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大切な心構え|Web3コミュニティ運営の教科書 - 入門編

はじめに

この章では、Web3のコミュニティ運営に携わるための「大切な心構え」を紹介します。タイトルが少し大袈裟なので構えてしまいそうですが、ポテトチップスでも食べながら気楽に読んでいただければ幸いです。
お相手はLeN(@mrsh_znk )が務めます。どうぞよろしくお願いいたします。

(1)入門編

Web3の世界に足を踏み入れると、初めにコミュニティ運営の門があります。
少し遠くにはクリエイターの門だったり、エンジニアの門だったりが見え隠れしていますが、おそらく、この文章を読んでいるということは、きっとあなたに相応しいのはコミュニティ運営の門なのだと思います。
コミュニティ運営の門は、わりと簡単にくぐることができます。Web3のコミュニティであるDiscordに参加するだけで運営の門をくぐることが可能です。Twitterのみで活動しているプロジェクトもありますが少数派ですので、まずはDiscordのコミュニティを探しましょう。
最初は意中のプロジェクトがなくても問題ありません。Twitterで情報発信しているプロジェクトを見つけてDiscordのサーバーに入ってみることが大切です。入ってみなければ何も始まりませんし、入門の段階では、具体的にコミュニティ運営に携わることはないので、気負わず気軽に入ってみましょう。

さて、このフェーズにおける心構えについてまとめます。

1. 挨拶をしよう
2. 積極的に発言しよう
3. 気になったことは声を上げよう
4. プロジェクトをもっと知ろう

もし、あなたがコミュニティ運営に携わろうと考えている場合は、毎日Discordにログインして挨拶をしましょう。いわゆる「GM(Good morning)」です。サーバーによってはGMのための部屋を設けているところもあります。
たかがGMされどGM! 最初に何を書いたらいいか分からないと感じたときには便利な言葉です。なお、「GN(Good night)」なども同じ役割です。
少し慣れてきたら、GM以外の投稿をしてみましょう。自分から発言することに少し抵抗がある場合は、ほかの誰かの発言にリプライしてあげましょう。自分の投稿にリプライがつくのは嬉しいものです。
また、気になったことがあればどんどん投稿していきましょう。「Twitterでこのプロジェクトにこんな返信がされていた」「チャンネルでこういう質問が出ていたけどスルーされている」など、気づいたことには率先して声を上げていくと、そのコミュニティ内の貢献度につながります。
参加しているDiscordコミュニティのプロジェクトがwebページやホワイトペーパーを作っていたり、AMAを展開していたりする場合は積極的に参加して、プロジェクトのことをさらに理解できるよう頑張って勉強してみてください。ここまで来れば、もうあなたはコミュニティ運営における入門の域を超えて、正式にコミュニティ運営に携わる準備が整ったといえます。

(2)初級編

入門から初級の段階では、TwitterのDMなどに「コミュニティ運営をお願いできませんか」とオファーが届くことはありません。あるとすれば、毎日GM投稿をしているDiscordコミュニティからモデレーターのオファーを受けるくらいです。
基本的に、Web3領域は歴史が浅いので、少し頑張ると古参や第一人者として扱われます。チャンスがあれば挑戦してみることをおすすめします。オファーがなくてもモデレーターをやりたいと宣言すると、わりと高確率でモデレーターになれると思います。
次に、初級編についてお話しします。ここでは、プロジェクトからモデレーターとしてアサインを受けている段階を初級と呼ぶこととしましょう。

