iPhoneはもう、「Pro」を買わなくてもいい時代。
「正直自分にはProの機能はいらないんだけど、長く使うからこそProを買っておいた方がいい気がして、どうしたらいいかわからなくて悩んでいる」
こういう人が結構いるんじゃないかと思ってる。ここまで行かなくとも、無印のiPhone 13や13 miniを選択するということにモヤモヤが残る人がいる気がする。周りの友達と話してて、結構そういう人がいた。
Proと無印が並ぶと、どうしても「もっといいものがあるのか・・・」と思うのも人間の性として理解できるけど、自分はiPhoneに関しては、ほとんどの人は全くそんなこと気にしなくていいと思う。
そのことを説明するために、先日のAppleの発表会を改めて分析してみた。Apple的には、iPhone 13の方はどんな人に買って欲しいと思っているのか?iPhone 13 Proはどんな人向けなのか?自分なりに整理し直したので、よかったらお付き合いください。
13の発表と13 Proの発表のトータルの長さを比較
どちらも18分前後だけど、わずかにiPhone 13の方が長く尺を取っていることに気づいた。これは先に紹介しているからということもあるけど、発表の中身を見ていくとちゃんとそれぞれのアピールポイントに時間を費やしていたので、続いてその内容面を定量的に見ていこうと思う。
13の発表と13 Proの発表内容を定量的に比較
新しいiPhoneを発表する数ヶ月前のAppleマーケチームのキックオフMTGを想像してみてほしい。開発チームからはもらったおおよそのスペックを見て、おそらく最初に決めるのが、今回の発表会で紹介する機能について。そして次に、それぞれの機能を発表会の中でどれだけ強調するかを決めると思う。「ここはウリになるね〜」とか。つまり、舞台上で紹介された機能はAppleが売りたい機能であるはずだし、その中で特に強調した機能は注目すべき機能ということになる。
自分は、基本的には、発表に費やされた時間の長さがその機能の重要性を示していると考えている。加えて、発表した順番も重要度に関わるけれど、これは逆に演出面の飽きさせない工夫みたいなのも関わってくるので、セカンダリの指標になると思ってる。
じゃあ、先日の発表会でのiPhoneパートはどうなっていたのか?
iPhone 13
iPhone 13 の発表パートで紹介されたのは、こちらの9項目だった。個人的には最初に紹介されたデザイン、ディスプレイ、パフォーマンス、カメラの4項目が今のスマホに対して最も注目が集まる基本ジャンルだと思う。順番は違うけど、iPhone 13 Proの発表パートでもこの4つが最初に紹介されている。
iPhone 13 パートの中で最も長かったのはカメラの紹介で、5分23秒。そしてA15チップのパフォーマンスについてが3分16秒。あとは45秒から1分半くらいまででどっこいどっこい。
iPhone 13 Pro
iPhone 13 Proの発表パートで紹介されたのは、こちらの7項目だった。先程言った通り、最初に紹介されたのはデザイン、パフォーマンス、ディスプレイ、カメラだったけど、パフォーマンスとディスプレイの順序と時間配分が逆転していた。
そう考えると、この4項目の中でも重要なのが後半2つで、Appleがまずはじわじわ温めてから、本当に集中して聴いて欲しい分厚い部分をその後に持ってきているのだとわかる。つまり13 Proの場合、最も重要なのがカメラで、その次がディスプレイの進化だった。
そして、カメラの発表が写真とビデオを合わせて8分49秒で、iPhoneパートの中で圧倒的に長い時間使われていた。iPhone 13 Proの発表時間の半分以上をカメラの話だけに費やしていた事になる。
比較
13と13 Proを定量的に比較すると、13の方がより多くの項目を紹介していたことがわかった。5Gとプライバシー、MagSafeアクセサリーについて紹介していたのは13の方だけだった。また、A15チップについて手厚く紹介していたのはiPhone 13の紹介パートだった。
もちろん、これらの機能は13だけに搭載されているというわけではないけれど、競合他社と比較したときのAppleの強みとして、ベースラインの機種でも最高性能の独自チップを搭載して、5Gに対応していること、プライバシーに配慮していること、ユニークなMagSafeという機能があることを伝えたいのだと思う。
で、改めて並べてみるとこれは、確かにその通りで、この凄さは全然伝わってないと思う。iPhoneに搭載されるチップは毎年、その年に発表される他のチップと比べて最高のパフォーマンスを発揮してる。チップ性能の技術的なところに関してはあんまり詳しくないから踏み込みたくないけど、要するに13 Proにしなくても、13を選んだとしても、処理速度は今の時点のスマホの中で最高性能になる可能性が高いということ。これ、結構当たり前になりすぎて見過ごされるけど、Appleの技術者の人「もっと認めてくれよ」って思ってそう。
プライバシーもAndroidと比べて安心できるのは間違いない。これだけでもうひとつ動画作れる話だから踏み込まないけど、思想的にGoogleが開発するオープンソースのAndroidとAppleが開発するiOSとではスタートが全然違う。良くも悪くも、Googleは大量のデータを使ってイノベーションして成功した会社。Appleは自社で革新的なハードを作ってそれを売ることで成功した会社。だからGoogleも頑張ってるけど、プライバシーという意味ではAppleがダークサイドに落ちない限りiPhoneを使うのが安心で、それは13 Proでも13でも享受できる大きなメリット。
