レニィさんと毎日更新。

6月9日から7月31日まで。
わたしは毎日小説を書いて、Pixivに投稿していた。

公式の企画で、『雨』をテーマにした話を書こう!という物だ。

わたしのレニィというハンドルネームは、
雨女であることから来ている。
だから『雨』がテーマの企画に、ぜひ参加したいと思った。

どんな話を書こう。
悩んだわたしが思い出したのは、
高校生の頃に何となく書いていた小説だった。

高校生のわたしは、
それを特にネットにアップするでもなく。
誰に読ませるもなく。
密かに、2話ほどだけ書いて、USBのファイルへ仕舞い込んでいた。

28歳のわたしは、それを思い出して。
取り出して、開いてみた。

書きかけの物語。
終わりを待っている物語。

その時まだ、短期のアルバイトすら決まっていなかったわたしは、本当に、単純に、なんとなく、
思った。

『この話を終わらせよう。
 この企画の期間中、毎日更新してみよう』

要するに、無職ですることのないわたしは、
わたしに目標を課したのだ。

最初のうちは、前日には翌日分も書けていて、
翌日には、最後の確認だけして投稿していた。

だけど、次第に詰まって来て。
当日書き上げるようになってきた。

途中で、短期とはいえアルバイトが決まったこともあって、書くことに使える時間は途端に減った。

夏場はエアコンでお腹も壊すし、
夏バテで体調が悪くて、起きてられない時もあった。

何度も、『毎日更新』しなくても、
いいんじゃないかと思った。

毎回キャプションには
『目指せ!毎日更新?』と、
はてなマークまで付けていた。

続かなかったらそれで仕方がない。

そう思うのは簡単で、
やめてしまうなんて、もっと簡単だった。

それでも、『意地でも書いてやる』
と思え出したのは、

たった一人、絶対的な読者が居たから。

その人は、毎日、毎日、わたしの上げる小説に
ブックマークをしてくれて。
時々コメントもくれた。

もし、今日書かなかったら。
もし、今日更新しなかったら。

そのたった一人の絶対的な読者を
裏切ることになる。

それをしたくなかった。

高校生の時、
ラジオドラマの脚本を書いていた時。
それが、ラジオドラマになって、
会場に流れた時。

たった一人。
たった一人だけでもいい。
笑ったり、面白そうにしてくれれば、
それだけでわたしは、勝てたんだ。

勝てるんだ!

何度か投稿時間が日を跨ぐギリギリになったこともある。
ギリギリすぎて、家族に当たってしまった事もあって、本当に申し訳ないと思った。

誤字脱字に、ルビの振り忘れ。
細かい設定の詰めの甘さ。

それでも、わたしは、
毎日更新したかったんだ。


7月31日。
わたしは予定通りに最終回を書き終えて、
投稿した。

終わったんだ。
目標を達成したんだ。
そんな気持ちで泣いたのは内緒だ。

今時、毎日更新なんて珍しくもないのは
わかっている。
きっと何万という人が、毎日更新をしている。

それでも、わたしは。
毎日更新を達成したかったんだ。

終わらないで放っておいた物語を、
終わらせる事で。

毎日更新を達成したいま。
しばらく書きたくなくなるかなと思ったのに、
むしろ書いていないと不安なのが不思議。

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