#557 「安藤運輸事件」名古屋地裁(再掲)
2022年3月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第557号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【安藤運輸(以下、A社)事件・名古屋地裁判決】(2019年11月12日)
▽ <主な争点>
職種限定合意の成立、使用者の配転権と労働者の不利益性判断など
1.事件の概要は?
本件は、A社と期間の定めのない雇用契約を締結し、運行管理業務と配車業務に従事していたXが同社から本社倉庫部門において倉庫業務に従事するよう配置転換命令(本件配転命令)を受けたことに対し、本件配転命令は職種限定の合意に反しまたは権利の濫用に当たり無効であると主張して、本社倉庫部門において勤務する雇用契約上の業務を負わないことの確認を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<A社およびXについて>
★ A社は、一般貨物自動車運送事業等を目的とする会社である。同社には現在、総務部、倉庫担当者が所属する倉庫部門、乗務員が所属し、配送先や配送する荷物によって分かれる9つの配送担当部門に分かれ、配送担当部門には、それぞれ担当の運行管理者がいる。
★ Xは、2015年10月、A社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、運行管理業務と配車業務に従事していた者である。
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<A社の就業規則の定め、本件配転命令について>
★ A社の就業規則10条1項には「会社は、業務の必要により社員の配置転換(職場の転換、職種の変更等)を行う。」との定めがある。なお、同社は当然、この就業規則の内容が合理的であり周知していたことを前提に上記規定に言及しているものと解されるところ、Xは上記就業規則の合理性および周知性について何ら指摘していない。
▼ A社は2017年4月、Xに対し、本社第2倉庫での倉庫業務への配転を打診した。
▼ A社は同年5月、Xに対し、上記就業規則10条1項に基づく配転命令権の行使として、同年6月1日をもって本社倉庫部門での勤務を命じ、辞令を交付した(以下「本件配転命令」という)。
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<運行管理者等について>
★ 運行管理者は、事業用自動車の安全運行を管理する専門職であり、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき、事業用自動車の運転手の乗務割の作成、休憩・睡眠施設の保守管理、運転者の指導監督、点呼による運転手の疲労・健康状態等の把握や安全運行の指示等の業務を行う。
★ 運行管理者として選任されるためには、自動車運送事業の種別に応じた種類の運行管理者資格者証を取得している必要があり、そのためには運行管理者試験に合格するか、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務について一定の実務の経験(5年以上)その他の要件(講習を5回以上受講)を備えなければならない。
★ 自動車運送事業者は一定の数以上の事業用自動車を有している営業所ごとに一定の人数以上の運行管理者を選任しなければならず、具体的には29両までは1人、30両から2人、以後30両増えるごとに1人ずつ追加で選任しなければならない。
★ 複数の運行管理者を選任している営業所においては、運行管理業務の全般を統括する統括運行管理者を定めなければならない。
3.社員Xの主な言い分は?
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