演奏者のノリがダイレクトに伝わってくるようだ。
ところで務川さんの楽譜だが、ページ下部サイドあたりが大きく波打っているのだ。これは一人で練習している時に付いた譜めくり跡だよね。濃密な音の合間にババっと素早くめくるから。ワイルドに。そう言えば以前「題名のない音楽会」でもその譜めくり披露されていたが、本当に鷲掴みしてバッとめくる感じでしたよね〜(笑)。
いやしかし、テレビはやっぱり表情や手元がしっかり映って素晴らしい!
楽園でさえずる鳥達のように、繊細で可憐な第1楽章だった。

♬第4楽章
場面変わりまして第4楽章。
主題と8つの変奏曲。務川さんの表情を見ていると、愛らしさの続くメロディの中にも、それぞれ起伏があるのだねえ。展開部分は思慮深く、カデンツ付近では重々しい表情に、そして再び楽しそうに。音で聴き取れよ!という当然の指摘はこの際置いといて(←こらっ)、未熟リスナーは表情から演奏者の意図読み取ってもいいじゃないかぁ。
岡本さんもタタターと3連で伸ばす時など、全身で伸びてそのまま羽ばたいていきそう。
二人の息や空気がバッチリ合っているのがわかる。一段ずつ階段を昇っていくように、二人で築き上げていくスローパートの美しさ。そこから一転しての息つく暇もないほどに緊迫感と疾走感に溢れるコーダ。フィニッシュ!
満足げに微笑み合うお二人。落ち着いた風情でゆったり拍手を受ける岡本さんと、どこかキョドッた務川さん。一度退場して、再び拍手の中登場。お辞儀してすぐ捌けようと及び腰の推し(笑)が可愛い(すみません)。

⑶幻想曲 へ短調D940

拍手の中登場の場面から。今度務川さんが携える楽譜はオレンジ色のベーレンライター。
画面キャプション。
<1827年 シューベルトが亡くなる前年に作曲された>
<自身の歌曲「くちづけを贈ろう」のメロディーがモチーフとして随所に散りばめられている>
朗々と歌い上げるヴァイオリンの岡本氏。乗っている感じのリズミカルな動きや、曲に応じ溜めてからの大きな動き、入り込んだ表情もテレビだとよく見えるわ。途中切れた弓の毛をぶちっと手で切る姿も。
トレモロで伴奏するピアノ。しかしこの楽譜も下部がよれっとなっている(笑)。
スケールで身をかがめ、覆いかぶさるように弾く務川さん、ピアノが主題をとる時は歌うようにと、めまぐるしく変わる表情。しかしなんと精緻な指先でしょうか。再現部のpのトレモロの指の動きなどはため息出る。
そして終局。第2主題をモチーフにした大団円的展開。務川さんも王様のように弾いている。からのヴァイオリンの激しく弾きまくる部分、いいよねえ。この箇所は後で何度も反芻しちゃうくらい好きだわ。とてもカッコいい。短調を経て、雨上がりの夕刻の光が静かに野に広がる雄大なメロディ。最後は華々しく競演するようなフィニッシュ!
弾ききったという表情のお二人。また岡本さんにほぼほぼ100%動き追随しながら、互いに拍手し合ったり深々と礼をする推しがまた可愛い(だからすみません)。

ということで、演奏者にフォーカスした映像が後々まで楽しめるテレビ放送、最高ですね。満喫しました〜。しかし内容が表情とか動きとかばっかりだな(笑)。まあそれがテレビ放映の醍醐味ですしね(おっ)。
今後もどんどんお願いします!

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