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朗読劇「アイガク・ストーリーズ」感想

アイガクストーリーズ3日間堪能した。すべて観劇。
アイガクは去年からあったけど、これだけ色々な舞台も配信され、配信のみのものも観てきたし、無観客であれば配信で作品できないのかなと思っていた。
そこへ、朗読劇とは言え、念願の”演劇”配信。
ワークショップも十分面白かったから、期待大にして心待ちにしていた。

毎日2公演。2つの作品を公演。
それぞれ4人芝居。毎回違う人が演じ、組み合わせも毎回違うという、観る側にとっては全く飽きないけど、演じる方は大変そうだなあと思ってた。
そんな贅沢な企画だからこそ、贅沢なことが考えられた。自分の好きな組み合わせで、もう一度観られるとしたら----------。


なごり雪。
一人だけ違うリボンの透佳。実際、物語のキーパーソンがこの透佳なのだけれど、ここからも注目して観てしまった。
この透佳が、最初、入学シーンなんだなと思ったけれど、ここでの演じ方も色々。この透佳役は、大澤実環さんでもう一度観たい。

最初、入学のシーン。唯一、上を見上げていたのが、大澤実環さんだった。カメラ目線や、本を見たままの人がいた中で、一人だけ上を見上げていた。
この演技を見た瞬間、ああ、ここは校門なんだな。まさに、一歩くぐるところなんだなと、認識できた。
それと、透佳を演じるのは知っていたし、メモリーレコードの檸檬役も観ていたけど、始まった瞬間、「あれ?」と思ったくらい、別人のような雰囲気の声。
それこそ、透明感のある、キレイな声。その声も、自分の中での透佳のイメージにハマっていたのかもしれない。

心に傷を負った三人と透佳。透佳は明るく、でもリーダーシップというよりはムードメーカー。4人余ったという班分けも、透佳は余るかなというくらい明るい。
もしかすると、三人の様子から、余りそうなのを見ていて、三人の潤滑油の役割として自ら入ったのではないかと思う優しさがある。

話は少し飛ぶけれど、今回、朗読劇ということでアフタートークでも声優さんの凄さなどが語られていた。それはそう思うし、ボイスのみの朗読とかは本当にそう。映画とかも声優さんでやってほしいなあと思うこともある。

でも今回は、役者たちの朗読劇。役者がやるからには、やはり朗読だけではない。動きが制限された中での役者による朗読劇。
そこに特別なものがあると感じて観ていた。


そういう意味で、実環さんの演技は、ほぼ初見だけど心を掴まれた。透佳は、どんどんと距離を詰めるくらいの性格。友達を作りたい。それとは反対に、友達なんか別に要らない。平穏に過ごしたいという、いじめられていた2人に、夢を失った蒼葉。
実環さんは、他の人の次のセリフに合わせて、表情をつくられていた。これは、声だけではない、この形の朗読劇だからこその魅力で、それを最大限に生かされていた。
いや、自然にそうなっていたのだろう。朗読劇だろうと通常の演劇だろうと、役を演じることには代わりがない。その人を生きるとなれば、自然とそうなる。

プロの目から見たら、それでいいというわけではないかもしれない。技術的なものがそれぞれにあり、素人目では気が付かないけど、ダメなところもあるのかもしれない。
でも技術的に優れたものは観客をうならせるかもしれないけど、心を打つとはまた別の要素な気がする。小説でも、人気のある作品が必ずしも文学的賞をとるのとは別の様に。

また話が飛んだ。
もう一つ、実環さんの好きなところ。「でも・・できなかったんだ」「わたしのこと・・覚えていて欲しかったから」など、セリフの間の部分。台本上は、ここの部分も、「・・」はあったかなかったか分からないけど、この間が絶妙に感じた。笑顔が行間なら、セリフの間のとり方、時間が凄くしっくりとくる。心情、心の動きが伝わる間のとりかた。
これが自分が思っていた通りの演技をされる人に弱い。素晴らしかった。
そういえば、メモリーレコードの檸檬役をやっていた時も、セリフの言う時間の長さで、回想シーンならそのシーンの時間の流れに合わせた話し方をしていた。それは間のとり方とはまた違う。自分が小説を書いていた時は、それを改行や文字数、ページに印刷した時の余白で表現していたけど、それを言葉だけで表現していたのはさすが。
しかし、透佳が「どうかした?」と聞かれた時、本当に台本をめくりすぎて迷っていた時は、あまりにタイミングが良すぎて面白かったけど。


