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昔の思い出

編集プロダクションで働いていた時、大手出版社からの依頼で料理の本を作った時の話です。ある時、表紙用の撮影をカメラマンにお願いしました。撮影当日、そのカメラマンは引越しをするのかと思うほどの機材を台車に乗せてやってきました。

性格的にミスを極端に嫌がる方で、こちらが指定したフィルムの本数を超えた分は自腹でフィルムを購入して予備・保険のカットを撮影するようなカメラマンでした。

持ち込んできたストロボはびっくりするくらい大きなものでした。手のひらサイズの被写体の物撮りだったのですが、稲光のようなフラッシュの嵐を浴びせて撮影していました。1回シャッターを押すと3回発光するタイプのシステムでした。

ところが後日、アガリを出版社に見せたところNGが出ました。たしかに、駆け出し編集者だった自分が見ても、けっして悪くはないものの、無茶苦茶良いわけでもありませんでした。急遽、再撮影に。日程的に失敗が許されない場面でしたので、出版社がカメラマンを指定してきました。

その次の土曜日。事務所内でカメラマンを待っていると三脚一本とカメラだけでやってきました。ストロボはなし。あまりの荷物の違いに拍子抜けしたものです。

撮影はあっという間でした。事務所の光の環境をサッと見て、レンズにフィルターを一枚挟んでいました。自分への指示は1箇所だけブラインドを下げてくれと。たったそれだけでした。あっという間に終わり、あとはよろしくってなものです。出版社のチェックも多少色転び修正の指示があったものの、難なく通りました。記憶に強く残っている場面です。


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