臨床心理士・公認心理師を目指す人のために -小さなアドバイス集 その1-
私はカウンセラーに向いているのでしょうか
大学という組織で働いたり、仕事をしていると、よく人から「私は、カウンセリングに興味があるのですが、カウンセラーに向いているか分からなくて・・・悩んでいます」と聞かれることがあります。
多分、毎年3人ぐらいからは聞かれると思います。
ここで、臨床心理士や公認心理師を目指す人たちのために、自分の経験から少しずつ書いていきたいと思います。
ちなみに、この問いに答える前に、私のプロフィールについて少し書いた方が良いかもしれません。
私は、もともとは臨床畑ではなく、大学の文学部を卒業して、心理系の学部3年次に編入するという特殊なルートで臨床心理学を学び始めた者です。
その後、大学院修士課程、そして博士後期課程を経て、臨床実践と研究を始めるようになりました。
実は、かくいう私もこの質問をずっとしていた思います。私も学部に編入する前、そして大学院に入ってから毎日、このことを考えていました。
学部編入前は、臨床心理学に興味はあるものの、「果たして自分はその道に適しているのだろうか、やっていけるのだろうか」、と悶々としてました。
読んだ本に答えがあった!
それで不安になって、本を色々と読み漁ったのですが、こんな質問に対する答えがすぐに出るはずもなく、そのまま色々と読み進めていると、河合隼雄さんの本に次のように書いてありました。
「向いているか、向いていないかは、とにかく一度やってみるしかない」
最初、読んだ時は、「なんじゃそれ?」という感じでした。
「河合さん、当たり前じゃないですか。何を今更当たり前のことを言っているんですか?」と、呆気に取られたことを覚えています。
しかし、時間が経つと共に妙に納得していきました。妙な説得力があるんですよね。さすが、河合センセ。
「確かにそうだよな。やる前から、向いているか・向いていないかなんて、決められない。今、向いているというお墨付きを誰かからもらっても、あんまり意味がない・・。大体、誰がお墨付きなんてくれるんだ?」
そう思うようになりました。
それから、大学院に入るまでは、一旦は、この問いは考えないようにしました。
そう、今から、考えてみても、実際に大学院という訓練課程の中で、生身の人と会っている中でしか、分からないことって絶対にあると思うんですよね・・・。
結局、始める前から答えが出ないことを色々と考えていただけで・・・。
河合さんは、確か「クライエントに共感しすぎる人はあまり向いていない」というようなことも書いていました。
いわゆるクラエイントに「共振」し過ぎて、一番、辛いクライエントを差し置いて、自分もしんどくなってしまって一緒に倒れてしまうパターンですね。
セラピストは、相手の気持ちを汲んで一生懸命わかろうとしながらも、どこかで「タフ」じゃないとダメなんです、ということです。
一緒に生き残ることが大事なんです。
ただ、これも実際に大学院で生身で、苦困っているクライエントの方との面接を担当しないと、本当に分からないことが多いんですよね・・・。
(もちろん、担当してもなかなか分からないことももちろんあります が・・・)
現時点での考え・・。
なので、私の答えは、めちゃくちゃ河合さんのパクリですが、「一度やってみるしかない」ということです。
もし、自分なりの言葉を付け加えるとしたら「色々と悩むかもしれないけど、勇気を振り絞って一度、やってみる中でしか分からないものもある。ものにならないリスクもあるからそれも考えておいた方が良い」ということです。
しかし、改めて考えてみると、そもそも「カウンセラーに向いているかどうか」というのは、一体、どういうことなんでしょうね。
当時の私が考えていたことは、
「クライエントの悩みがすごくわかる人」、もしくは、「話を聴いていて、相手の人が次々と癒やされていく」ようなスーパーセラピストみたいなイメージがありました。
こんなことを考えていたなんて、恥ずかしい!!
ただ、こういった幻想は、大学院に入って、無惨にも(滑稽にも)打ち砕かれることになりました。
それはまた、別のお話・・・。