見出し画像

星降る夜に出掛けよう @南座

 ”なぜ人は楽しみなことが待っていると思うと、朝からこんなにも活発に動けるのだろうか” なんて小学生の遠足の日のようなことを考えながら準備をすすめ、一年半ぶりの京都へ向かった。


 目的は南座で上演していた、舞台「星降る夜に出掛けよう」を見に行くためである。

 今作はジョン・パトリック・シャンティの戯曲集「お月さまへようこそ」の中から「喜びの孤独な衝動」「星降る夜に出掛けよう」と、世界中で愛される名作文学、サン=テグジュペリの「星の王子さま」の3つの作品を題材としたオリジナル作品。演出は歌舞伎界至高の女方、重要無形文化財保持者(人間国宝)でもある坂東玉三郎さんである。

 以下、それぞれの作品のあらすじである。

【星の王子さま】
 どこまでも広がる空と大地。美しいあかね色の夕日に照らされた砂漠の池に現れた、一人の青年(髙木雄也)が語りだす。あれは6年前。青年が操縦する飛行機が故障で、アフリカの砂漠に不時着した。生きるか死ぬかの瀬戸際で助け出してくれたのは、少年でも大人でもない、地球での年齢に当てはまらない王子(髙地優吾)。金色に光る小さな星から着たという王子と青年は、夕日を眺めながら語り合う。何もない砂漠の中で、歌ったり踊ったり、時には井戸を見つけたり。不思議なことに王子といると、世界が美しく見えた。やがて不時着から一週間たったある日、王子は青年に自分の星に帰ることを告げ、ふといなくなってしまった。
かけがえのない友との出会いと別れ――――。
 
 
【喜びの孤独な衝動】
 ところ変わって、夜のアメリカ・マンハッタン。街のざわめきから少し離れた池のほとりにしゃがみこむ、大親友のウォルター(髙木雄也)とジム(中山優馬)。ウォルターは、自分を理解してくれるのはジムだけだと豪語し、ジムに自身の素晴らしい恋の物語を話し始める。
 夜中二時から二時半の間にだけ会うことができる、その恋の相手は人魚だった――――。
 
 
【星降る夜に出掛けよう】
 ここは、とある町のとあるカフェ。痩せ細った青年が声をかけたのは、カフェに居合わせたひどく悩む男(髙地優吾)。この男も幽霊や妖怪に取り囲まれていた。そこにいる幽霊は誰?君は孤独なの?真剣に話し込む二人を前に、いつしか幽霊や妖怪は、男に構うのをやめていた――――。
 
"一緒に来て。二人で星降る夜に出掛けよう。"

https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202306minamiza/

 私は舞台や歌舞伎についての知識はほとんど持ち合わせていない、とある髙地担である。普段から文学の勉強をしているわけでもなく、予習なしに観に行ったところできっと何も得られないだろうと思い、今回はある程度予習をしてから臨んだ。

 少しの予習とほんの少しの想像力で感じたことではあるが、この気持ちを書き記しておきたい。
 以下ネタバレを含みます。
 うまく言語化できるか不安ですが、一個人の感想として捉えてもらえると嬉しいです。


―――――――――――――――――――

(今回、私の席は3階の右側、ステージに対して側面に位置していたため、上手の演出がほとんど見れていません。)

物語

 私は、今回の3作品はどれも「大切なものは目に見えない」がテーマにあると感じた。

「星の王子さま」は孤独だった青年と王子が時間をともにすることで、目に見えない友情や信頼を覚え、互いの存在を大切に思う。

「喜びの孤独な衝動」は誰にも言えない恋をジムは親友のウォルターにだけ打ち明ける。ウォルターも自分のことはそっちのけで湖まで来てくれる。二人の友情とジムの純粋な恋心を感じた。

「星降る夜に出掛けよう」はカフェで出会った二人の男性が真剣に話をしたことで、今までの生活を改め、星が降る夜のようにキラキラ輝く人生を歩き始めようとする。未来への期待や希望を抱き、「生きて行くのさ」と歌うの良すぎた。

 目に見えない概念や気持ちを扱う分、物語を咀嚼するのに時間がかかったし、人によって何を感じるかが変わるのだろうなと感じた。

 私は「星降る夜に出掛けよう」が一番刺さった。ただただ意味のない日々を過ごしているくせに、将来には漠然とした不安を抱えているそんなどうしようもないやつに明るい光を差し伸べてくれるような…どんなに不安でも生きていかなければいけない、変わらなきゃならないと強く感じた。毎日を大切に、意味を見出しながら過ごしたい。星降る夜に出掛けられるように。



