この夜は誰のものでもない

THE YELLOW MONKEYの復活ライブに行ってきたのだった。とんでもないものを見てしまった、―というよりも「出くわしてしまった」。プライマルで幕が上がる瞬間に黄金色の熱風がぶわっと舞い上がって何千人、何万人の多幸感が一瞬にして満ちたあの感覚、忘れられない。

二週間が経ったいまでもバラ色の靄がかかったように頭の中が朦朧としている。何百回となくライブや舞台へ行っているけれど、次元が違う、というのはああいうことなのかもしれない。あっけないくらい簡素なステージで、息を呑むほどきらびやかだった。叶姉妹的に云うなら「ああなんて、ゴージャスで、ファビュラスなんでしょう!」。不惑なんてとうに過ぎたロックスター四人の一挙手一投足が、甘くて苦しくて恥ずかしくて目を背けたくなるぐらいに愛おしく、凄まじい引力を放っていた。

それ以前の自分にはもう戻れないことに絶望すらおぼえるくらい何もかもを奪われ与えられた、それがあのたった三時間の出来事だなんて今でもちょっと信じられない。二度と触れられない美しい過去の遺産だと思っていたのにまさか大人になってその熱狂に身を投じることができるとは……。十代のあの日、戯れるモノクロの馬に金の箔押しでタイトルを刻印されたジャケットに一目惚れして聴きもせずレジへと足を運び、なけなしのお小遣いを出した自分に拍手喝采したい気持ち。そのCDが十数年後のあなたの日々を救うよ。

身体なんてもう百年もすれば塵芥だとわかっていてもなお今ここにある命がわめく声に眠れないことがある。でも光り輝くものに触れて新しい何かが目覚めて、それでなんとかやっていけたりもする。飢えは尽きないけれどそれを満たすものもまた果てしない。眼を閉じれば心は自由で、いつだって旅立てる。

THE YELLOW MONKEYの存在する2016年に万歳!

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