猫屋レオ丸による『高円寺革命評定所』(2023.11.23)挨拶

以下の文章は2023年11月23日(水)に高円寺パンディット二号店にて開かれた『高円寺革命評定所』での司会であった猫屋レオ丸による冒頭での挨拶の原稿である。実際にはこの原稿をもとにして、随所に説明と補足をくわえていた。


 本日はお越しいただきまして、ありがとうございます。企画した、司会役の猫屋レオ丸です。ネオ幕府のアキノリ将軍とは今年の八月と九月にかけて池尻大橋に期間限定で開かれていたイベントスペースで出会いました。私は八月に週一で「バー」をやっていたのですが、我ながらなかなかパンチの効いた空間とな っており、アキノリ将軍にもなかなか強い印象を残せたようです。 アキノリ将軍と私は一歳差ということもあるのか、時代的な認識(危機感)を共有していると思っております。要するに(人口動態、経済、社会環境、国際的影響力などにおいて)日本は衰退しているという事実への認識です。特に、近隣の 東アジア諸国や東南アジア諸国からしても日本は―ありていにいえば―買われる立場となり観光される側となっているのです。これは今は還暦前後となった いわゆるバブル世代の方と話しても―相当聡明な人とでも―認識に齟齬を感じるポイ ントであり、その世代的断絶にたびたび失望と困惑をおぼえます。こうした失望 や危機感はイデオロギーの別を越えてある程度の若い人に共有できるのではな いでしょうか?
 それに、言うまでないことですが『ネオ幕府』というアイディアが面白いと思いました。私としてもニール・スティーブンスンの小説『スノウクラッシュ』や『ダ イヤモンド・エイジ』を連想したのです。特に『ダイヤモンド・エイジ』につい てはライターの木澤佐登志も『ニック・ランドと新反動主義』において、アメリカにおける新反動主義(と深いかかわりのあるオルト・ライト)に影響をあたえ、 イメージの源泉となっている旨に言及しています。
 また、唐突ながらある私見を述べます。私は 2020 年代というデケイドは今年2023年から始まったという実感があります。コロナ禍で停滞していた時代精神(ツァイト・ガイスト)ががようやく起き上がったのが今年というわけです。 日本国内に限定してもいくつも時代を画するコンテンツが現れております。 MAPPA の『アリスとテレスのまぼろし工場』というアニメ映画も公開されまし た。(個人的にはあまり面白く感じなかったのですが)この作品も先ほど申し上げ たような危機意識が見えています。これは大規模な鉄工場のある地方都市がそ の工場で起きた事故をきっかけとして 1991 年という時間に閉じ込められると いう設定の作品です。一見して荒唐無稽な設定ながら、1991 年に閉じ込められ、人びとは成⾧も老化もせず変化しないというこの設定は日本における失われた 三十年のメタファーだということは明白です。
 また、ここ数年、外山恒一教養強化合宿の影響力が運動界隈で強くなっている という状況も気になっていました。気がつけば右も左も外山合宿経験者ばかり になっていたというわけです。そこで、今回 2020 年に権力からの弾圧にあって しまった飯塚早織さんもお招きして、アキノリ将軍とともに運動のあり方と美意識、「外山界隈」などについても語り合いたいと思います。
よろしくお願いします。

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