メアリーめいた復讐譚

「ドーモ、ピエイ=サン」
 その女の声の高さは、かつてのピエイ・アマと同じロマンスマニアックすなわちフジョシのアトモスフィアを感じさせるものだった。
「ドーモ。何か駐車トラブルでも? マートへの出入り口なら向こうですよ」
 コケシマートの立体駐車場、その一角にある有人受付ボックスの中にいる老女のアマに向かって話しかけた身なりの良い女の微笑みは愛らしく、実際の年齢をさらにわからなくさせていた。
「物理空間でははじめまして。"りゅりゅっち"です」
 名乗った言葉と同時に、防弾ガラス越しでもいや障害物など存在しないように圧倒的な殺意がアマを襲った。
「もう30年前かしら。IRCグループでNAME:アンバーレディが"キチガイタヌキを殺せ"ルームを作ったのは」
 ボックスの中の老婆は壊れたジョルリ人形のように眼球をせわしなく回しながら口をパクパクと小刻みに開閉しはじめた。
「もう30年前かしら。IRCグループでお前が"キチガイタヌキを殺せ"ルームを作ったのは」
 笑顔の女が防弾ガラスに手のひらを押し当て、ガラスはミシミシとひび割れていく。
「タスケテ……! タスケテ! グループのためにあなたがムラハチになるのが一番いいって、あなたが先に言い出したから」
「謝れよババア。私はグループで共同発表を成功させたかっただけなのにどいつもこいつもわからずやだったな」
 女の手首や腕に割れたガラスの欠片がバラバラと零れ落ちながら女の指先が老婆の首にかかった。

 ニンジャ聴力に、救急車のサイレンがかすかに届く。
「ドブ猫が謝りもせず死んだわ。やっぱ性根がクズだと死にざまもクズね」
 モータルを人と思わなくなったニンジャの女はバインダー手帳から一枚を破り取って投げ捨てた。出張ついでの報復はまだ残っている。IRC通信が携帯端末をコールした。
「はい、モシモシ? キーパンチャーです」
「ドーモ。スキャッターです。また道に迷ってるのか?」
「スシドーにはもうすぐ着くってば。頼まれてたカメラレンズもちゃんと型番通りのやつ買ったし」
「アイ、アイ。先に食ってるぞ」
 歩き通話をしながらコマ送りのように雑踏を歩きぬけるキーパンチャーの目の前に、アクロバットスシ・ダイニング「スシドー」のネオン看板が見えた。
 
[了]

もう忍殺語とかめちゃめちゃですねテヘペロ。
作者の願望を歪めて出力したやつです。ニンジャになったら意地悪をしてきた奴をぶっ殺したいとか思わなくなくない?
ちなみに老婆は首を絞めかけたところでNRSからの心臓麻痺で勝手に死にました。