新型コロナウイルスが免疫を抑制するメカニズムのひとつ『3CLproによるNEMO切断』と『イベルメクチン』について

最近、コロナ後遺症の予防や治療方法などを調べています。

コロナ後遺症の症状は色々とあるようですが、特に脳(中枢神経)への影響というのを私は気にしています。

今回の記事は、その調査の中で見つけた『新型コロナウイルスが免疫を抑制するメカニズム』と『イベルメクチン』についてです。

論文の導入部などの抜粋と、その関連記事抜粋が主な内容です。
そして、『後遺症にイベルメクチン効くんじゃないの?』という私の憶測。

先に重要箇所を超簡単にまとめます。
それ以降論文引用などになりますが、私自身が精査出来ない内容ですし、難しく長いです。引用部は飛ばしていただいてもいいかと思います。


◆重要箇所まとめ

・新型コロナウイルスのメインプロテアーゼ(3CLpro)がNEMOを切断することが確認された。

・NEMOという保護タンパク質が切断されると免疫反応が活性化されない。

・3CLproの作用によってNEMOが失われると、特定の脳細胞に損傷が生じ、COVID-19患者に見られる神経症状が引き起こされる可能性がある。

・イベルメクチンは3CLproをブロックする。


◆論文抜粋(SARS-CoV-2 3CLproによるNEMO切断の構造的・機能的特性評価)

リンクは以下です。

以下、抜粋引用します。

Nature Communications
Published: 08 September 2022

SARS-CoV-2 3CLproによるNEMO切断の構造的・機能的特性評価

Mikhail A. Hameedi, Erica T. Prates, Michael R. Garvin, Irimpan I. Mathews, B. Kirtley Amos, Omar Demerdash, Mark Bechthold, Mamta Iyer, Simin Rahighi, Daniel W. Kneller, Andrey Kovalevsky, Stephan Irle, Van-Quan Vuong, Julie C. Mitchell, Audrey Labbe, Stephanie Galanie, Soichi Wakatsuki & Daniel Jacobson
SARS-CoV-2 3C様プロテアーゼ(3CLpro)は、ウイルスポリタンパク質のプロセシングに重要な役割を果たすとともに、NF-κB Essential Modulator(NEMO)などのヒト免疫シグナル伝達タンパク質を切断し、宿主免疫応答を調節することができる。SARS-CoV-2 3CLproがNEMOをきめ細かく切断することをin vitroのアッセイで明らかにした。3CLpro C145SとNEMO226-234の2.50Å分解能の結晶構造解析から、主鎖水素結合により様々なウイルスおよび宿主基質を許容する一方で、側鎖水素結合と疎水性接触により特異性を発揮するサブサイトが明らかになった。3CLpro-NEMOの結合残基の変異は、ヒトにおけるSARS-CoV-2の高い感染力を説明するのに役立つと機械学習および物理学に基づく計算機で予測される。COVID-19の病態において、NEMOの切断は説明すべき重要な情報の一部であると仮定している。
NEMO は、ウイルス感染に対する重要な初動反応である canonical NF-κB 応答シグナル伝達経路において NF-κB を活性化するのに必要である。NF-κB 経路の障害は慢性炎症性疾患の特徴であり18、このことは、3CLpro による NEMO の切断と下流の NF-κB の調節障害が COVID-19 患者に見られる炎症反応の亢進に寄与している可能性を示唆している15。驚くべきことに、in vitro および in vivo のデータと一致して、Wenzel らは最近、3CLpro による宿主細胞 NEMO の切断が COVID-19 患者の脳で観察される微小血管病理に関連していることを提唱した19。したがって、3CLpro による NEMO の不活性化の分子基盤を理解することは、中枢神経系の病態を含む COVID-19 の症状を緩和する治療戦略を開発するための基盤となり得る。
NEMO は、ミトコンドリア抗ウイルスシグナルタンパク質 (MAVS) によって駆動される抗ウイルス応答の結節点にあり、NF-κB とタイプ I インターフェロンの両方の活性化をもたらす。NF-κB経路は多様なウイルスによって標的とされ53、その抑制はレニン-アンジオテンシン系のアンバランスに寄与し、その結果、COVID-19の重症化を引き起こすと提唱されている54。今回の結果から、SARS-CoV-2は3CLproを用いてNEMOを切断することにより、自然免疫を弱めることが示唆された。NEMO切断による免疫抑制効果に直接対抗するだけでなく、治療戦略として3CLproを不活性化すれば、ウイルスの複製を損ない、nsp6やnsp1355といったMAVSの下流に介在するタンパク質の産生を減少させることができると考えられる。
Structural and functional characterization of NEMO cleavage by SARS-CoV-2 3CLpro | Nature Communications
2022.09.14 引用]
https://www.nature.com/articles/s41467-022-32922-9

◆レビュー記事抜粋(SARS-CoV-2タンパク質が重要な免疫経路を切断しているのを発見)

リンクは以下です。

以下、抜粋引用します。

SLAC NATIONAL ACCELERATOR LABORATORY
September 8, 2022

SARS-CoV-2タンパク質が重要な免疫経路を切断しているのを発見

SLACのシンクロトロンからの強力なX線は、我々の免疫システムの主要な配線が、残忍なSARS-CoV-2タンパク質にかなわないようであることを明らかにした。

BY DAVID KRAUSE
過去2年間、科学者たちはSARS-CoV-2ウイルスを詳細に研究し、COVID-19ワクチンと抗ウイルス治療を開発するための基礎を築いてきた。そして今、エネルギー省のSLAC国立加速器研究所の科学者たちが、ウイルスの最も重要な相互作用の1つを初めて観察し、研究者がより正確な治療法を開発するのに役立つ可能性があることを明らかにした。

