(九十四)実家に戻った妻のため小唄「滿江紅」を作る

結婚して、まだ1,2年も経たぬころ、妻が実家に戻った。彼女が実家に居る間、一人、歌などを吟じたり、本を読んだりしていた。夜、ベランダから空を見上げると満月が掛っている。これに興を得て小唄を作った。
 
滿江紅(千里共嬋娟,寄於余妻)
滿里青天,放眼處,三分春色。
朝暉裡,有呼吸聲,無言佇立。
人生路途遇見你;百年合好由天訣。
幸同卿,琴瑟已相合,今暫別。
 
傾城女,本難得;興家婦,更難得。
祈賢妻有才,婦人之德。
往日猶如有情話;而今無奈無人説。
但試問,誰能解憂悶,人間月!
<大意>
  晴れ亘る青空の下、目をやれば早春の景色
  曙光の中、無言にて立ち、呼吸の音が聞こえる
  貴方に逢って、好を結びしは緣なりき。
  ウマが合うも、今は暫し別れる
  傾城の女を得るのはもとより難しいが
  家を興す女を得るのは更に難しい
  婦人の徳あれと祈るばかり
  今は話する相手がいない
  誰が退屈をしのいでくれよう、
       世上の月あるのみ
 

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