(六十五)西条八十の歌を紹介する

西条八十を知らない方が多いかも知れないので、略記する。
1892 東京都新宿区に生まれる
1919 最初の詩集『砂金』を自費出版する。
   フランス ソルボンヌ大学で学ぶ。
   帰国後、早稲田大学教授となる。
   日本音楽著作協会会長となる
1962 日本芸術院会員となる。
1970 没

彼の歌謡曲の詞は多数あるが、次が代表的なものである。
  支那の夜、東京行進曲、東京ブルース、青い山脈、蘇州夜曲、誰か故郷を思わざる、こんな私じゃなかったに、芸者ワルツ、王将等。

(五十七)で「芸者ワルツ」を解説したので、ここでは「青い山脈」を解説する。

題名:青い山脈
作詞:西條 八十、作曲:服部 良一
(一)若くあかるい 歌声に 
   雪崩は消える 花も咲く
   青い山脈 雪割桜
   空のはて きょうもわれらの 夢を呼ぶ
(二)古い上衣よ さようなら 
   淋しい夢よ さようなら
   青い山脈 バラ色雲へ
   あこがれの 旅の乙女に 鳥も啼く
(三)雨にぬれてる 焼けあとの 
   名も無い花も ふり仰ぐ
   青い山脈 かがやく嶺の
   なつかしさ 見れば涙が またにじむ
(四)父も夢みた 母も見た 
   旅路のはての その涯の
   青い山脈 みどりの谷へ
   旅をゆく 若いわれらに 鐘が鳴る

この歌は、先ず、理解の鍵となるキーワード、例えば、「青い山脈」、「雪崩」、「雪割桜」などが何を意味しているかを理解する事が必要である。これらを理解する事で歌の意味する所がはっきりするであろう。

そもそも、題の「青い山脈」とは、戦後、空襲から復興すべく立ち上がった若い活気ある新生日本を指している。その他のキーワードが意味する所を列挙する。
  雪崩:戦前、戦中からある古い体制および、進駐軍による要求などが崩壊すること。雪崩が消えるというのは、これ等が、過去のものとなり、新生日本がその本来の力を発揮していく事を暗示する。
  花 :新生日本の努力の成果
  雪割桜:椿寒桜の異名。新たに発展する日本を代表する産業や文化。雪崩から雪割桜が出るというのが象徴的。
  バラ色雲:日本のバラ色の未来
  みどりの谷:若い人が集まる所
  鐘 :時の鐘、復興に勤しめとの合図

この様に解釈すると、この「青い山脈」が、新たに産業を興し、継続的努力により、日本を飛躍的に発展させ、世界の先進国になる期待を暗に述べていると言えよう。
 彼は、童謡作家、詩人など多くの方面で活躍し、校歌も作っている。歌謡曲の作詞家はたくさんいるが、西条八十は比較的知られていないように思える。ここで、重ねて紹介するものである。
尚、「青い山脈 歌詞の意味」
https://www.worldfolksong.com/songbook/japan/aoi-sanmyaku.html

に一番と二番のキーワードの説明があるので、そちらを参考とするのが良いと思う。


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