彼らに感謝を込めて。(ワヒロ雑記)

【1、運命の日】

2020年8月20日木曜日、午前10時。

スマホ向けソーシャルゲーム『ワールドエンドヒーローズ』がサービスを終了し、オフライン版へと移行した。

“サービス終了”と聞くと、何年もかけてブランド化した作品でもない限り、「ひっそりと終わりを迎える」イメージがある。
それは連載するも人気が出ずに終了した漫画のそれに似ている、と思う。
あるいは、爆発的人気を誇った作品が無理矢理に連載を継続した結果、ファンが離れ、ひっそりと最後を迎えた時のそれである。
いわゆる『お通夜状態』というものだ。


しかし、ワヒロは違った。
平日の午前中に関わらず、twitterのトレンドに「ワールドエンドヒーローズ」や「#ワヒロありがとう」が10位に以内にランクインし、twitter運営によってモーメントが作成され、
トレンドのトップに公式イラストと共に表示されるという快挙を成し遂げたのである。
そしてそれは数日間にわたってエンターテイメント項目で表示されることとなった。

また、サービス終了が発表された5月28日から終了の8月20日の間も様々な現象が起きた。
カラオケ企業「カラオケの鉄人」のコラボ投票で6月期に3冠達成、のちコラボが実現、限定グッズが発売。
サービス終了直前の8月12日、サウンドトラックがオンライン限定で発売、各種配信サイトで上位にランクインし、8月14日11時時点でiTunesStoreのサウンドトラックランキングで1位を獲得。(公式ツイート参照)
終了日の20日には一部グッズの再販が決定・告知。

その他、8月21日~12月30日までに
●Gratteのコラボカフェが再び開催
●女性向けゲーム雑誌「B's-LOG」で、3ヶ月の短期連載、ピンナップ付録
●アニメ雑誌「アニメディア」で、特集記事とピンナップ
●新作グッズの発売
など、ファンには嬉しいことがたった4ヶ月で続いた。


その現象はもちろん、ファンあってのことである。
「サービス終了」と聞くとその時点で離脱してしまうなど、ファンの熱は急速に冷めていくのが悲しいが現実である。
しかし、5月28日時点で物語が完結しておらず、物語が佳境を迎え、更新される度にファンの間で考察が飛び交った。

『ワヒロ』のファンの間には「急速な冷え込み」、それを感じなかった。

むしろ、ファンが増えたように思われた。
サービスの終わる作品を新たにダウンロードしようとはあまり考えないだろう。
しかし、twitterのあちこちで「話題の作品を始めてみた」という報告が上がり、その中には漫画家のアサダニッキ氏もおられ、ファンアートがアップされた。
私のように、復帰したファンも多いのではないだろうか。
既存のファンも含め、「本当に終わるのか?」というほどの盛り上がりを見せ、ちょっとした“お祭り騒ぎ”の3ヶ月が始まったのである。

プレイしてきたソーシャルゲームの数は少ない私であるが、これだけの現象を目の当たりにしたのは始めてである。

「ワールドエンドヒーローズ」はまだ終わっていないのかもしれない。


【2、ワヒロから見る、ソシャゲの世界】

まずは、こちらの記事を参照されたい。
ソシャゲとしてのワヒロがどういうものであったか、またソシャゲの性質をどのように活かしていたのかが分かりやすく解説されている。

https://san001.hatenadiary.jp/entry/2020/08/16/194024

ワヒロは他の女性向けソシャゲと何か違うところがある、と初見プレイ後すぐに思った記憶がある。
その理由は、前述の北屋氏の記事を読んで、なるほどと腑に落ちた。

もう1つは「腐にも、夢・男女にも優しい」という点である。
公式インタビューにおいて、「オタクに優しい」という要素を大事にしてきたことが明らかにされているが、
「腐にも、夢・男女にも優しい」もその中に含まれていたのかもしれない。

私は腐が苦手である。少しでもその要素を感じてしまうともう楽しめなくなってしまう。
ワヒロにはそれがなかった。私がワヒロを続けられた大きな理由でもある。

しかし腐として楽しんでいるファンも大勢おられ、夢と同時に楽しんでいる方もいらっしゃる。
対立のようなものは見受けられず、キャラ人気に偏りはあっても全キャラが愛されているのをファンから感じられる。
同時に、シナリオやイベントといった、公式側からもキャラクター人気にあやかって、特定のキャラを贔屓するようなことは一切感じられなかった。
どのキャラクターも公式やファンに愛される作品なのだ。
「優しい」作品は、ファンすら優しくしてしまうのかもしれない。

では何故サービス終了してしまったのだろうか。
(ここからは辛口になるが、どうかご容赦いただきたい。)

私は「戦闘システム」と「3D」、ガチャにあると考えている。


「戦闘システム」はゲーム上で「ミッション」と呼ばれていたものである。
この「ミッション」で推しの動きや、変身シーン、かっこいい衣装やおかしな衣装でポーズを取る、それを堪能するのがワヒロの醍醐味なのであるが、
オート戦闘、すなわち「放置してれば勝手に戦ってくれる」システムが主流になりつつあるソシャゲ界では、リズムゲームなどと同じく、「時間を取る必要性」が生じてしまう。
(ワヒロも確かに放置しておけば勝手に最後まで進むのだが、アラートが鳴るなど放置がしづらかったのではないか?と考えている)
またスキップも存在しなかったため、ソシャゲを掛け持ちしていたり、忙しい社会人にとって、「時間を取る」のが難しい人は離脱していってしまったのではないだろうか。


