猫を棄てるを読んで〜父について思い出すことなど
村上さんの新作、『猫を棄てるー父親について語るときー』を読んだ。
時代のうねりに翻弄されていく男性、つまり筆者の父御を、息子の目線から、また小説家の目線から、一つのサンプルのように静謐に、また絡まった糸を解くように、描いているように思った。
戦争入隊に際しての精密な調査は舌を巻くものだった。また時折現れるお父上の俳句も父親として懸命に生きた日々を思い起こさせ、胸にくっと迫って来た。
私の父は戦争へ行かなかったし(まだ5つだった)、ここへ引けるような詩も残さなかったけれど、