それと紫央梨。これは、石川凜果さんがスッと降りてきた。
石川凜果さんの演技はもう何度観てるし、その魅力も分かってる。今までもたくさん書いてきた。今回、メモリーレコードの檸檬役が合うかなと最初は思っていた。感情が一気に揺れ動く役。檸檬役も好きだった。良かったと思った。
過去形になったのは、「やっぱり良くなかった」ではなく、それを超えるものが出てしまったから。それが紫央梨役だった。
紫央梨は、本が好きで妄想が好きで、そしていじめられていたという役。なんか共感する。
妄想好きという設定が、最後、妄想でも想像できないという展開を誇張する良い伏線になっているけど、妄想好きって、すぐ妄想する。
ちょっとしたものを見て、その ifストーリーを考えてしまったり、ヒーロー願望があれば自分を主人公にしてみたり。本好きなので、ところどころ文学的な表現が入る。「絵本の中に迷い込んだ」なんて、なかなか日常では言わないけど、妄想好きの妄想の中だとありそうな言葉。
何回もこの作品を観てると、紫央梨のバックボーンが見える。というか、それを妄想したくなる。短い作品だから、一人一人を掘り下げるシーンはない。だからこそ、自分の中で出来上がる紫央梨像。
そう考えた時、最終日に紫央梨を演じると知った時、凄く納得がいって期待感が高まった。
細かい部分じゃない。紫央梨を演じるならと、全体で考えたら、石川凜果さんだった。
そして始まって、スッと入ってきて、終わった後、予想通りの大満足。
いじめられていたけれど、そこまで心は病んでいなくて、でも少し臆病で、妄想するけど時々真なることを言う。
色々なものが混ざり合う紫央梨は、いくつもの感情を一つの作品で演じる凜果さんの良さが発揮されて、初めて見た人にも分かりやすく伝わる役だったと思った。

いけない。ずいぶんと書きすぎた。
少し絞って書いていこう。

蒼葉役は若松愛里さんの演じた時、凄く好きだったんだけど、若松さんは、メモリーレコードのイチカ役の方がハマっていた気がしている。どちらか選ぶとしたら、もう一度見たいとしたら、イチカかな。
若松さんは何度も色々な作品で見ていて、印象に残らなかった時がない。
名前もすぐに覚えたし、今では安定感する感じている。
自分の中で、アリスイン作品での大物が何人かいて、若松さんはその一人。人気もあるし、今まで話したこともない。
とにかく、見た目が可愛いのに、ちょっと芯が強かったり、カッコいい役が似合う印象。だから今回、蒼葉も似合っているんだけど、少し大人で見守る役というイチカがもまたちょっと違って良かった。
今回、大物の内、永瀬がーなさんとは、ちょっとしたきっけかで話すきっかけが生まれて縁ができたので、その内、若松さんともお話しできるかな。

メモリーレコードでイチカの相棒はサラだったけど、ここは、そのがーなさんを推したい。
がーなさんは、やっぱり元気な役が良く似合う。
初めて観たのがデッドリーでの霧子だったせいもあるかもしれないけど、今でもあの役は、がーなさんだよなって思ってしまう。
それが今回、少し落ち着いたイチカ。かけていた伊達メガネは、若松さんがつけていたものと同じものだと思うんだけど、けっこう似合ってて、髪型も手伝い、大人な落ち着いた役も良かった。なんなら、少し大人の色気を出す役も行けるのでは…とちょっと思ったくらい。

実際、このサラは笑美の姉。笑美は高校生ということを考えると、大人といっても、まだ20代前半の可能性もある。そうなると、そこまで大人ではないかもしれない。
大人として、強がって振舞っているけど、姉と妹になれば、無邪気な顔の一つも見せる。そんな年頃ではないかと思う。ましてや、今回、事故に遭った妹の記憶のためということは、普段から研究員的な立場でもなかったかもしれない。
そう考えると、朗読劇で見せるサラとイチカの姿は、完全に作られたもの。
その視点で考えた時、時折見せる笑顔は、子供っぽいくらい、でも姉という見守る立場の優しさ溢れる笑顔がちょうどいい。
だからこそ、若松さんの微笑みもピッタリだし、一見、合わないようながーなさんの配役もピッタリ。
やはり「姉」というキーワードがそこにあるからこその笑顔だったり、悔しそうな表情があるわけで、そこは、さすが安定感のある2人。この2人でのメモリーレコードが観たかった。

今年に入ってから、がーなさんの出ている作品をちょこちょこ観てる。劇場でも観てる。
アリスイン以外でも観ると、また違った発見がある。
やっぱり最大の武器は笑顔。声も印象が強い。
だからこそ、観たいのがいじめられるような役。いじめられても笑顔でいる。ピエロの笑顔のようで、でも、それすらも仮面で、その奥では泣きながら笑顔。笑顔でいることしかできなくなってしまったような、ある意味心が壊れたような役。
苦しい環境での笑顔は涙を誘う。そのためには笑顔が大事。そんな役があったら、ぜひ、演じてほしい。ついでに言うと、いじめる役では若松さん、傍観者でどちらにもなびかない役を石川凜果さんって感じかな。・・・ちょっと書いてみたくなった。

まだ書きたいことが残ってる。とりあえず、ここまででやめておこうかな。
色々メモしたこともあるし、それはまた書けたら。

とにかく、この企画は最高だった。これで朗読劇も経験した人も多いということなので、ぜひ、またやってほしい。その次は、動きのある朗読劇、日替わりアドリブシーンを入れた朗読劇も楽しそう。
とはいえ、今回、グッズやらにずいぶんと投資したので、少し間をあけてもらえると助かるかも。
それだけ魅力的なキャスティングと作品、そして企画でした。

(次に続く・・・かも)

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