以下は
1.髙木雄也
2.中山優馬
3.髙地優吾
の順で各々感想を記していきたいと思う。

髙木雄也

 髙木さんの朗読&ソロ歌唱から始まったこの舞台。この時、髙木さんの姿が全く見えなかったのだが、その分、声に集中できたのはとっても良かった。

 私、実は友達の中島担に昨年末のHey!Say!JUMPの東京ドームの誘ってもらったため、髙木さんの歌声を目の前で聞くのは人生で二回目だった。
 ライブのときはとにかく””””セクシー”””””の印象が強かったのだが、今回、第一声を聞き、心の底から「いい声だ」と思った。始まって数分の劇場を一瞬で自分のものにしてしまう伸びやかな声、思わず天井を見上げてしまった。目には見えないけど彼の歌声は確実に会場全体を包み込んでいた。

 「虹のできる訳」で「どんな夜が来ても守ってあげるから 目を閉じて その夢がつづくまで おやすみ」と歌う髙木さんも良かった。「おやすみ」の歌い方が優しくて、会場にいた人全員が毛布にくるまれたかのような安心感(?)を覚えたはずだ。

 「Mack the knife」では紫とピンクの照明が相まって南座にいることを忘れてしまうような雰囲気あるステージ。個人的にアンサンブルの死体役の方を蹴り上げるシーンがぶっ刺さった。


中山優馬

 ひと目見た瞬間、「かっこいい」と思った。

 とにかくステージが似合う。髙木さんとの掛け合いのテンポや安定感が素晴らしかった。こちら側が思わずクスっと笑ってしまうような場面もあり、物語に引き込むのが上手だと思った。

 「星降る夜に出掛けよう」は、はじめカフェで友達と話すシーンがあるのだが、ここは全く見えなかった。ただ、姿が見えなくても会場に響き渡る声は安定していていい声だった。

 「the Stranger」は圧巻だった………
 アンサンブルの方を従えてセンターで歌って踊る姿は一瞬も目が離せなかったし、パッと切り替わる赤い照明が似合いすぎていた。動きの所作がアイドル。とっても好きな演出だった。
 弾き語るシーンも良かった。緊張感と情熱が伝わってくる歌声、生で演じるからこその良さがあり見に来て良かったと感じた。


髙地優吾

 私は髙地優吾が好きだ(唐突)。しかも去年出演していた舞台「夏の夜の夢」でガッツリ心を奪われている。

 まず、ソロで歌っていた「あなたがどこかで」が良すぎた。私は歌を聞く時、歌詞を重要視して聞くことが多いのだが、髙地くんの歌い方は歌詞を大事にする歌い方で本当に好き。

あなたがどこかで 苦しいときは
あなたを励ます歌になりたい
あなたがどこかで 頑張るときは
あなたを支える夢になりたい

「あなたがどこかで」安全地帯

この歌詞を聞いた時泣くかと思った。既に励ます歌をたくさんもらっているし、毎日頑張っている髙地に支えられた場面なんてたくさんあるのに……とばかデカ感情を抱いた。

 また、これはいろんなレポで見かけたが「星降る夜に出掛けよう」の人間椅子とタバコを吸うシーンは私もぶっ刺さった。
(ああいう雰囲気の髙地さんとっても良いですよね…この間のライブのRiskyで椅子に座る髙地さんを観た時と似た感情を抱いた…)

 「The Saga of Jenny」は新しい髙地優吾を観た。グループではやったことのないジャンルの曲、表現するのがとても難しいだろうなと感じた。「いい加減が ええ加減」と歌い終わるのが””良””。一生をあんなにセクシーに丁寧に歌い上げられるジェニーが羨ましいと謎の感情を抱いてしまうくらい良かった。

 小さい頃から楽器に触れていた私は、無意識に音程やハーモニーを気にしてしまう癖がある。ある種、職業病のようなものだ。そのため、公演中少々気になるところがあったことは否めない。だが、それよりもあの舞台に生で立って言葉を届ける姿に感動した気持ちが大きかった。
去年よりも確実にハードルの高い舞台。それでもきっとブログでも書いていたように努力を重ね、持ち前の明るさと人当たりの良さで壁を乗り越え、京都公演千穐楽を迎えられたと思うと本当に良かったね…の気持ちである。
 マントの使い方も、芯のある明るい声も、ニコニコな笑顔で踊る姿もとっても良かった。素敵な作品に出会わせてくれてありがとう。


舞台全体を通して

 「星降る夜に」と「情熱」を聞いて3人の歌声の親和性が高いことに驚いた。今までになかった組み合わせだったのかもしれないが、舞台を見終わって、この人選が最適解だと思うくらいどの役もぴったりだった。「情熱」をキラキラ笑顔で歌って踊る3人はアイドルそのものだった。
 安定感や貫禄のある髙木さんと優馬くんの凄さを肌で感じたし、暖簾が破れるまで舞台に立ちたいと語る髙地をこれからも応援したい。

玉三郎さん演出のもと、3人と10人のアンサンブルさんと作り上げる作品、とても素敵でした。大阪公演も無事、走り抜けられますように。

~♪

Tender Youth Tender Youth
心を閉じ込めないで
もっともっと つたえあう声がほしい
Tender Youth Tender Youth
ふりむいてるときじゃない
きっときっと 夢ははじまったばかり

「情熱」安全地帯


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?