見出し画像

LETTERS for 「LAMP IN TERREN」 2014-2017ー【DISC REVIEW】『silver lining』

※2015年当時の記事になります。

Live=Life

 「MASH FIGHT vol.2」、「RO69JACK」のふたつを受賞し、彼らがロックシーンに頭角を現してから早1年。全国流通版としては昨年リリースされた『PORTAL HEART』に続いての2枚目だが、今作が正真正銘のメジャーデビュー盤のリリースとなる。今作に収録された7曲は、バンドにとっての新曲ではない(前作『PORTAL HEART』は、ほぼ新曲で構成されていた)。今、此処の場所に至るまでの彼らの旅路の足元を照らしてきた曲達だ。


 メディア展開も含め、前作に比べると明らかに世に彼らの音が鳴る中でドロップされる今作。過去からの曲達から構成されている一方で、彼らの攻めの姿勢を今作からガッツリと感じることができるのは、おそらく前作以上に「ライヴ感」が漲っていることが起因しているのだろう。作品全体として、非常にライヴに近い音像/音圧が飛んでくるのだ。


 川口大喜(Dr)は人の体で表すところの心臓のように、中原健仁(B)は血液のように、そしてソングライティングをすべて担う松本大(Vo&G)は表情を外に表す脳と顔のように――このバンドは、まるで3人でひとりの人間のように存在している。実際のライヴでも、川口のドラムは僕らの心臓まで貫くような強さを携えた生々しい音を打ち鳴らすし、中原のベースは昨今主流といえるアタック感の強いものというよりは、全身を包み込むような懐の深い音像を鳴らし、彼らのバンドサウンドに輪郭と循環をもたらす。そして松本の儚くも確かな強さを持った歌声とザラついた感触のギターは、彼自身が産み落とした曲の世界に表情と彩りを与える。そのすべてが、心臓の放つ鼓動のように耳元で響いてくる今作は、まさにLAMP IN TERRENというひとつの命が生きている/生きてきた軌跡を綴った「ライヴアルバム」であり、「ライフアルバム」とも言ってもいい。

この唄を君へと歌うのは そこに君がいたから
その声を僕へと願うのは 不安で仕方がないから

声の届く距離なら 歌は必ず聴こえるだろう
その全てが必然だとしたら 声はここで消えるだろう
(M1“L-R”)

 彼らがバンドとしての産声をあげた曲でもあり、多くのライヴでも始まりの合図を告げるM1“L-R”には、こんな言葉が綴られている。もしあなたが望まなくても、彼らは歌を叫び続けるだろう。ただ、あなたが偶然彼らの曲に出会ったなら、きっと自らの心の隅を照らしてくれるような感覚を得るはずだ。その目に見えない両者間の繋がりこそが、彼らの音楽に本当の命とストーリーを吹き込む。そうやって、きっとこのバンドも、あなたも進んでいく。そんな素敵な関係の本当の始まりを告げる、まさしく魂を宿した作品の誕生――この瞬間が訪れる日を心から待っていた。

目次はこちらよりどうぞ。



いただいたサポートは、すべてテキスト作成の経費とさせていただいております。いつも、本当にありがとうございます。