舞台「象」製作にあたって

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舞台「象」製作に当たって

俳優・小林且弥の芝居が好きだとつくづく思う。
切なくも恐ろしくも優しくも感じる人間像。醜悪さと業。だからこそ感じる人への愛情。
そんな小林且弥氏が舞台を創ったら、どのような世界が広がるのだろう。

舞台公演は、その時々の「今」が描かれるべきものと考えています。
それこそが「生」で上演することの意味であると思うからです。
彼なら「今」をどう切り取り、客席に投げかけるのだろうか。
小林且弥氏だから作れる演劇の世界があるのではないか、と一緒に公演を製作したいと考え、初演出の小林且弥氏にオファーを致しました。
そして渡された戯曲がこの舞台「象」です。

今まさに我々が直面している“コロナ“という病原菌は、あっという間に我々の「今」を大きく変容させています。
マスコミは、「感染者数」「重症化リスク」「医療のひっ迫」「飲食店の困窮」などのニュースを流す一方で「経済との両立の必要性」を説明し
国は「リモートワーク」を推奨する一方で「孤独が生み出す精神疾患」についてご丁寧に教えてくれます。
「誰かの答え」が正解ではなく自分の目で見て、自己責任で自分の答えを見つけていくべきである。そんな自己判断と自己責任のもとに多様化が認められるようになった世の中で、「自分」を持たない者は果たしてどうなっていくのか。

この舞台「象」は、あるサーカス団の話です。
この物語の主人公の松山は、幼少期に父親から虐待を受け、その度に「笑う」ことを強要され精神的な支配を受けてきた青年です。
サーカス団解散最後の日。檻に取り残された象の「アドナイ」をどうするのか団員たちが多数決を取り始めますが、松山は「アドナイ」をどうするのか、自分で決めることが出来ない。
松山が決めることが出来ないならばと、団員たちが決めたアドナイの処遇―

松山とアドナイを通して描かれる

「自分らしく生きること」

とはどういうことなのか。


中々に苦しい「今」の時代への問いが多分に含まれた作品です。


舞台は小林且弥氏がこだわった360°お客様に囲まれたセンターステージとなります。
敢えて俳優たちに逃げ場のない空間を用意し、臨場感たっぷりな演出でお客様を「象」の世界へ誘います。

是非劇場で体感いただければ幸いです。    

る・ひまわり

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