怪談白物語『死せる花嫁』 リプレイ
怪談白物語『死せる花嫁』
作成者：arcsinh様
参加者
GM：レックナート・マキャフリー
PL：スムージー、御御御付 あやや、ホンヤー、冬柳
本文『死せる花嫁』
これは、わたしが高校一年生だった頃の話です。御存知の通り、わたしはアトランティスの出身でして、当時通っていた学校は、田んぼと雑木林、そして①空地に囲まれているような、自然豊かな土地にありました。
新入生だったわたしは、以前から興味のあったバドミントン部に入りまして、仲の良い友達が数人できました。②ココリコ田中、ココリコ遠藤、そしてわたし。当時の学校の近くには娯楽施設は殆どなく、私たちは年相応の遊びたい欲求を持て余していました。
「③カバディに行こう！」そういい出したのは②ココリコ田中でした。
「③カバディって、どこに？ゴールドジムなんて近くにあったか？」ココリコ遠藤が言うと、②ココリコ田中は急に小声になって言うのでした。
「学校の裏に①空地があるじゃん、あそこは④セクシーなお姉さんが出るって噂なんだよ。」
「しかも」と、②ココリコ田中はにやりと笑います。
「めっちゃ美人らしい」
「なにが？」
「④セクシーなお姉さんが、だよ！」
「い……行くっきゃねえ！」
若かったわたしたちは、その場のノリで③カバディに行くことを決めてしまいました。若さというのは本当に恐ろしいものです。
③カバディ当日、わたしたちは⑤昼の学校裏に集まりました。
時間差で、②ココリコ田中、ココリコ遠藤、わたしの順で、ハリセン片手に一人ずつ①空地の奥まで行って、昼の間においてきたダンベルを一体ずつ回収してくることにしました。
②ココリコ田中が墓地の奥へ消えていくのを見送ってから、ココリコ遠藤が出て、私の番になりました。②ココリコ田中もココリコ遠藤もまだスタート地点に戻ってきてはいませんでしたが、行くしかありません。
①空地に足を踏み入れると、ひんやりとした風が頬をなでたような気がしました。もう一歩、もう一歩。ひとあしひとあし進むたびに、⑥やぶ蚊が身体にまとわりつき、体感気温が下がるような、そんな感覚に襲われるのです。気づけばわたしは走り出していました。
いいえ、走り出していると思ったのははじめだけでした。自分のからだが自分で制御できていない。そのことに気づいたその頃には、わたしは空地の真ん中で、どうしようもなく⑦マッチョポーズをとっていたのです。⑦マッチョポーズをやめようと思っても、腕は軽やかに回り、足は跳ねる。⑦マッチョポーズをやめなければ、いずれ筋肉痛が張り裂けてしまうのではないかと、そう思えるほどの動きをわたしはしていました。
このままでは死んでしまう。そう考えたわたしは、勝手に回る腕を振り切って、目の前の大きな⑧プロテインに抱きつきました。勝手に動く足や身体がじたばたしても、腕は決して離さないと、目をぎゅっとつぶって耐えたのです。
そして、そのまま気を失ってしまったのか、そこからは何も覚えていません。気がつくと、私は彼女のベッドの上にいて、そのままパーソナルトレーニングする運びとなりました。
一緒に③カバディをしていた②ココリコ田中とココリコ遠藤も病院に運ばれており、②ココリコ田中はチキンレッグ、ココリコ遠藤は筋肉量を何パーセントかもっていかれたと、あとで聞きました。
わたしたちをひどい目に合わせたあの筋トレの正体については未だにわかりませんが、ひとつはっきりしていることは、あの①空地には若い女性がたくさんボーディービル大会をされていたということです。というのも、わたしたちの学校は、ゴールドジムの跡地に建てられており、様々な事情で若くして入会した独り身の女性が、ゴールドジムの裏の①空地に集会していたとのことでした。
実は、アーノルド・シュワルツェネッガーに、わたしが体験した筋トレと、いくつか類似点をもった伝説があるのです。それは、デビューする前に太った⑨選手たちがなるという、⑩出場を逃した人の話です。
この筋肉隆々の若い女性たちは、①空地のなかでじっと眠っていることができません。彼女たちの太った心のなかに、太った足に、生前満足にできなかった⑦マッチョポーズが、今なお生きつづけているのです。
⑩出場を逃した人となった彼女たちは、夜になると地上に上がってきて、若い男を探します。目を付けられた男は、彼女らと⑦マッチョポーズにあけくれて、しまいには死んでしまうといいます。
人生の花咲くさなかに死んでいく⑨選手たちをみた民衆は、美しい幸せがこんなにも突然、暗い破滅の手に落ちることに、納得ができなかったのでしょうか。だから、彼女たちは生前手に入れることができなかった喜びを、死んで尚、追い求めるのだという伝承が生まれたのかもしれない、わたしはそう思ったのです。
キーワード
① 墓・墓地・お墓×
② 平井×
③ 肝試し×
④ 幽霊×
⑤ 真夜中×
⑥ 冷気×
⑦ 踊り×
⑧ 墓石×
⑨ 怨霊×
⑩ 花嫁×
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？