煙草を吸う或いは飲むという行為

 タバコを吸うようになって5、6年経つが、未だに上手く煙を肺に落とし込めずにいる。口の中で溜めた煙を吐き出して、その煙をすぐに吸い込む。言うのは簡単だけれど、その途端喉がキュッと弁を閉じたように苦しくなるし、すぐに煙を吸い込むという動作がどうもしっくりこない。だからずっと、赤マルを吸っている癖にふかし続けている。

 一等好きなのは、鼻から煙を出した後の余韻だったりする。深く吸い込んだ時の、ジリジリと煙草の燃える音を聞いて、口内に白い煙を溜めてから、鼻から煙を吐く。そうすると上顎の辺りがじいんとして、泣きそうになる直前のような感覚になる。泣きたくないのに泣きそうになって、しゃくりあげそうになる感覚によく似ているなあと、冷静に思えるのが好きなのかもしれない。泣きたくないのに泣いてしまいそうなシチュエーションでしか感じられない感覚をコントロールできているという、自分に対する優越感のような。


 職場近くの喫煙所は、プレハブ小屋のような建物で、窓から空と駅のホームが見える。未だに紙巻きタバコを吸う人間を隔離するために作られた四角い箱。檻のように頑丈なドアを開けて、ひっそりと煙草を吸う。喫煙者という一つの共通項で集まった人達は、視線を合わせることもなく黙々と一服する。空調の力強い音だけが四角い空間を支配している。

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