もう1つが、この「戦闘システム」で登場する「3D」モデルである。
好き嫌いが分かれた要素ではないだろうか。
正直、私はサ終後の保存作業をするまで、なかなか愛着を持つことが出来なかったし、サービス期間中に「好きではない」という声はあるにはあった。
昨今では、MMDなど個人の素人でも綺麗な3Dモデルが作成出来る時代になっている。
ワヒロの3Dは少しばかり旧時代的なものを感じるところがあった、と個人的には思っている。

しかし、ワヒロの3Dがなければ、おかしな衣装やポーズを堪能できない、などワヒロらしさが無くなってしまう。
容量やプログラム、予算などの問題があったのかもしれない。
ただ、目の肥えてしまったオタクを魅了できるところが更にあれば、もっと多くのユーザーの心を掴んで離さなかったかもしれない、と思ってしまう。

それでも、最後の最後まで様々な衣装や変身ポーズ、ミッションシーンのプログラムやデザインに関わられた方々には感謝と尊敬の念を抱かずにはいられない。
いくらか厳しいことを書いてはしまったが、感謝と尊敬の意をここで表したいと思う。


ガチャに関しては、課金をしていないため(これは私個人の事情によるもので、本当は課金したかったのだが)、深くは語れないのだが、
いわゆる「天井」の実装が増えた中で、天井が存在しないのは、ユーザーにとって課金しづらいものがあるのではないだろうか。
(※1周年ガチャを除く)


辛口なことばかり書いてしまったが、それでもファンに愛され、今日に至るまで多くのファンの愛とファン同士の交流に心温められてきたことは事実である。
愛と優しさを込めて作り込まれた作品は、手にとった人々をも温めるのだと改めて実感させられた。
「ワールドエンドヒーローズ」は、そういう作品であった。


なお、とあるゲーム関係動画投稿者とサ終前にワヒロについてコンタクトを取った。
カラ鉄コラボが決定した頃だったと記憶している。
その当時の彼(または彼女)曰く、サ終あたりのコラボ等はやはり珍しいことのようで、「何かしらあるかもしれない」という旨のメッセージを頂いた。
直後、雑誌の短期連載が決まるなど、その言葉は的中するのだが、やはりその先をも望んでしまうのがファンの心理である。
投稿者の某氏に感謝の意を込め、ここに書き記しておく。


【3、私情とワヒロ】
(ここからはいちファンとしての記録である。興味の無い方はここで記事を閉じられたし。)

2020年は個人的に非常に苦難の1年であり、今もなお、その中にある。
そんな苦難な中であったからこそ、ワヒロで出会えた考え、交流、友人、全てに感謝したい。
ワヒロに出会っていなければ、とっくに壊れてしまっていたかもしれない。

それほどにこの1年は某ウイルスに苦しめられた。
しばらくはまだ続くことが見込まれているが、外出が許され、聖地巡礼を果たせる日が来るまでは耐えていきたい。

私がワヒロを知ったのはYouTubeの広告動画である。
ゲーム作品の広告はそこそこ見るのだが、詳細を見るに至ってもそのままウィッシュリストに蓄積されるのがオチだ。
しかしその中でも珍しく気になった。

目を引いたのは『ヒーローなんてかっこいいもんじゃない』。
ヒーロー物、かつ、ソシャゲらしからぬキャッチコピー。

そしてその決め手は声優である。
私は『佐海良輔』役の声優が好きなのだが、女性向けゲームの出演は珍しい。
沼る覚悟でインストールをした。
珍しくリセマラまでして、SPシリーズ佐海でスタートした上で、保育園イベだったのは今でも良い思い出である。

しかし、つまづくのも早かった。
先述の3D、戦闘システムで早くも走りづらくなったのだ。
ツイッターなどで繋がりがあれば、また違ったのかもしれない。

ワヒロの世界に戻ったのは、サ終告知後である。
すでに広めていた親友に「ワヒロ、終わるってよ」という連絡をしたあと、妙に寂しくなったのだ。

6月、本腰を入れて同志の捜索を開始した。
そのために新垢まで作ったのだから、だいぶ本気だったなと今でも思う。
残り僅かな本編の更新に向けてストーリーを読み直し、推しだけに行っていた目を全キャラに向けることができるようになった。
同時にファンによる様々な考察や感想が楽しめるようになった。

「ああ、どうして今まで気づかなかったのだろう」

後悔しても、サ終は覆らない。
ならば全力で楽しんで、全力で広めて、全力で最後に「ありがとう」と言おうじゃないか。


それ以上のものを与えてくれた『彼ら』に感謝しつつ、新しい年も未だ冷めぬ「ワールドエンドヒーローズ」の熱を胸にして迎えたい。


<了>

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