鬼滅の刃 冨岡義勇から学ぶグリーフケア
はじめまして、大森ちゃんです。
緩和ケア病棟で看護師をしています。
緩和ケア病棟は「最後まで生ききる場所」と言いますが、「大切な人とのお別れの場所」であることも事実です。
緩和ケア病棟に限らず、大切な人を失う、失った、グリーフにある人に、どう関わっていいかわからない、苦手だと感じている方は多いのではないでしょうか?
これは臨床経験年数問わず、むしろ3年、5年と経験を重ねる毎にその難しさにぶつかり、悩む…私がそうでした。
それでグリーフケアを学び始めて10年が経ちます。
「グリーフケアってどうしたらいいの?」、「そもそもグリーフって何?」と思っている方と、一緒に勉強したいな~と思いました。
ただ…同じ勉強するなら楽しく勉強したい!
なので「大好きなアニメとコラボで勉強してみようじゃないか」と、今回書いてみましたよ。
週間少年ジャンプ連載中「鬼滅の刃」(作者:吾峠呼世晴さん)、読んでいる方多いですよね。
私もその一人で、どっぷり鬼滅沼にはまっています。
鬼滅の魅力を語りだすと止まらないので今回は控えますが、グリーフケアを学ぶ私にとっては「これグリーフだな~」と思える場面や台詞がちょいちょいあるので、その点でも興味深く読んでいます。
鬼滅の登場人物のほとんどが鬼に大切な人を奪われていますから、物語自体がグリーフのお話と言ってもいいんじゃないかと思ったりもします。
グリーフって何?
グリーフって聞いたことはあるけどよくわからないという方のために…
私がグリーフを学んだのはアメリカのグリーフカウンセラー、アラン・D・ウォルフェルト博士の理論なので、そこでのグリーフの定義もご紹介しますね。
そんなグリーフの視点で鬼滅の刃を観てみようじゃないかとゆ~わけです。
個人的にグリーフだな~と思うのが、冨岡義勇さん。
の寡黙な彼です
義勇さんの羽織の半分は錆兎の形見の着物(錆兎の着物は鬼に殺された父親の形見)、もう半分は義勇さんの姉である蔦子さんの形見の着物…なのもグッときますよね💦
コミック15巻、錆兎との大事なやりとりを思い出す義勇さんの台詞
先ほどご紹介したグリーフの定義を思い出してくださいね。
大切なお姉さんが鬼に殺され、その悲しみの中出会った親友の錆兎まで鬼に殺される。立て続けに大切な人を失うという経験に「思い出すと悲しすぎて何もできなくなった」から自分の感情やその人達との思い出をも閉じ込めました。まさにグリーフですよね。
これは心が弱いからではなく、そうしないと自分を保っていられないからで、自分を守るための反応ともいえます。
物語の舞台は大正時代。この時代の男性ですと「悲しいことがあっても人前で取り乱してはいけない」という無言の圧力や先入観もあったでしょう。
コミック1巻、錆兎の登場シーンで
と炭治郎に言っていることからも、悲しみの感情を表出することが難しい時代だったと思います。
そうやって自分の感情を閉じ込めてしまい、大切な人達を失った悲しみに向き合うことができなかった結果、周囲の人達と距離を取っていったのではないでしょうか…
日本の現代社会においても「悲しみには黙って耐えて、前向きに元気な姿を見せること」が「いいこと」や「当たり前」だと思っている方がとても多いので、悲しみを表出できずにグリーフで苦しんでいる方は少なくないと思います。
グリーフに伴う感情:罪悪感・後悔
またグリーフに伴った感情のひとつに「罪悪感・後悔」があります。グリーフにおける感情の中でも多くの方が体験する感情です。「私がもう少し早く病院に連れて行ってたら…」、「あの時そばを離れなければ…」等、ご家族から聞いたことある方は多いのではないでしょうか。
大切な人を亡くし自分だけが生き残ってしまったときに感じる罪悪感・後悔をSurvivors Guilt(サバイバーズ ギルト)といいます。
義勇さんの場合、鬼に怪我をさせられた自分を助けた後、他の人を助けに行き鬼に殺された錆兎に対してサバイバーズ ギルトを感じ、自分の存在価値も失っています。
コミック15巻で
とゆ~言葉からも義勇さんのグリーフによる苦しみが感じられます。
罪悪感や後悔を抱える方に対して「そんなふうに考えたらダメだよ。どうしようもなかったんだよ。そんなの亡くなった人も喜ばないよ」等、声をかけてしまいがちですが、それはその方の感情や思いを否定することです。支えるどころか、さらにキズつけてしまいます。
罪悪感や後悔は「自分自身を攻撃している状態」なので、その感情を外に出せるようにサポートすることが必要です。
グリーフケア・グリーフサポートで大事なこと
サポートする上で大事なのは「その方が抱えている感情や思い、考えを吐き出してもらうこと」です。説明したり諭したりするのではなく「相手に語ってもらい、相手の話を聴くこと」です。
これもただ聴けばいいというわけではなく、まずはその方に「語ってもらえる存在になること」が大事です。グリーフで苦しんでいる方は敏感になっているので、話を聞いてくれるなら誰でもいい、というわけではありません。自分にとって安心できる人間にしか話しません。
「グリーフに苦しんでいる人の力になりたい!」と思ったとき、表面上はやわらかく見えても、ついつい力が入りすぎて「あなた苦しんでいますよね!わかりますよ!私が力になります!さぁ話してください!」と自分主導でグイグイ攻め込んでいく方がいます。看護師に多いかもしれません。
私もグリーフを学び始めたのは「看護師として役に立ちたい」と思ったからなので痛いほどよくわかります。
まずは思いや感情を出してもらえるような「安心できる存在になること」がグリーフケアの基本だと思っています。
長々となりましたが、こんな感じで鬼滅の刃をもとにグリーフについて書いてみました。いかがでしたでしょうか?1人でもグリーフケアに興味を持ってくれる方がいたら嬉しいです。
お付き合いありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?