メアリースーは今日も妄想の中で暴力をふるう

【注意! この文章には過剰な暴力描写が含まれます】

 ララマ・ハマチュは廃オフィスの中を逃げていた。通路が突き当たりなことに絶望し、戻ることはできず左側のドアを開けると薄暗い部屋の中に縦長のロッカーが目に飛び込みそこへ飛び込んだ。きっと冷静な判断力などとっくに落ちている。
 "りゅりゅっち"と呼ばれていた現在のニンジャネーム・キーパンチャーは唇の端に軽蔑の笑みを意地悪く浮かべながらその一部始終を後ろから歩きながら見ていた。わざとらしく大きな足音を立ててロッカーの部屋へ入る。
「ねーねー、そういやIRCルームでも入室の限定とかやってたねー? その前に散々わざとらしくオープンメッセージでりゅりゅっちが悪いって言いふらしてくれたじゃない」
 ロッカーは何もしゃべらない。
「空中分解したのはあんたらが無能だからでしょう、が!」
 ローファーシューズがロッカーを蹴りつける。ロッカーがひしゃげる音と比喩ではない悲鳴を上げた。
「こんなバカ集団に付き合ってやった私がバカだったわ!」
 ローファーの靴底がロッカーの扉をさらに内側へゆがませる。ぐえ、という声がロッカーの中から漏れた。
 キーパンチャーが部屋のカーテンを開け放つと、すでに盗難でもされたのか窓ガラスも窓枠も無くなった四角い壁の穴が曇り空の薄明かりを部屋の中にこぼした。
「やだ、アブナイだよねこういうの」
 ロッカーは何もしゃべらない。
 空き缶を蹴るイメージ。その思い付きでキーパンチャーはロッカーを部屋の中央に向かって引き倒した。また悲鳴。
「せーのっ」
 数歩助走してロッカーを斜め上に蹴った。が、ロッカーは1メートルほどバウンドしただけで窓までは飛ばなかった。また悲鳴。
「なんだつまらない」
 あちこちに凸凹ができて持ちやすくなったロッカーをキーパンチャーはプチプチロールめいて持ち上げる。下に傾いたロッカーの角の隙間から赤色の混じった汁がこぼれてボタボタと音を立てた。
「うわっ気持ち悪い」
 小走りで窓穴からロッカーを放り捨てた。その下は、運河。数秒後に落下の水音。
 様々な何かと血の混じった水たまりを確かめることもなく、キーパンチャーはバインダー手帳の1ページを破り捨て、廃オフィスを後にした。

[了]

またニンジャにかこつけて復讐の妄想してるよこの人。
彼女の恨み言は99パーセント作者の事実とは異なるから安心してほしい。