入院初日

8月30日

人生初の入院。
8時50分までに病棟に来て下さいと言われ、病棟に上がった。
産婦人科病棟だ。
私は来年の3月に、ここで赤ちゃんを産む予定だった。
こんなに早く産まれなくてもいいのにね。
まだお腹の中にいてよ。

悲しかったけど、努めて明るく振る舞った。

だって私、ここの職員だから。
看護師だから。

泣いて取り乱すわけにはいかなかった。

着替えを渡され、処置室に通された。
先生を待っている間、ここからお腹の中の赤ちゃんがいなくなるのかって考えて、ほろほろ涙があふれた。
子宮口を開くため、ラミナリアを挿入した。
クスコで広げられるのは痛かったけど、我慢出来るくらい。
何か入っている違和感。
これから痛くなるからと、ボルタレン座薬をいれた。

初めての病院食は、あんまり美味しくなかったけど食べられた。

出産なんて、来年の3月までないと思っていたから色々勝手がわからない。
予定外の入院だから、生命保険は降りるのかな?
担当の人に電話をしたら、すぐ来てくれた。
担当さんが言った。

「残念だったね。欲しかったんでしょう?」

って。

頭がかっとなった。

「欲しかったに決まってますよね!?」

欲しかったに決まっている。
誰も好きで中絶するわけじゃない。
生きていて欲しい。
私だって元気に産んであげたい。
でも生きられないんだもん。
どうしてそんなことが言えるの?
ずっとずっと楽しみにしていたんだから。

いつもなら、きっと気にも止めないかもしれない些細な言葉に傷つく。

私も気を付けようと思った。
相手が、どんな言葉に傷つくのかなんてわからない。


痛くなるとは聞いていたけど、どんどんお腹が痛くなる。
生理痛みたいな鈍痛。


痛い痛い痛い。


これは思ったよりも痛い。
ボルタレン座薬だけでは良くならなくて、飲み薬飲んだりまた座薬使ったりしたけど、全然効かない。
当たり前か。
普通は自然と広がる子宮口を無理矢理広げているんだから。

夕方、ラミナリアを交換した。
ラミナリアを抜くのが気持ち悪い感じ。
その時にエコーを見せてもらった。

そこには、私にはちっとも頭がないように見えない。
元気に動いている我が子がいた。

明日にはお腹からいなくなってしまう。

旦那は、動いている赤ちゃんを見ていない。
いなくなってしまう前に、旦那に見せてあげたいな。
私のお腹の中に、私とあなたの赤ちゃんが、ちゃんといたんだと。

つづく

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