この時点でわかったのは、iPhoneの中で比べると13の上にProがいる感覚になって、「どうせ買うなら13 Proなんじゃないか」と悩んでしまいがちだけど、実際はiPhone 13を他社製品と比べると、その時点で能動的に選ぶだけの魅力があるということ。
一方でiPhone 13 Proで推されているのは、ProMotionを搭載したディスプレイと、さらに革新的に進化したプロでも使えるカメラ性能。この話はまたしようと思うし、ここが魅力だから事実自分はProを選んだけど、そこはいらないと思えるなら胸はってProじゃないモデルを買えばいいと思う。
13の発表と13 Proの発表内容を定性的に比較
もう少しだけ背中を押したいので、続いて、iPhone 13の発表パートを定性的に分析してみたいと思う。長く時間をかけて話した機能には、時間をかけて伝えたいだけの内容があったと考えるのが自然なので、じゃあそこで何が話されていたのかを知ることが重要だと思う。
iPhone 13の方で手厚く紹介されていたのが、パフォーマンスとカメラだった。
まずパフォーマンスの話をするために、エンジニアリングプログラムマネジメントのVPが登場した。そしてCPU、GPU、ニューラルエンジンの性能向上をわかりやすく説明するために色いろ活用方法を提案した。
CPUの向上は、Siriの会話がスムーズになることと、Mapの処理速度向上を売りにしていた。Siriは確かに少し会話の反応が遅かった気がするので、早くなるのは大歓迎だけど、実は手元のiPhone 12 miniやiPhone XSと比べて反応が早い気はしない。早くなるのは別の機能なのかな。
GPUを含めた表示性能の向上は、iPhone 13 Proの方が進化が大きいので、13の方では軽めに触れる程度だった。
それに対して、ニューラルエンジンの紹介は手厚かった。ニューラルエンジンは機械学習に使われる脳みそで、具体例としてカメラを通すアプリの処理能力向上を話してた。これまで知らなくて、面白そうだと思ったのが、テニスの練習アプリ。カメラを通した映像に数字を重ねて、コーチとテレビ電話を繋ぎながら遠隔で指示をもらえるのかな?かなりの処理速度じゃないと出来なさそう。
自分の提供したデータを、iPhone内部の機械学習で処理できるというのは、自分の提供したデータを一度どこかのサーバーに送って処理してもらうのに比べて、プライバシー的にも非常に重要なので、ここでもAppleは「デバイス内で完結する」ことを強調してます。もちろん、アプリによって処理の仕方は違いますが、ある程度のことが内部で完結するということが言いたいのでしょうし、それは今後の我々ユーザーの生活にとってとても重要なことです。
カメラについては暗所での描写性能と、動画のシネマティックモードの説明に力が入っていた。
暗所性能については4つ作例を見せていた。iPhone 13シリーズのカメラ性能の向上は、主に暗所での撮影に大きく貢献するものが多いのだけど、Proじゃない13でも十分暗所に強いよ!というアピールだと思う。
シネマティックモードは、よくできたユーモラスなサンプル映像を作って説明していた。これ、要するにポートレートモードの動画版で、ボケのある動画が撮影できるようになったということなんだけど、実際に使用してみたユーザーの評判は分かれている気がする。いずれにしても、この機能はProの方だけでなく無印の13にも搭載された。
まとめ
ということでまとめる。まずAppleは、あくまでiPhone 13の方をスタンダードとして販売していると思う。それは、iPhone 13とiPhone 13 Proの紹介時間を比較したときに、若干13の方が長かったことからも見て取れる。より高いProの方だけを魅力的なもののように宣伝することもできたけど、そうではなく、丁寧に13シリーズのベースラインを説明していた。
そして、そのベースラインのiPhone 13と13 miniには、現時点でおそらく最も処理の速いApple純正の最新チップが搭載されているということが重要だと思う。だから、Proに劣るからといって、少なくとも通常使用においては、パフォーマンスで競合より劣ることはないはず。Androidスマホと比べるとプライバシーにも配慮されている。
その上で、トップレベルのスマホカメラが搭載されている。これまでもiPhoneのカメラは評価が高いけど、13はそこからさらに進化してるので、たまに写真を撮影する程度なら無印でも楽しく使えるはず、というのが自分でiPhoneを使ってきたうえで今回発表会を分析した僕の考え。
Proとの違いはあれど、市場に並ぶスマホを色いろ並べたときに13が見劣りすることはないので、例えば気軽さでminiを選びたいとか、価格的に13を選びたい人で、「だけどProという名前に心惹かれている」という人は、さっさとProのことを忘れて差額でおいしいものを食べた方がいいと思う。僕自身、去年1年間ProのつかないiPhone 12 miniを使ってきたけど、不便に感じることはなかったから。
以上!
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