では、初級編で話したいことをまとめます。

1. 機密事項を守ろう
2. 生活を管理しよう
3. ロールモデルを探そう
4. 相談できる仲間をもとう

大抵の場合モデレーターは、コミュニティマネージャーのチームで活動します。表記はMODと書かれることが多く、モッドと呼ばれたりもします。
モデレーターや運営陣だけが見られるチャンネルが存在していることが多く、Discord内でどのような活動を求められているかなどの伝達調整や、問い合わせが出てきたときの連携などを、チャンネル内の専用チャットで行います。
ここで気をつけなければならないのは、運営スタッフの集まる専用チャンネルで書かれていることは機密事項だということです。「モデレーターの皆さんに知っておいてほしいけれど、確定情報ではないのでまだ案内しないでください」などの情報も飛び交っています。
機密をうっかり通常チャンネルに書かないようにしましょう。どこまで案内したらよいのか分からない場合は、コミュニティマネージャーや運営の人に、改めて確認することが必要です。
次に、生活管理についてお話しします。Discordでモデレーター業務をしているとついつい楽しくなって、生活の大半はDiscordを眺めている状況になることが多々ありますが、仕事としてコミュニティマネジメントを考えた場合は、規則正しい生活を送ることが大事です。社会人としてしっかりとタイムマネジメントすることが求められます。
さて、実際にモデレーターとして活動していくと自分の理想のモデレーター像ができるのではないでしょうか。すでに多くのモデレーターの方々が活躍されていますので、Twitterなどで自分に合ったロールモデルを見つけるといいと思います。
理想のロールモデルを見つけて交流を深めると、その方が自分のよき相談相手になってくれる場合もあるでしょう。自分の師匠という位置付けでなくても、自分と同じ領域で頑張っている仲間は大切です。

(3)中級編

モデレーターとしての活動にも慣れてきて、ステップアップしたい感覚が出てきたら、あなたが中級に足を踏み入れた証拠です。
初級編では、いわゆる「にぎやかし」をすることが仕事になっています。「にぎやかし」とは、その言葉どおり Discordのチャンネルがにぎやかで活発に会話がなされている状態を作り、そのにぎやかさを続けておくことです。
にぎやかな状態が続くことによって、すでに参加している方はもちろん、まだ足を踏み入れていない方たちにも活気のあるプロジェクトに見えますし、新たなプロジェクトのファンを呼び込むきっかけにもつながります。
毎日「にぎやかし」を続けることで、自分はもっとコミュニティに貢献できるのではないかと思うようになりますし、できることが増えていくのは自然なことです。存分に「にぎやかし」をしていきましょう。

では、ここからは中級編のお話をしたいと思います。

1. チャンネルの空気をつかもう
2. 質問を活用しよう
3. ネガティブに対処しよう
4. 運営にフィードバックしよう

Discordのチャンネルはチャット形式で会話が投稿されることで成り立っています。文面でのやりとりにはなりますが、基本的には音声におけるコミュニケーションと変わりません。
人は、投稿をすると誰かが返事をしてくれることを期待します。モデレーターのあなたも24時間ずっと投稿を見られるわけではないので、ログインしたときに会話が進んでいる場合もあるでしょう。
ログイン時は必ずさかのぼって、リプライがない投稿に反応してあげてください。
リプライやリアクションを続けることで、参加しているユーザーに、「このチャンネルに投稿すれば誰かが反応してくれるし、読んでくれている」と満足感を得てもらえるようになります。
優れたモデレーターはチャンネルの空気を読み、雰囲気を読み、盛り上がりのうねりを読みます。ユーザー同士で会話が盛り上がっているときは、すっと後ろにひき、会話が続かなくなってきたらサポートをします。そして適切な質問を適切なタイミングですることで、ユーザー同士の会話がより楽しい体験になるように導きます。
入門から初級では、発言回数が正義だったのに対し、中級編以降は投稿の質にこだわりをもち、自分が発言しなくて良いときには発言を控える。このようなセンスが磨かれていくのです。理想はモデレーターが何も言葉を発さずとも、コミュニティが勝手に盛り上がっていくのが良いのですから。

さて、次にネガティブに対処することに言及しましょう。
コミュニティは様々な考えの人が集まりますし、場合によっては運営方針と異なる意見をもつユーザーが出てくることもあります。チャンネルに運営を批判するような投稿が出てきたら、あなたはどう対処するでしょうか。
まず、プロジェクトにとってクレームや批判が出てくることは良い傾向です。悪いプロジェクトは、無視されますし、批判であろうとも積極的に意見を言ってもらえることは、愛されているプロジェクトだと言えるでしょう。
とはいえ、批判やクレームは見ていて嬉しいものではありません。入門や初級のときに先輩やマネージャーにお願いしていたクレーム対応は、中級程度になってくると自分でできるようになります。
まずは、その批判やクレームを言っている方の話を聞くことから始めましょう。言っている内容が分からなければ「分からないので詳しく説明していただけますでしょうか」と聞いても良いです。プロジェクトの方針でクレーム対応などは、Ticketツールのような個別チャットに移動して行う場合もあります。運営側と調整のうえ対応しましょう。話を聞く姿勢が大切で、相手を否定するようなコミュニケーションは不適切です。

