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#390 「日本郵便事件」東京地裁

2015年7月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第390号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日本郵便(以下、J社)事件・東京地裁判決】(2014年6月2日)

▽ <主な争点>
高齢再雇用社員の期間満了後の継続雇用など

1.事件の概要は?

本件は、J社と雇用契約を締結し、定年後、同社の高齢再雇用社員として採用され、その後、同社員としては雇用契約期間が満了して退職扱いとされ、かつ、期間雇用社員(時給制契約社員)として不採用となったXが不採用とされたことは違法無効なものであって、同社との間に期間雇用社員としての雇用契約関係は継続していたと主張して、J社に対し、賃金の支払いを求めたもの(XとJ社間の雇用契約を以下「本件雇用契約」という)。

Xは当初雇用契約上の地位確認を求めていたが、Xの主張によっても65歳に達した後に雇用契約期間が満了すれば本件雇用契約は終了し、本件訴訟係属中に上記事情が生じたことから、地位確認請求を取り下げるなどした。

2.前提事実および事件の経過は?

<J社およびXについて>

★ J社は、郵便局を設置し、郵便業務、銀行窓口業務および保険窓口業務等を営んでいる会社であり、平成24年10月、郵便局株式会社(以下、Y社)が商号変更したものである。

★ X(昭和24年生)は、昭和49年4月、郵政事務官に任命され、平成25年3月31日当時、J社の板橋北郵便局に勤務していた者である。

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<本件不採用、労働審判の申立て等について>

▼ Xは平成19年10月、郵政民営化法施行によりY社の社員となり、21年3月31日、定年退職(満60歳)となった。そして、同年4月1日、同社の高齢再雇用社員に採用され、雇用契約期間を同日から22年3月31日までとする雇用契約が締結され、その後雇用契約の更新が3回なされ、3回目の更新契約の期間満了時である25年3月31日をもって退職扱いとされた。

▼ Xは同年4月1日以降について、J社の期間雇用社員(時給制契約社員)としての採用を希望したが、不採用とされた(以下「本件不採用」という)。

▼ Xは本件不採用を不服として、25年7月、東京地方裁判所に対し、労働審判の申立てをした。同裁判所による審判に対し、J社が異議を申し立てた。

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<J社における就業規則等について>

★ J社の高齢再雇用社員就業規則には以下のような定めがある。

第1条 この規則は会社に勤務する高齢再雇用社員の就業に関し、必要な事項を定める。

第10条 会社は、社員の雇用契約期間が満了した場合、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当しないかぎり、その雇用契約を更新する。
(2)満65歳に達した日以後における最初の3月31日が到来したとき

附則第2条 次の表の左欄に掲げる期間における第10条1項2号の規定の適用については、同号中「65歳」とあるのは、同表の左欄に掲げる区分に応じ、それぞれ同表の右欄に掲げる文言に読み替えてこれを適用する。
[平成19年10月1日から22年3月31日まで] 63歳
[平成22年10月1日から25年3月31日まで] 64歳


★ J社の期間雇用社員就業規則には以下のような定めがある。
第1条 この規則は、会社に勤務する期間雇用社員の就業に関し、必要な事項を定める。

第2条 この規則において、社員とは、第2章第1節で定める手続により期間を定めて採用された者をいう。
 第1項に定める社員は、次の各号に掲げるとおり区分し、それぞれ当該各号に定める採用の条件により採用された者が該当するものとする。
(1)スペシャリスト契約社員
(2)エキスパート契約社員
(3)月給制契約社員
(4)時給制契約社員・・・郵便局等での一般的業務に従事し、時給制で給与が支給されるものとして採用されたもの
(5)アルバイト

第5条 会社は、会社に入社を希望する者の中から選考により社員を採用する。

3.元社員Xの主な言い分は?

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