研究チームは、Mproと呼ばれるウイルスタンパク質が、感染者のNEMOと呼ばれる保護タンパク質を切断する瞬間をとらえた。NEMOがないと、ウイルス量の増加や新たな感染に対して免疫系の反応が鈍くなる。MproがNEMOを分子レベルで攻撃する様子を見ることで、新たな治療法がひらめくかもしれない。
共同研究者の若槻壮市教授(SLACおよびスタンフォード大学)は、「私たちは、ウイルスタンパク質が、薄い紙を切る鋭いハサミのように簡単にNEMOを切り裂くのを見ました」と述べています。"我々の体内の良いタンパク質がバラバラに切られ始めたら、どんな悪いことが起こるか想像してみてください。"
免疫経路を保護する

NEMOは、NF-κB経路と呼ばれるヒトの免疫システムの一部である。NEMOとNF-κB経路は、鍵のかかった建物の入り口のドアの外側にあるカードリーダーと配線のようなものだと考えるとよいでしょう。カードリーダーへの配線が切断されると、ドアは開かず、人(あるいはNEMOのような免疫系活性化物質)は外で立ち往生し、何をしに来たのかが分からなくなる。

NF-κB経路は、防御的な炎症反応に不可欠な部分である。NEMOが切断されると、私たちの免疫反応は活性化されず、その結果、体にさまざまな有害な影響を及ぼすことになるのです。MproがNEMOを破壊し、ウイルスが自然免疫反応を回避するのを助けると、COVID-19ウイルス感染症は悪化する可能性がある。さらに、ドイツの研究機関による別の研究では、Mproの作用によってNEMOが失われると、特定の脳細胞に損傷が生じ、COVID-19患者に見られる神経症状が引き起こされる可能性があることがわかったという。
SARS-CoV-2 protein caught severing critical immunity pathway | SLAC National Accelerator Laboratory
[2022.09.14 引用]
https://www6.slac.stanford.edu/news/2022-09-08-sars-cov-2-protein-caught-severing-critical-immunity-pathway

◆イベルメクチンと3CLpro

イベルメクチンが3CLproをブロックすることは結構前から言われていますが、いちおう論文から抜粋引用しておきます。

PMC PubMed Central
Published online 2021 Oct 20.

イベルメクチンのCovid-19治療への再位置づけ。SARS-CoV-2複製に対する分子生物学的作用機序の解明

Zheng Yao Low, Ashley Jia Wen Yip, and Sunil K. Lal
概要

イベルメクチン(IVM)は、寄生虫感染症の治療に伝統的に用いられてきたFDA承認の大環状ラクトン化合物で、これまでのin vitro試験で抗ウイルス活性があることが示されている。
IVMの作用機序は、Importin heterodimer complex(IMPα/β1)を破壊し、STAT3をダウンレギュレートすることにより、ウイルスタンパク質の細胞質-核シャトリングを阻害し、それによってサイトカインストームを効果的に減少させることに中心をおいています。さらに、IVMがウイルスの3CLproとSタンパク質の活性部位をブロックすることにより、ウイルスの複製や付着といった重要な機構を破壊することができる。本総説では、IVMが示す抗ウイルス特性について、これまでの分子生物学的証拠をすべてまとめている。その後、IVMのメカニズムについて考察し、SARS-CoV-2のウイルス複製を阻害するために貢献しうる臨床的利点を強調する。以上のことから、IVMには予防効果があり、SARS-CoV-2に対する臨床試験の有力な候補となることが示唆されました。
Repositioning Ivermectin for Covid-19 treatment: Molecular mechanisms of action against SARS-CoV-2 replication - PMC
[2022.09.14 引用]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8526435/#

◆所感

以上より、単純に考えると『イベルメクチンは効くんじゃないの?』という印象です。素人の憶測でしかなく、そんな簡単なもんじゃないんでしょうけど。

イベルメクチンについては色々と言われていますが、私がこれまで見た記事などでは『結構初期に飲まないと効果は出ない』というものです。

つまり、明らかな風邪症状が出始めた頃にはウイルスの増殖はそれなりに終わっており、そのタイミングで飲んでも効果は低い。ということ。

◇◇◇

しかし、新型コロナウイルスは風邪症状が終わった後でも、長く続くコロナ後遺症(long COVID)の懸念があります。

それは持続感染ということかと思いますが、であれば、コロナ後遺症の発症予防(または治療)にイベルメクチンは効くのではないだろうか、と思えます。

今回の記事で取り上げた『3CLproによるNEMO切断』の影響範囲というのはわかりませんが、それはコロナ後遺症を引き起こしているメカニズムのひとつであるように、私には思えます。

もしかしたら、新型コロナ感染から一定期間イベルメクチンを飲み続けることで、後遺症の発症リスクを低減させることが可能なのではないでしょうか。


◆おわりに

今回の記事の内容はとっくに知られていることかもしれません。
(私は素人なのでわかりません。)

とはいえ、今後イベルメクチンに注目しておいても良いかもしれませんね。
もしかしたら再評価されるかも。

といっても、一旦『馬の駆虫薬であって人が飲むものではない』なんて言われたものなので、正式に評価されるのは無さそうな気がします。

引き続き専門家の方々には超期待したいですね!

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