さて、最後に運営へのフィードバックです。
中級くらいになると周りが見えてくるので、プロジェクトの戦略的なことに対して意見が言えるようになるかもしれません。毎日ユーザーとやりとりしているモデレーターにしか見えないこともあると思いますので、普段から意識してプロジェクトの改善になるような事柄をメモしておきましょう。タイミングをみて、運営の方にフィードバックすればコミュニティの改善につながり、いいことづくしです。
ただし、言い方とタイミングに気をつけないと、単にプロジェクトを支持していないモデレーターとして映ってしまう可能性もありますので注意が必要です。調整がうまくできるようになると、そろそろ上級編が見えてきます。

(4)上級編

本書は入門編の方に向けて書いていますので上級については詳しく話しませんが、参考になりそうなトピックをピックアップしてみました。簡単ではありますが、上級になった気分で読んでいただければと思います。

1. Web3全体のトレンドを把握しよう
2. 海外の情報にもアクセスしよう
3. 自身の経歴となるプロジェクトに参加しよう
4. Twitterを運用しよう

上級編は、モデレーターを卒業してコミュニティマネージャーなどを任されたときに必要になる事柄が多いかもしれません。
例えば、モデレーターはWeb3全体のトレンドを把握していない状態でも務まるかもしれませんが、把握しないままではコミュニティマネージャーやコミュニティデザイナーとして戦略を構築することは難しいでしょう。
モデレーターから一歩先を目指すのであれば、Web3の領域で、例えば「今どこに資金が集まりやすいのか」「どのような手法がトレンドなのか」などの動向を、Twitterはじめ多くの情報リソースにふれて収集していくと良いと思います。
また、Web3の良質な情報のほとんどが英語である点も、日本人にとってハードルが高い一因なのですが、逆を言えば、英語を攻略すれば大きなアドバンテージになるのです。DeepLなどの翻訳ツールを駆使して、海外の情報にふれていくことが重要です。
上級者になると、複数のプロジェクトにまたがってコミュニティマネジメントをしていることだと思います。このレベルに達した際は、自分自身のコミュニティマネジメントのキャリアプランについて考えるといいと思います。
例えば自分が履歴書を書くことを想定します。その際、どうしてこのプロジェクトに参画したのかや、参画したプロジェクトでどのような活動をしたと伝えたいのかを書き出してみます。自分の思いが明確であればあるほど、今後どのようなプロジェクト運営に参画したいかが最適化されるでしょう。

上級編の最後に、Twitterについてお話しましょう。Web3においてTwitterは名刺代わりというほど重要視されます。アイコンはどのプロジェクトを採用しているのか、プロフィールに何が書いてあるのか、過去にどのような投稿をしているのか、アカウント開設日はいつか、など、コミュニティマネージャーの選定にあたっては、Twitterの情報が鍵となります。モデレーター、そしてコミュニティ運営に興味があるのでしたらTwitterを運用することは重要事項です。

まとめ

Web3におけるコミュニティ運営というキャリアの方向性は、大きな大きな可能性を秘めています。
まずDAOと呼ばれる自律分散組織の概念が広がり、株式会社は分散化していく未来が拓けています。しかし実際は、すべてをブロックチェーンのスマートコントラクト上で完結させることは不可能であり、人と人がインターネットで接触しなければ成り立たないことが分かってきました。
そしてプロジェクトの成功は、プロジェクトの顧客でもあり応援者でもあるユーザーがいかに強固なコミュニティに存在しているかにかかっています。つまり、現段階においてWeb3とはコミュニティビジネスそのものなのです。Disocrdにおけるコミュニティのプロフェッショナルの需要が上がっていますし、この流れはだいぶ長く続くと思われます。
2022年10月現在、コミュニティ運営の概念がやっと確立してきた段階です。つまりマーケットにビッグプレイヤーがほとんどいません。医療、教育、政治、不動産のように既にビッグプレイヤーによってマーケットが寡占状態の状況であれば、私もこんなことは言わないのですが、 Web3のコミュニティ分野ほどブルーオーシャンな分野は他にないのではないでしょうか。

ぜひ、他の章で具体的に言及されている項目を学習し、実際のプロジェクトで実践してください。そして上級の先を開拓していただければ嬉しいです。
最後に、私もWeb3領域でコミュニティマネージャーを務めていますので、どこかでみなさまとプロジェクトを共にできる日が来ることを楽しみに、という言葉で、この章を閉じたいと思います。

ありがとうございました。


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