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腺筋症をMEA+TCMAMで治療した症例の経過観察のまとめ

多数の治療例の長期的な観察の必要性

 MEA+TCMAMによって腺筋症で腫大した子宮を治療した症例を画像で示しました。しかし、これだけでは臨床的に有用な結果が得られたのかどうかはわかりません。数か月の間は壊死組織が縮小するのに伴い子宮体部も縮小し、腺筋症に伴う過多月経や月経痛が改善します。しかし、ほどなく症状が再発し、子宮の大きさも元通りになるようでは子宮摘出術を回避する代替手術としての価値がありません。


 

多数の治療例を5年以上観察した結果と簡単な統計的解析

 子宮腺筋症に伴う過多月経をMEA+TCMAMで治療した結果、子宮体部の体積、鉄欠乏性貧血、出血量、月経痛などはどのような経過をたどったのかを筆者の症例でまとめてみました。このうち、子宮体部の体積はMRI画像などから計算し、貧血は血色素濃度を測定しました。血色素濃度の改善は出血量の減少を反映していると解釈できます。
 いっぽう、月経期間中の出血量は簡単には測定できません。また、月経痛も客観的評価は困難です。そこでこれら2つについては患者さんに協力いただいてvisual analogue scale(VAS)を用いて評価しました。VASの治療前の出血量を100、出血が無い状態を0と定義しました。月経痛についても治療前の痛みを100、月経痛がない場合を0と定義しました。治療前後の子宮体部体積と血色素(Hb)濃度に差があるのかを対応のある2群のt-検定で検討しました。また長い時間が経過した後に、子宮摘出術が不要となる頻度が術後どの程度に落ち着いていくのかも検討しました。測定結果の時間的な差についてはExcelの統計パックのt-検定、子宮温存率の解析についてはフリー統計ソフト“R” のカプランマイヤー法を用いてそれぞれ解析しました。


治療成績のまとめ 


結果を要約すると、治療前後で、子宮体部の体積は3月後、12月後には有意に治療前より縮小しました。Hb濃度は、3月後には有意に上昇しました。VASによる解析では治療前から、3月、12月で月経出血量、月経痛ともVAS スコアはいずれも低下していることが示されました。これは、MEA+TCMAMの効果で月経出血量が減少し、月経痛も改善したことを反映する客観的な証拠です。

 カプランマイヤー法による220例のMEA+TCMAMの術後の解析結果では24月後と60月後の子宮温存率はそれぞれ95.9%(95% CI 93.0-99.0)、88.9%( 95% CI 82.3-96.2)でした。したがって、1年程度の期間は子宮体部が縮小し、貧血が改善するというだけではなく、5年程度の期間に子宮摘出術を施行した症例は少なかったことが分かりました。つまり、MEA+TCMAMは子宮全摘術の代替治療法として有効であったと考えられます。このような結果が得られるであろうことは、MEA+TCMAMの予備的な結果を2014年に出版したときにすでに予想されていました(Kanaoka Y, Imoto H. Transcervical Interstitial Microwave Ablation Therapy for the Treatment of Adenomyosis: A Novel Alternative to Hysterectomy. Open Journal of Obstetrics and Gynecology, 2014, 4, 840-845)。しかし、初期の少数例による結果が有効と報告されていても、多数例を長期に観察すると意外に成績が振るわないことも臨床研究ではおこりがちです。MEA+TCMAMについては長期の観察期間をもつ多数例を用いて、予備的報告の結果を確認できましたので、予備的結果の報告どおりで問題はないことが判明したわけです。

 それらの結果は、画像として次の投稿に示しますので、じっくりご覧いただければ幸いです。

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